<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><rss version="2.0"
	xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"
	xmlns:wfw="http://wellformedweb.org/CommentAPI/"
	xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
	xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom"
	xmlns:sy="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/"
	xmlns:slash="http://purl.org/rss/1.0/modules/slash/"
	>

<channel>
	<title>Imaginary Conversation</title>
	<atom:link href="https://imaginaryconversation.com/tag/healing/feed/" rel="self" type="application/rss+xml" />
	<link>https://imaginaryconversation.com</link>
	<description>Exploring the World Through Dialogue.</description>
	<lastBuildDate>Sat, 19 Sep 2026 00:46:37 +0000</lastBuildDate>
	<language>en-US</language>
	<sy:updatePeriod>
	hourly	</sy:updatePeriod>
	<sy:updateFrequency>
	1	</sy:updateFrequency>
	<generator>https://wordpress.org/?v=7.1.1</generator>
	<item>
		<title>『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』5つの現代物語</title>
		<link>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-modern-stories/</link>
					<comments>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-modern-stories/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[Nick Sasaki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 19 Sep 2026 00:46:26 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[スピリチュアル]]></category>
		<category><![CDATA[心理学]]></category>
		<category><![CDATA[文学]]></category>
		<category><![CDATA[Healing]]></category>
		<category><![CDATA[グリーフ]]></category>
		<category><![CDATA[ショートストーリー]]></category>
		<category><![CDATA[リュ・シファ]]></category>
		<category><![CDATA[人生の意味]]></category>
		<category><![CDATA[今を生きる]]></category>
		<category><![CDATA[信仰]]></category>
		<category><![CDATA[喪失]]></category>
		<category><![CDATA[家族]]></category>
		<category><![CDATA[後悔]]></category>
		<category><![CDATA[心の傷]]></category>
		<category><![CDATA[悲しみ]]></category>
		<category><![CDATA[悲嘆]]></category>
		<category><![CDATA[愛]]></category>
		<category><![CDATA[愛しなさい]]></category>
		<category><![CDATA[死]]></category>
		<category><![CDATA[現代物語]]></category>
		<category><![CDATA[生き方]]></category>
		<category><![CDATA[神]]></category>
		<category><![CDATA[赦し]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://imaginaryconversation.com/?p=3652</guid>

					<description><![CDATA[はじめに『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』。&#160;この言葉を最初に読むと、「傷を忘れて、もう一度愛しなさい」という意味に聞こえるかもしれません。&#160;しかし、リュ・シファが集めた詩の世界を読み、さらに愛着、セルフ・コンパッション、悲嘆、感謝、信仰、死、人生の意味という視点から考えていくと、もう少し深い問いが見えてきます。&#160;傷は、本当に消えなければならないのでしょうか。&#160;悲しみを乗り越えなければ、幸せになれないのでしょうか。&#160;人生の意味が分からなければ、生きられないのでしょうか。&#160;神への疑問が残っていたら、信仰は失われたのでしょうか。&#160;そして、人生を大切にするとは、特別なことをたくさん経験することなのでしょうか。&#160;このPart 3では、Part 1とPart 2で見えてきた問いを、5人の現代人の人生までMagnifyしました。&#160;ソウルでは、妹へのメッセージを送るのが一日遅かった女性。&#160;ブエノスアイレスでは、亡き夫を愛しながら再びタンゴを踊る女性。&#160;東京では、家族の未来を作るために「今」を使い続けてきた男性。&#160;リスボンでは、息子を失い、神に「私はあなたを赦していません」と言う母親。&#160;そしてフランスでは、残された時間が一年かもしれないと知り、「最高の人生」を急いで作ろうとする男性。&#160;五人とも、人生を元通りにはできません。&#160;過去も変えられません。&#160;すべての答えも見つかりません。&#160;それでも、まだできることがあります。&#160;傷ついた自分も、悲しんでいる自分も、答えを知らない自分も連れて、今日という人生を愛することです。&#160;この5つの物語は、「傷つかない人生」を作るための物語ではありません。&#160;傷ついてもなお、人生を愛することはできるのか。&#160;その問いを、5つの人生から考えていきます。&#160;(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。） Insert Video Table of Contents はじめにStory 1: 既読にならないメッセージStory 2: 火曜日のタンゴStory 3: いつかのための家Story 4: 神が答えなかった夜Story 5: 最後ではない日最後に Story 1: 既読にならないメッセージ午後11時47分。&#160;ソウルの雨は、もう三時間も降り続いていた。&#160;58歳のソヨンは、ダイニングテーブルに一人で座っていた。&#160;窓の向こうでは、濡れた道路を車のライトが流れていく。&#160;テーブルの上には、半分ほど残った柚子茶。&#160;そしてスマートフォン。&#160;画面には、一人の名前が表示されていた。&#160;ジウン。&#160;妹だった。&#160;最後に話したのは、7年前だった。&#160;母が倒れたのは、その少し前だった。&#160;脳梗塞だった。&#160;命は助かったが、一人で生活することが難しくなった。&#160;姉妹は最初、協力していた。&#160;病院。&#160;リハビリ。&#160;介護施設。&#160;保険。&#160;役所。&#160;母の家の整理。&#160;しかし、少しずつ不満が積もった。&#160;ソヨンには夫がいた。&#160;仕事もあった。&#160;大学生の娘もいた。&#160;ジウンにも仕事があり、まだ高校生の息子がいた。&#160;二人とも忙しかった。&#160;二人とも疲れていた。&#160;そして二人とも、&#160;「自分のほうが多くやっている」&#160;と思い始めた。&#160;ある日、病院の廊下で爆発した。&#160;「どうして昨日来なかったの？」&#160;ソヨンが言った。&#160;「仕事だったの。」&#160;ジウンが答えた。&#160;「私だって仕事してる。」&#160;「お姉ちゃんは家から近いじゃない。」&#160;「近かったら私が全部やるの？」&#160;「全部なんて言ってない。」&#160;「言ってるのと同じじゃない。」&#160;声が大きくなった。&#160;看護師が一度こちらを見た。&#160;でも二人とも止まらなかった。&#160;そしてジウンが言った。&#160;「お姉ちゃんは昔からそう。」&#160;「何が？」&#160;「自分が正しいと思ったら、人の事情なんて見えなくなる。」&#160;その一言で、ソヨンの中の何かが切れた。&#160;「だったら、もう来なくていい。」&#160;ジウンの顔が変わった。&#160;「分かった。」&#160;「私がやるから。」&#160;「そう。お姉ちゃんは何でも一人でできるから。」&#160;「帰って。」&#160;ジウンは帰った。&#160;それが最後の大喧嘩になった。&#160;その後も、必要な連絡だけはした。&#160;母の状態。&#160;介護費。&#160;書類。&#160;しかし、&#160;「元気？」&#160;とは聞かなかった。&#160;誕生日にも連絡しなかった。&#160;旧正月にも会わなかった。&#160;母が亡くなったとき、二人は同じ葬儀場にいた。&#160;でも、ほとんど話さなかった。&#160;参列者の前では姉妹として並んだ。&#160;写真も一緒に撮った。&#160;それでも帰るとき、&#160;「じゃあね。」&#160;だけだった。&#160;最初の一年、ソヨンは怒っていた。&#160;二年目も怒っていた。&#160;三年目になると、怒っている理由を誰かに説明することが面倒になった。&#160;五年目になると、怒りそのものより、&#160;「今さらどうやって話せばいいのか」&#160;が分からなくなった。&#160;七年目。&#160;怒りはほとんど残っていなかった。&#160;でも沈黙だけが残った。&#160;その日の午後、ソヨンは昔の写真を整理していた。&#160;母の写真が出てきた。&#160;その中に、一枚だけ姉妹二人の写真があった。&#160;済州島。&#160;ソヨン、23歳。&#160;ジウン、19歳。&#160;二人とも風で髪がめちゃくちゃになっている。&#160;ジウンが姉の背中に乗っている。&#160;二人とも笑っていた。&#160;ソヨンは写真を長い間見た。&#160;そして突然思った。&#160;私は、この子と7年間も話していない。&#160;「この子」。&#160;58歳のソヨンには、写真の19歳の妹がそう見えた。&#160;夜になって、ソヨンはスマートフォンを開いた。&#160;ジウンとのメッセージ画面を開く。&#160;最後のメッセージは3年前だった。&#160;ジウンからだった。お母さんの写真、私のところにも何枚かあるよ。必要なら送る。ソヨンの返事。大丈夫。ありがとう。それだけだった。&#160;ソヨンは新しいメッセージを書いた。久しぶり。消した。元気？それも消した。この前、昔の写真を見つけた。また消した。&#160;「何を書けばいいのよ。」&#160;誰もいない部屋でつぶやいた。&#160;そして柚子茶を一口飲んだ。&#160;もう冷たくなっていた。&#160;午後11時18分。&#160;もう一度書き始めた。&#160;今度は消さなかった。ジウンへ。&#160;何度も連絡しようと思っていました。でも、何を書けばいいか分からなくて、そのまま7年経ってしまいました。止まる。&#160;また書く。あのとき、あなたに言われたことは今でも覚えています。正直に言えば、今でも少し痛いです。指が止まった。&#160;「少しじゃないでしょう。」&#160;自分で言って、苦笑した。&#160;書き直した。今でも痛いです。そのほうが本当だった。&#160;しばらくして続けた。でも、私もあなたを傷つけたと思います。&#160;あの頃の私は疲れていました。あなたも疲れていたんだと思います。&#160;だから全部なかったことにしようとは思っていません。ソヨンはここで長く止まった。&#160;そして書いた。私はまだ、あなたに腹が立っている部分があります。たぶんあなたも私に腹が立っていると思います。読んで、少し笑った。&#160;「何よ、この仲直りのメッセージ。」&#160;でも消さなかった。&#160;最後に一文だけ書いた。ただ、あなたを憎むために、これ以上私の人生を使いたくありません。ソヨンはその文章を見つめた。&#160;不思議だった。&#160;「許します」&#160;とは書いていない。&#160;「全部忘れます」&#160;とも書いていない。&#160;「昔に戻ろう」&#160;とも書いていない。&#160;でも、初めて本当のことを書いた気がした。&#160;午後11時46分。&#160;送信ボタンの上に親指を置いた。&#160;押せなかった。&#160;心臓が速くなった。&#160;もし返事がなかったら？&#160;もし、&#160;「今さら何？」&#160;と返ってきたら？&#160;もしまた喧嘩になったら？&#160;もしジウンが、&#160;「私はまだ許していない」&#160;と言ったら？&#160;ソヨンはスマートフォンをテーブルに置いた。&#160;「明日の朝にしよう。」&#160;そう言った。&#160;午後11時47分。&#160;電話が鳴った。&#160;画面には、&#160;ミンジュ&#160;と表示された。&#160;ジウンの息子だった。&#160;こんな時間に電話してくることなどない。&#160;嫌な感じがした。&#160;「もしもし？」&#160;数秒、何も聞こえなかった。&#160;「ミンジュ？」&#160;向こうから息を吸う音がした。&#160;「伯母さん。」&#160;声が震えていた。&#160;「どうしたの？」&#160;「母さんが……。」&#160;そこで声が途切れた。&#160;ソヨンは立ち上がった。&#160;「ジウンが何？」&#160;「母さんが倒れて。」&#160;ソヨンは椅子につかまった。&#160;「救急車は？」&#160;「病院にいる。」&#160;「どこの病院？」&#160;ミンジュが答えた。&#160;ソヨンは上着をつかんだ。&#160;そのとき、&#160;ミンジュが言った。&#160;「伯母さん。」&#160;「何？」&#160;長い沈黙。&#160;そして、&#160;「間に合わなかった。」&#160;ソヨンは動かなかった。&#160;雨の音だけが聞こえた。&#160;「何が？」&#160;自分でも分かっていた。&#160;でも聞いた。&#160;「何が間に合わなかったの？」&#160;ミンジュが泣いた。&#160;「母さん、亡くなった。」&#160;ソヨンは、そのあとどうやって病院へ行ったのか、ほとんど覚えていない。&#160;タクシーだった。&#160;雨だった。&#160;運転手が何か聞いた。&#160;たぶん行き先の確認だった。&#160;何と答えたか覚えていない。&#160;ただ、スマートフォンを握っていた。&#160;画面には送られなかった文章が残っていた。&#160;病院でジウンを見た。&#160;眠っているようだった。&#160;ソヨンは妹の手を触った。&#160;冷たかった。&#160;「ジウン。」&#160;返事はない。&#160;「私、書いたの。」&#160;声が出なかった。&#160;「今日、書いたのよ。」&#160;スマートフォンを見せた。&#160;意味がないことは分かっていた。&#160;「送ろうと思ってた。」&#160;涙が落ちた。&#160;「本当に。」&#160;そして初めて、&#160;7年間言わなかった名前を何度も呼んだ。&#160;「ジウン。」&#160;「ジウン。」&#160;「ジウン。」&#160;葬儀が終わったあと、ソヨンは自分を責め始めた。&#160;最初は、&#160;一日。&#160;「昨日送っていれば。」&#160;それが、&#160;一週間&#160;になった。&#160;「先週送っていれば。」&#160;そして、&#160;一年。&#160;「去年送っていれば。」&#160;最後には、&#160;七年。&#160;「あの日、帰れなんて言わなければ。」&#160;夜になると、過去を作り直した。&#160;あの病院の廊下。&#160;もし自分が違う言葉を言っていたら。&#160;もしジウンを追いかけていたら。&#160;もし母の葬儀で隣に座っていたら。&#160;もし3年前の、お母さんの写真、必要なら送る。というメッセージに、ありがとう。今度ご飯でも食べよう。と返していたら。&#160;人生には無数の分岐点があった。&#160;ソヨンは毎晩、その一つ一つへ戻った。&#160;しかし、どの道を選び直しても、&#160;朝になると同じ部屋に戻ってきた。&#160;ジウンはいなかった。&#160;ある日、娘のユナが言った。&#160;「お母さん。」&#160;「何？」&#160;「もう自分をいじめるのやめたら？」&#160;ソヨンは怒った。&#160;「あなたに何が分かるの？」&#160;ユナは黙った。&#160;ソヨンはすぐに後悔した。&#160;でも謝らなかった。&#160;その夜、ソヨンは気づいた。&#160;同じことが始まっている。&#160;傷つく。&#160;怒る。&#160;黙る。&#160;相手も黙る。&#160;時間が過ぎる。&#160;そして、&#160;「今さら」&#160;になる。&#160;それから二年後。&#160;ソヨンとユナは、小さなことで喧嘩した。&#160;ユナは結婚して家を出ていた。&#160;仕事のこと。&#160;夫のこと。&#160;孫をいつ作るのかという、ソヨンの余計な一言。&#160;ユナは怒った。&#160;「お母さんは、どうして私の人生を自分の思い通りにしようとするの？」&#160;ソヨンも言い返した。&#160;「心配して言ってるだけでしょう！」&#160;「だから、それが嫌なの！」&#160;電話が切れた。&#160;三日間、連絡はなかった。&#160;四日目。&#160;メッセージが来た。お母さん。しばらく距離を置きたい。ソヨンは画面を見た。&#160;胸の中に、昔と同じものが出てきた。&#160;怒り。&#160;「勝手にしなさい。」&#160;そう書いた。&#160;送ろうとした。&#160;指が止まった。&#160;突然、7年前の病院の廊下が見えた。&#160;ジウンの顔。&#160;「分かった。」&#160;「そう。お姉ちゃんは何でも一人でできるから。」&#160;そして、&#160;午後11時47分。&#160;ミンジュからの電話。&#160;ソヨンは、勝手にしなさい。を消した。&#160;長い文章を書こうとした。&#160;それもやめた。&#160;代わりに三行だけ書いた。分かった。会いたくなったら、私はここにいる。愛してるよ。送信。&#160;今度は待たなかった。&#160;一分。&#160;二分。&#160;三分。&#160;返事は来ない。&#160;ソヨンはスマートフォンを伏せた。&#160;胸が苦しかった。&#160;でも、不思議と後悔はなかった。&#160;十分後。&#160;画面が光った。&#160;ソヨンは恐る恐る見る。&#160;ユナからだった。&#160;返事はない。&#160;ただ、メッセージの下に小さく表示されていた。&#160;既読&#160;ソヨンはその二文字を長い間見つめた。&#160;その夜、久しぶりにジウンへのメッセージを開いた。&#160;あの日書いた文章は、まだ下書きのまま残してあった。ただ、あなたを憎むために、これ以上私の人生を使いたくありません。ソヨンは読み返した。&#160;そして、その下に一行だけ書き足した。今日、ユナには間に合ったよ。送信ボタンは押さなかった。&#160;押す相手は、もういない。&#160;それでもよかった。&#160;窓の外では、また雨が降り始めていた。&#160;ソヨンはスマートフォンを置き、窓を少し開けた。&#160;冷たい風が入ってくる。&#160;ジウンとの七年間は戻らない。&#160;最後の言葉も変えられない。&#160;赦しが完成したわけでもない。&#160;後悔が消えたわけでもない。&#160;それでも、ジウンを失ったことで知ったことを、&#160;今度は、&#160;まだ失っていない人に使うことができた。&#160;ソヨンは暗い窓の向こうを見ながら、小さく言った。&#160;「ありがとう、ジウン。」&#160;そして少し考えて、&#160;「ごめんね。」&#160;もう一度考えて、&#160;最後には、&#160;「愛してるよ。」&#160;と言った。&#160;三つとも本当だった。&#160;だから、一つに決める必要はなかった。Footnote｜『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』とのつながりこの物語でソヨンの傷も後悔も消えません。Part 1で考えた「傷ついたあとも愛せるのか」という問いと、Part 2で見えてきた「過去の自分を現在の知恵で裁き続けない」という視点を、取り返せない死によって最大化しました。Healingとは過去を書き換えることではありません。失って学んだことを、まだ失っていない人への愛に変えること。 ソヨンにとって、それが「傷ついた自分を連れたまま、もう一度愛する」ということなのです。Story 2: 火曜日のタンゴ火曜日の夜になると、エレナはいつも時計を見た。&#160;午後7時15分。&#160;以前なら、この時間にはミゲルが寝室から声をかけていた。&#160;「エレナ、まだ？」&#160;エレナは鏡の前でイヤリングを選びながら答えた。&#160;「あなたが早すぎるのよ。」&#160;「踊りに遅刻する人間なんて信用できない。」&#160;「あなた、踊りは始まってからでもできるでしょう。」&#160;「人生も同じだ。」&#160;「また始まった。」&#160;そんな会話を48年間続けた。&#160;毎週火曜日。&#160;雨の日も。&#160;寒い日も。&#160;少し喧嘩した日も。&#160;二人はブエノスアイレスの小さなタンゴホールへ行った。&#160;店の名前は、&#160;La Estrella Vieja&#160;古い星。&#160;立派な店ではなかった。&#160;床は何度も磨かれていたが、ところどころ傷があった。&#160;壁には若い頃の歌手たちの白黒写真。&#160;天井には古い扇風機。&#160;赤いランプ。&#160;狭いバーカウンター。&#160;そして、何十年も同じ曜日に顔を合わせてきた人たち。&#160;ミゲルは決して上手な踊り手ではなかった。&#160;エレナは何度も足を踏まれた。&#160;「痛い！」&#160;「愛してるよ。」&#160;「それで許されると思ってる？」&#160;「48年間、それでやってきた。」&#160;そう言ってミゲルは笑った。&#160;エレナも笑った。&#160;ミゲルが死んだのは、火曜日ではなかった。&#160;土曜日だった。&#160;午前4時12分。&#160;エレナが隣で眠っている間に、心臓が止まった。&#160;目を覚ましたとき、彼の手が冷たくなっていた。&#160;突然だった。&#160;病院へ行く時間もなかった。&#160;最後の言葉もなかった。&#160;前の晩、二人はテレビを見ていた。&#160;ミゲルは途中で居眠りした。&#160;エレナは毛布をかけた。&#160;「ベッドで寝なさい。」&#160;「あと5分。」&#160;それが最後の会話になった。&#160;葬儀から一週間後。&#160;火曜日の午後7時15分。&#160;エレナは時計を見た。&#160;そして初めて気づいた。&#160;今夜、踊りには行かない。&#160;翌週も。&#160;その翌週も。&#160;火曜日だけが、ほかの曜日より長くなった。&#160;一年が過ぎた。&#160;人々は言った。&#160;「少しずつ元気になったね。」&#160;エレナはその言葉が嫌いだった。&#160;元気になったわけではない。&#160;朝起きるようになっただけだった。&#160;買い物へ行く。&#160;洗濯をする。&#160;友人とコーヒーを飲む。&#160;孫の誕生日に参加する。&#160;テレビを見て笑う。&#160;それでも夜になると、ミゲルに話しかけた。&#160;「今日、あなたの嫌いだったトマトが安かったわよ。」&#160;「ニュースを見た？」&#160;「またあの政治家が変なこと言ってた。」&#160;返事はない。&#160;それでも話した。&#160;ミゲルが亡くなってから一年と二か月。&#160;火曜日の午後。&#160;友人のアナから電話が来た。&#160;「今夜、La Estrella Viejaに行くわよ。」&#160;エレナはすぐに言った。&#160;「行かない。」&#160;「踊らなくていい。」&#160;「行かない。」&#160;「座っていればいい。」&#160;「どうしてそんなところに座っていなきゃいけないの。」&#160;アナは少し黙った。&#160;そして言った。&#160;「あなたが好きだった場所だから。」&#160;エレナは答えなかった。&#160;アナは続けた。&#160;「ミゲルが好きだった場所じゃない。」&#160;「あなたも好きだった場所でしょう。」&#160;午後7時15分。&#160;エレナは鏡の前に立っていた。&#160;イヤリングを選んでいる自分に気づいて、腹が立った。&#160;「何してるのよ。」&#160;鏡の中の自分に言った。&#160;イヤリングを外した。&#160;でも、またつけた。&#160;店の扉を開けた瞬間、胸が締めつけられた。&#160;音。&#160;匂い。&#160;照明。&#160;何も変わっていなかった。&#160;赤いランプ。&#160;古い写真。&#160;天井の扇風機。&#160;奥のバーカウンター。&#160;そして、&#160;いつもミゲルが座っていた椅子。&#160;空いていた。&#160;エレナは立ち止まった。&#160;「帰る。」&#160;アナが腕をつかんだ。&#160;「5分だけ。」&#160;「無理。」&#160;「5分。」&#160;二人は壁際の小さなテーブルに座った。&#160;演奏が始まった。&#160;バンドネオンの最初の音。&#160;エレナは顔を伏せた。&#160;ミゲルの手が背中にあるような気がした。&#160;「近すぎる。」&#160;いつもエレナが言った。&#160;「タンゴなんだから近くていいんだ。」&#160;ミゲルが答えた。&#160;その声が聞こえた気がした。&#160;隣のテーブルで、年配の男性が大声で笑った。&#160;その笑い声を聞いた瞬間、&#160;エレナは腹が立った。&#160;こんなに腹が立ったのは久しぶりだった。&#160;なぜ笑えるの？&#160;ミゲルが死んだのに。&#160;店が普通に営業している。&#160;音楽が流れている。&#160;人が踊っている。&#160;誰かがワインを注文している。&#160;誰かが恋をしている。&#160;誰かが笑っている。&#160;世界が、&#160;何もなかったように続いている。&#160;「エレナ。」&#160;アナが言った。&#160;「何？」&#160;「大丈夫？」&#160;「大丈夫じゃない。」&#160;「帰る？」&#160;エレナは答えようとした。&#160;そのとき、向こうで踊っていた男性が派手に足を滑らせた。&#160;転びはしなかった。&#160;しかし、相手の女性も一緒によろけた。&#160;二人とも止まった。&#160;男性が何か言った。&#160;女性が笑い出した。&#160;周りも笑った。&#160;エレナも、&#160;一瞬、&#160;笑ってしまった。&#160;自分が笑ったと気づいた瞬間、&#160;顔から笑みが消えた。&#160;罪悪感が胸を刺した。&#160;私は今、笑った。&#160;ミゲルがいないのに。&#160;ミゲルはもう笑えないのに。&#160;私は笑った。&#160;エレナは立ち上がった。&#160;「帰る。」&#160;アナは追いかけなかった。&#160;家に着くと、エレナはミゲルの写真の前に座った。&#160;若い頃の写真だった。&#160;二人とも30代。&#160;ミゲルの髪はまだ黒い。&#160;エレナのスカートは、今なら絶対に履かないほど短かった。&#160;「ごめん。」&#160;エレナは言った。&#160;しばらくして自分でも驚いた。&#160;何に謝っているのだろう。&#160;笑ったこと？&#160;一晩外出したこと？&#160;生きていること？&#160;次の火曜日。&#160;アナからメッセージが来た。今夜どうする？エレナは、行かない。と返した。&#160;しかし午後7時10分。&#160;コートを着た。&#160;店に入ると、先週と同じテーブルに座った。&#160;今日は少しだけ長くいられた。&#160;踊らなかった。&#160;その翌週。&#160;また行った。&#160;その夜、一人の老人がエレナの前に立った。&#160;70代後半くらい。&#160;背は高くない。&#160;銀色の髪。&#160;紺色のジャケット。&#160;彼は片手を差し出した。&#160;「一曲、いかがですか。」&#160;エレナはすぐに答えた。&#160;「いいえ。」&#160;老人は笑った。&#160;「分かりました。」&#160;それだけ言って去った。&#160;次の火曜日。&#160;同じ老人が来た。&#160;「今日は？」&#160;「いいえ。」&#160;「分かりました。」&#160;三週目。&#160;「一曲だけ。」&#160;「踊りません。」&#160;「分かりました。」&#160;エレナは少し腹が立った。&#160;「毎週聞くつもりですか？」&#160;老人は考えた。&#160;「あなたが本当に嫌なら、もう聞きません。」&#160;エレナは言葉に詰まった。&#160;「私は……。」&#160;「はい。」&#160;「踊りたくないわけじゃないの。」&#160;「はい。」&#160;「踊れないの。」&#160;老人は少しだけうなずいた。&#160;「分かりました。」&#160;去っていった。&#160;その夜、エレナはアナに言った。&#160;「変なのよ。」&#160;「何が？」&#160;「踊ったら、ミゲルを裏切るみたいで。」&#160;アナは何も言わなかった。&#160;「おかしいでしょう？」&#160;「おかしくない。」&#160;「でも、死んで一年以上よ。」&#160;「時間の話じゃないでしょう。」&#160;エレナはワインを見つめた。&#160;「48年一緒にいたの。」&#160;「知ってる。」&#160;「48年。」&#160;「うん。」&#160;「それが、一年ちょっとで普通になるわけないでしょう。」&#160;「普通にしなくていいんじゃない？」&#160;エレナは顔を上げた。&#160;アナは言った。&#160;「ミゲルを忘れなくていい。」&#160;「そんなの分かってる。」&#160;「本当に？」&#160;エレナは黙った。&#160;アナは続けた。&#160;「あなた、悲しんでいない瞬間があるたびに、自分を罰してる。」&#160;エレナの顔が固くなった。&#160;「違う。」&#160;「違わない。」&#160;「私は48年も一緒にいたのよ。」&#160;「だから？」&#160;「だから……。」&#160;言葉が出なかった。&#160;アナが静かに聞いた。&#160;「悲しみ続けることが、ミゲルを愛していた証明になるの？」&#160;エレナは怒った。&#160;「そんな言い方しないで。」&#160;「ごめん。」&#160;「ミゲルのこと何も分からないくせに。」&#160;「そうね。」&#160;「帰る。」&#160;エレナはバッグを持った。&#160;アナは止めなかった。&#160;帰宅後。&#160;エレナは寝室のクローゼットを開けた。&#160;ミゲルの服はまだ一部残していた。&#160;紺色のシャツ。&#160;茶色のジャケット。&#160;古いネクタイ。&#160;彼の服に顔を埋めた。&#160;匂いはほとんど消えていた。&#160;それが悲しかった。&#160;「ミゲル。」&#160;声に出した。&#160;「私、あなたを忘れてるの？」&#160;返事はない。&#160;夢を見た。&#160;若い頃のミゲルだった。&#160;二人で踊っている。&#160;夢の中でエレナは言った。&#160;「あなたがいないから、もう踊れない。」&#160;ミゲルは笑った。&#160;「僕、そんなに上手かった？」&#160;エレナも笑った。&#160;そこで目が覚めた。&#160;火曜日。&#160;午後7時15分。&#160;エレナはいつもより少し早く店に着いた。&#160;あの老人は、すでにいた。&#160;別の女性と踊っていた。&#160;エレナは見ていた。&#160;嫉妬ではなかった。&#160;安心した。&#160;彼は自分を待っていたわけではない。&#160;人生は、自分の決断を中心に回っていなかった。&#160;それが少し楽だった。&#160;曲が終わった。&#160;老人が席へ戻ろうとした。&#160;エレナが立った。&#160;「すみません。」&#160;老人が振り返った。&#160;「はい？」&#160;エレナは深く息を吸った。&#160;「一曲だけ。」&#160;老人は笑った。&#160;「もちろん。」&#160;フロアへ出る。&#160;エレナの足が震えた。&#160;老人が言った。&#160;「ゆっくりでいいですよ。」&#160;「言われなくても分かってる。」&#160;老人が少し笑った。&#160;音楽が始まった。&#160;一歩。&#160;二歩。&#160;三歩。&#160;エレナの身体が、昔の動きを思い出し始めた。&#160;頭では忘れていた。&#160;身体は覚えていた。&#160;そして突然、&#160;ミゲルの手を思い出した。&#160;背中に置かれた手。&#160;少し強すぎる力。&#160;「近すぎる。」&#160;「タンゴなんだから近くていいんだ。」&#160;涙が出た。&#160;老人が動きを止めようとした。&#160;エレナは首を振った。&#160;「止めないで。」&#160;「でも……。」&#160;「お願い。」&#160;二人は踊り続けた。&#160;エレナは泣いた。&#160;人が見ているかもしれない。&#160;どうでもよかった。&#160;涙が頬を流れた。&#160;それでも足は動いた。&#160;曲が終わった。&#160;老人が言った。&#160;「ありがとうございました。」&#160;エレナは涙を拭いた。&#160;「こちらこそ。」&#160;「大丈夫ですか？」&#160;エレナは少し考えた。&#160;「いいえ。」&#160;そして笑った。&#160;「でも、それでいいみたい。」&#160;その夜。&#160;家へ帰ったエレナは、いつもの写真の前に座った。&#160;ミゲルの若い顔。&#160;「今日、踊った。」&#160;沈黙。&#160;「知らない男と。」&#160;少し笑う。&#160;「嫉妬する？」&#160;もちろん返事はない。&#160;エレナの目にまた涙がたまった。&#160;「最初は、あなたを忘れてしまう気がした。」&#160;写真を見る。&#160;「笑ったら。」&#160;「楽しかったら。」&#160;「踊ったら。」&#160;「あなたとの48年が薄くなってしまう気がした。」&#160;長い間黙った。&#160;そして、&#160;ゆっくり言った。「でも違った。」「あなたを忘れたから踊ったんじゃない。」「あなたを愛した人生が、まだ私の中にあるから踊ったの。」翌週の火曜日。&#160;午後7時15分。&#160;エレナは店にいた。&#160;あの老人が来た。&#160;「今日は？」&#160;エレナは言った。&#160;「一曲だけ。」&#160;老人が笑った。&#160;「先週もそう言いました。」&#160;「じゃあ二曲。」&#160;数か月後。&#160;エレナは毎週踊るようになった。&#160;時々、途中で泣いた。&#160;時々、ずっと笑っていた。&#160;一晩中座っている日もあった。&#160;ミゲルの命日には行かなかった。&#160;その日は家で彼に話しかけた。&#160;悲しみ方に規則はなくなった。&#160;ある火曜日。&#160;若い女性が店の隅で泣いていた。&#160;30代くらい。&#160;結婚指輪はしていなかった。&#160;何があったのか、エレナには分からない。&#160;失恋かもしれない。&#160;死別かもしれない。&#160;仕事かもしれない。&#160;エレナは理由を聞かなかった。&#160;隣に座った。&#160;女性が言った。&#160;「ここに来るべきじゃなかった。」&#160;エレナは聞いた。&#160;「なぜ？」&#160;「悲しいのに、みんな楽しそうで。」&#160;エレナはフロアを見た。&#160;笑っている人。&#160;真剣な顔の人。&#160;目を閉じて踊る人。&#160;足を踏まれて怒っている人。&#160;そして言った。&#160;「私も最初、そう思った。」&#160;女性が顔を上げた。&#160;エレナは少し笑った。&#160;「でもね。」&#160;フロアを見ながら言った。「悲しい人が踊ってはいけないなんて、誰も決めてないみたいよ。」演奏が始まった。&#160;あの老人が遠くから手を上げた。&#160;エレナも手を上げた。&#160;すぐには立たなかった。&#160;まず目の前の女性に言った。&#160;「ここにいてもいいのよ。」&#160;女性は少しだけうなずいた。&#160;エレナは立ち上がった。&#160;踊り始める。&#160;ミゲルはもういない。&#160;その事実は一ミリも変わらない。&#160;48年の結婚も、&#160;最後の夜も、&#160;冷たくなった手も、&#160;空になった椅子も、&#160;火曜日の寂しさも、&#160;何一つ消えていない。&#160;それでも、&#160;音楽は流れている。&#160;エレナの足は動く。&#160;胸の中には悲しみがある。&#160;同じ胸の中に、&#160;喜びもある。&#160;どちらかを追い出す必要はなかった。&#160;エレナは目を閉じた。&#160;そして踊った。Footnote｜『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』とのつながりこの物語では、悲しみを「克服する」ことをゴールにしていません。Part 1で考えた、愛することには失う可能性も含まれているという視点と、Part 2で扱った「悲しみの大きさ＝愛の大きさではない」「悲しみが残っていることと人生が止まっていることは違う」という理解を物語化しました。エレナはミゲルを忘れず、悲しみを抱えたまま再び踊ります。Healingとは、悲しみを消すことではなく、悲しみと喜びが同じ人生の中に共存できるようになることなのです。Story 3: いつかのための家健司が最初にその家の話をしたのは、32歳のときだった。&#160;当時、妻の美紀は30歳。&#160;長男の翔太は4歳。&#160;娘の奈緒はまだ1歳だった。&#160;四人で住んでいたのは、東京郊外の2LDKのマンションだった。&#160;狭かった。&#160;本当に狭かった。&#160;リビングには子どものおもちゃ。&#160;ベランダには洗濯物。&#160;玄関には小さな靴が散らばっていた。&#160;夜になると、健司はダイニングテーブルで仕事をした。&#160;翔太がミニカーを走らせる。&#160;「ブーン。」&#160;健司が言う。&#160;「翔太、ちょっと静かにして。」&#160;「ブーン。」&#160;「パパ仕事してるから。」&#160;「ブーン！」&#160;「美紀！」&#160;キッチンから美紀が顔を出す。&#160;「何？」&#160;「ちょっと静かにさせてくれない？」&#160;「4歳に？」&#160;健司はため息をついた。&#160;「大事な仕事なんだよ。」&#160;美紀は笑った。&#160;「この子にとっても大事な仕事みたいよ。」&#160;翔太はまた、&#160;「ブーン！」&#160;と言った。&#160;ある夜、子どもたちが寝たあと。&#160;健司は美紀に言った。&#160;「いつか、大きな家を建てよう。」&#160;「突然どうしたの？」&#160;「庭がある家。」&#160;「庭？」&#160;「子どもたちが走れるくらいの。」&#160;美紀が笑った。&#160;「あなた、草むしりしないでしょう。」&#160;「するよ。」&#160;「絶対しない。」&#160;「するって。」&#160;健司は紙に簡単な間取りを描いた。&#160;「ここがリビング。」&#160;「うん。」&#160;「ここに大きなテーブル。」&#160;「何人用？」&#160;「八人。」&#160;美紀が笑った。&#160;「四人家族なのに？」&#160;「将来、子どもたちが結婚したら。」&#160;「もうそこまで考えてるの？」&#160;「孫も来るだろ。」&#160;美紀は笑った。&#160;「気が早い。」&#160;健司も笑った。「いつかね。」その頃、健司は小さなIT会社を立ち上げたばかりだった。&#160;社員は五人。&#160;売上は不安定。&#160;銀行残高を見るたびに胃が痛くなった。&#160;だから働いた。&#160;朝7時に家を出る。&#160;帰宅は午後10時。&#160;時には午前0時。&#160;土曜日も会社。&#160;日曜日だけ家族と過ごした。&#160;それでも携帯電話は鳴った。&#160;ある日曜日。&#160;美紀が言った。&#160;「夏休み、北海道行かない？」&#160;「今年？」&#160;「うん。」&#160;「無理だな。」&#160;「三泊だけ。」&#160;「今、大事な時期なんだ。」&#160;「去年もそう言ったよ。」&#160;「来年は行こう。」&#160;翔太が聞いた。&#160;「来年？」&#160;健司は笑った。&#160;「そう。来年。」&#160;翌年。&#160;会社の売上は倍になった。&#160;社員は12人になった。&#160;北海道には行かなかった。&#160;38歳。&#160;翔太10歳。&#160;奈緒7歳。&#160;ある朝、奈緒が言った。&#160;「パパ、今日来る？」&#160;「どこに？」&#160;奈緒の顔が変わった。&#160;「発表会。」&#160;健司は止まった。&#160;「ああ。」&#160;美紀がキッチンから彼を見る。&#160;「午後2時。」&#160;「分かってる。」&#160;「本当に？」&#160;「行くよ。」&#160;奈緒が笑った。&#160;「絶対？」&#160;「絶対。」&#160;午後1時40分。&#160;健司は会社を出ようとしていた。&#160;電話が鳴った。&#160;大口顧客だった。&#160;システムに問題が起きていた。&#160;「30分だけ。」&#160;健司は自分に言った。&#160;午後2時10分。&#160;まだ電話。&#160;午後2時40分。&#160;解決。&#160;健司は急いで車に乗った。&#160;学校に着いたとき、保護者たちが帰り始めていた。&#160;奈緒が美紀と歩いてきた。&#160;「ごめん。」&#160;奈緒は言った。&#160;「いいよ。」&#160;その「いいよ」が、健司には少し痛かった。&#160;「動画撮った？」&#160;美紀が言った。&#160;「撮ったよ。」&#160;「家で見る。」&#160;奈緒は何も言わなかった。&#160;その夜、健司は発表会の動画を見た。&#160;画面の中で奈緒が歌っている。&#160;健司は途中で仕事のメールを確認した。&#160;43歳。&#160;会社はさらに大きくなった。&#160;社員35人。&#160;健司は初めて年収で自分が目標にしていた数字を超えた。&#160;その夜、美紀に言った。&#160;「そろそろ家、本気で考えようか。」&#160;美紀は食器を洗いながら答えた。&#160;「まだ覚えてたの？」&#160;「当たり前だろ。」&#160;「八人用のテーブル？」&#160;「もちろん。」&#160;美紀が笑った。&#160;「翔太、高校生よ。」&#160;「だから？」&#160;「あと何年家にいると思ってるの？」&#160;健司は少し考えた。&#160;「大学も家から通えばいいだろ。」&#160;美紀は何も言わなかった。&#160;その年、健司の父親が電話してきた。&#160;「たまには顔見せろ。」&#160;「今忙しいんだよ。」&#160;「正月以来だぞ。」&#160;「来月行く。」&#160;「来月っていつだ。」&#160;「スケジュール見て連絡する。」&#160;父親が笑った。&#160;「お前のスケジュールに父親も予約が必要なのか。」&#160;「そういう意味じゃないよ。」&#160;「分かってる。」&#160;「来月行くから。」&#160;「はいはい。」&#160;来月。&#160;行かなかった。&#160;その次の月も。&#160;47歳。&#160;翔太は大学生になり、家を出た。&#160;奈緒も高校3年生。&#160;健司の会社は社員70人。&#160;念願だった土地を買った。&#160;建築家との打ち合わせで、健司は興奮していた。&#160;「ここ、もっと広くできます？」&#160;「できます。」&#160;「ダイニングテーブルは最低八人。」&#160;美紀が横から言った。&#160;「まだ八人？」&#160;「子どもたちが帰ってくるだろ。」&#160;建築家が微笑んだ。&#160;「素敵ですね。」&#160;健司は満足そうに図面を見た。&#160;その冬。&#160;父親が倒れた。&#160;健司が病院へ着いたとき、父親は意識を失っていた。&#160;三日後に亡くなった。&#160;葬儀のあと、実家を整理した。&#160;引き出しの中から、一枚の紙が出てきた。&#160;健司の会社の記事だった。&#160;雑誌から切り抜いてある。&#160;赤いペンで、&#160;「健司」&#160;と丸がついていた。&#160;その横に父親の字で、&#160;「よく頑張った。」&#160;と書いてあった。&#160;健司は長い間、その紙を見た。&#160;美紀が隣に来た。&#160;「お父さん、嬉しかったんだね。」&#160;健司は答えた。&#160;「来月行くって言ったんだ。」&#160;美紀は何も言わなかった。&#160;「何回も。」&#160;それ以上、言えなかった。&#160;52歳。&#160;ついに家が完成した。&#160;健司が32歳のときに描いた家より、ずっと立派だった。&#160;広いリビング。&#160;大きな窓。&#160;庭。&#160;客室。&#160;そして、&#160;八人座れる巨大なダイニングテーブル。&#160;引っ越しの日、健司は嬉しかった。&#160;「どう？」&#160;美紀に聞いた。&#160;「素敵。」&#160;「だろ？」&#160;「うん。」&#160;「子どもたち、驚くだろうな。」&#160;美紀は少しだけ笑った。&#160;翔太は大阪で働いていた。&#160;奈緒は大学卒業後、シンガポールの会社に就職していた。&#160;引っ越しには二人とも来られなかった。&#160;翔太からメッセージ。写真見た！すごい家だね。年末には帰れると思う。奈緒から。めちゃくちゃきれい！今度日本帰ったら泊まる！健司は二人に、待ってるよ。と返した。&#160;最初の夜。&#160;美紀と二人で、新しいテーブルに座った。&#160;八つの椅子。&#160;使っているのは二つ。&#160;健司が言った。&#160;「静かだな。」&#160;美紀はワインを飲んだ。&#160;「そうね。」&#160;「前のマンション、うるさかったよな。」&#160;「うん。」&#160;「翔太のミニカー。」&#160;美紀が笑った。&#160;「ブーン。」&#160;健司も笑った。&#160;「本当にうるさかった。」&#160;二人は笑った。&#160;そして、急に静かになった。&#160;健司は大きなリビングを見た。&#160;32歳の自分が欲しかったものが、全部そこにあった。&#160;広さ。&#160;静けさ。&#160;庭。&#160;立派な家具。&#160;大きなテーブル。&#160;でも、&#160;32歳の自分がこの家に入れたかった人たちは、&#160;もうここには住んでいなかった。&#160;数週間後。&#160;健司が仕事から帰ったのは午後10時半だった。&#160;美紀は一人でテレビを見ていた。&#160;「ただいま。」&#160;「おかえり。」&#160;「ご飯ある？」&#160;「冷蔵庫。」&#160;健司は温めて、一人で食べ始めた。&#160;美紀はテレビを消した。&#160;「健司。」&#160;「何？」&#160;「聞いていい？」&#160;「うん。」&#160;「この家、誰のために建てたの？」&#160;健司は笑った。&#160;「何だよ突然。」&#160;「誰のため？」&#160;「家族だよ。」&#160;「家族って誰？」&#160;健司の表情が変わった。&#160;「俺と君と、翔太と奈緒。」&#160;美紀は静かに言った。&#160;「翔太は大阪。」&#160;「分かってる。」&#160;「奈緒はシンガポール。」&#160;「帰ってくるだろ。」&#160;「そういう意味じゃない。」&#160;健司は箸を置いた。&#160;美紀は大きなテーブルを見た。&#160;「あなた、ずっと言ってたよね。」&#160;「何を？」&#160;「家族のため。」&#160;「そうだよ。」&#160;「会社も家族のため。」&#160;「そう。」&#160;「仕事も家族のため。」&#160;「当たり前だろ。」&#160;「この家も家族のため。」&#160;「何が言いたいんだよ。」&#160;美紀はしばらく黙った。&#160;そして言った。「私はこの家を待ってたんじゃないの。」健司は彼女を見る。「あなたを待ってたの。」健司は何も言えなかった。&#160;美紀は怒鳴らなかった。&#160;泣かなかった。&#160;そのほうが痛かった。&#160;その夜、健司は眠れなかった。&#160;午前2時。&#160;リビングへ降りた。&#160;大きなテーブルに座った。&#160;スマートフォンを開いた。&#160;昔の写真を探した。&#160;狭いマンション。&#160;翔太のミニカー。&#160;奈緒の発表会。&#160;北海道へ行こうと言っていた頃。&#160;父親。&#160;写真の中では、みんな若かった。&#160;健司自身も。&#160;そして、嫌な考えが浮かんだ。「30年、無駄にした。」胸が苦しくなった。&#160;そのとき、美紀が降りてきた。&#160;「何してるの？」&#160;「眠れない。」&#160;美紀が向かいに座った。&#160;健司は言った。&#160;「俺、間違ってたのかな。」&#160;美紀はすぐには答えなかった。&#160;「全部。」&#160;「全部？」&#160;「仕事。」&#160;「会社。」&#160;「家。」&#160;「俺が頑張ってきたこと。」&#160;美紀は首を振った。&#160;「そんなこと言ってない。」&#160;「でも、さっき……。」&#160;「あなたが働いてくれたから、生活できた。」&#160;健司は黙っている。&#160;「子どもたちも学校に行けた。」&#160;「うん。」&#160;「会社を作ったことだって、私はすごいと思ってる。」&#160;健司は彼女を見る。&#160;「じゃあ何なんだよ。」&#160;美紀は静かに答えた。「良かったことと、失ったことは、同時にあっていいんじゃない？」健司は何も言えなかった。&#160;Part of him wanted a simpler answer.&#160;「あなたは正しかった。」&#160;あるいは、&#160;「あなたは間違っていた。」&#160;どちらかなら楽だった。&#160;でも人生は、そんなにきれいではなかった。&#160;会社を作ったことは良かった。&#160;家族を支えたことも良かった。&#160;仕事が好きだったことも本当だった。&#160;そして、&#160;奈緒の発表会を見逃した。&#160;父親との時間を失った。&#160;美紀を何度も待たせた。&#160;それも全部、本当だった。&#160;健司は言った。&#160;「取り戻せないな。」&#160;美紀がうなずいた。&#160;「うん。」&#160;「翔太の4歳は戻らない。」&#160;「戻らない。」&#160;「奈緒の発表会も。」&#160;「うん。」&#160;「親父も。」&#160;美紀は何も言わなかった。&#160;健司の目に涙が浮かんだ。&#160;「じゃあ、どうすればいい？」&#160;美紀は少し考えた。&#160;「明日、何時に帰ってくる？」&#160;健司は彼女を見る。&#160;「何？」&#160;「明日。」&#160;「たぶん9時くらい。」&#160;美紀は笑った。&#160;「じゃあ、そこから始めたら？」&#160;翌日。&#160;午後5時27分。&#160;健司はパソコンを閉じた。&#160;社員の田中が驚いた。&#160;「社長、どこか行かれるんですか？」&#160;「帰る。」&#160;「え？」&#160;「家。」&#160;「何かあるんですか？」&#160;健司は少し考えた。&#160;「ない。」&#160;田中が笑った。&#160;「じゃあ、どうして？」&#160;健司はバッグを持った。「何もないから。」午後6時14分。&#160;健司は家に着いた。&#160;美紀は驚いた。&#160;「どうしたの？」&#160;「帰ってきた。」&#160;「具合悪い？」&#160;「なんでそうなるんだよ。」&#160;「だって6時よ。」&#160;二人とも笑った。&#160;「夕飯どうする？」&#160;美紀が聞いた。&#160;「何かある？」&#160;「何もない。」&#160;「じゃあ買ってくる。」&#160;近所のコンビニへ二人で歩いた。&#160;秋の夜だった。&#160;少し寒かった。&#160;健司が言った。&#160;「おでんでいい？」&#160;「新築祝いみたいね。」&#160;「もう新築祝い終わっただろ。」&#160;「八人用のテーブルでコンビニのおでん。」&#160;「最高じゃないか。」&#160;二人で帰った。&#160;巨大なテーブル。&#160;八つの椅子。&#160;真ん中にコンビニのおでん。&#160;大根。&#160;卵。&#160;こんにゃく。&#160;餅巾着。&#160;美紀が写真を撮った。&#160;「何で撮るんだよ。」&#160;「奈緒に送る。」&#160;「恥ずかしいだろ。」&#160;美紀は送った。&#160;すぐに奈緒から返事。何これ（笑）豪邸でコンビニおでん？翔太も家族グループに入ってきた。俺も食べたい。健司が返した。帰ってこい。翔太。来月なら。健司は以前なら、&#160;「仕事は？」&#160;と聞いたかもしれない。&#160;今日は、待ってる。とだけ返した。&#160;美紀がテーブルを見た。&#160;「やっぱり大きいね。」&#160;健司も見る。&#160;「大きすぎたな。」&#160;美紀が言った。「二人で使えばいいじゃない。」健司は笑った。&#160;「もったいなくない？」&#160;「何が？」&#160;「八人用だぞ。」&#160;美紀は大根を食べながら答えた。「二人いるじゃない。」健司は何も言わなかった。&#160;その言葉が、なぜか胸に残った。&#160;二人しかいない。&#160;ではなく、&#160;二人いる。&#160;数週間後。&#160;健司は毎日5時半に帰るようになったわけではない。&#160;そんなに簡単ではなかった。&#160;午後11時になる日もあった。&#160;出張もあった。&#160;休日に仕事をすることもあった。&#160;美紀と喧嘩もした。&#160;古い習慣は、決意一つでは消えなかった。&#160;それでも変わったことがあった。&#160;ある水曜日。&#160;午後4時。&#160;父親と同じくらいの年齢の取引先から電話が来た。&#160;話が終わると、その人が言った。&#160;「息子さん元気？」&#160;「はい。」&#160;「たまに会う？」&#160;健司は止まった。&#160;「来月、帰ってきます。」&#160;「いいね。」&#160;健司は言った。&#160;「はい。」&#160;電話を切った。&#160;そしてその場で翔太にメッセージを送った。来月、何食べたい？数分後。おでん（笑）健司は笑った。&#160;冬。&#160;翔太が帰ってきた。&#160;奈緒も休暇を取って日本へ帰ってきた。&#160;久しぶりに四人がそろった。&#160;八人用のテーブル。&#160;四人。&#160;まだ半分空いている。&#160;でも健司はもう、空いている椅子を見なかった。&#160;座っている三人を見た。&#160;奈緒が言った。&#160;「パパ。」&#160;「何？」&#160;「この家、静かすぎない？」&#160;健司は笑った。&#160;「昔は静かな家が欲しかったんだよ。」&#160;翔太が言った。&#160;「俺たち、うるさかったからね。」&#160;健司は答えた。&#160;「うるさかった。」&#160;「ひどい。」&#160;「本当にうるさかった。」&#160;みんなが笑った。&#160;健司も笑った。&#160;そして言った。&#160;「でも……。」&#160;三人が彼を見る。&#160;健司は少しだけ考えた。「あれも、結構よかったな。」その夜。&#160;みんなが寝たあと、健司は一人でリビングに立った。&#160;昔のように、&#160;「もっと大きな家だったら」&#160;とは思わなかった。&#160;「昔に戻れたら」&#160;とも思わなかった。&#160;戻れないことは、もう分かっていた。&#160;窓の外には何も特別なものはなかった。&#160;隣の家の明かり。&#160;道路。&#160;遠くを走る車。&#160;冷たい冬の空。&#160;健司は時計を見る。&#160;火曜日ではなかった。&#160;記念日でもない。&#160;誕生日でもない。&#160;会社の創立記念日でもない。&#160;ただの水曜日だった。&#160;健司はふと思った。&#160;32歳の自分は、&#160;こんな日を待っていたのかもしれない。&#160;家族がいる。&#160;食卓がある。&#160;仕事がある。&#160;家がある。&#160;笑い声がある。&#160;でも、32歳の自分は知らなかった。&#160;その条件が全部整う前から、&#160;人生は始まっていた。&#160;2LDKの狭いマンションでも。&#160;ミニカーの音の中でも。&#160;発表会の日でも。&#160;父親から電話が来た午後でも。&#160;人生はずっと、&#160;本番だった。&#160;健司はスマートフォンを取り出した。&#160;カレンダーを開く。&#160;翌日の予定。&#160;午前8時30分、経営会議。&#160;10時、クライアント。&#160;午後1時、採用面接。&#160;3時、銀行。&#160;5時、資料確認。&#160;以前なら、その下にさらに予定を入れた。&#160;健司は5時30分以降を長押しした。&#160;新しい予定を作る。&#160;タイトルを入力しようとした。&#160;「家族」&#160;と書こうとしてやめた。&#160;「美紀との時間」&#160;もやめた。&#160;最後に、&#160;ただ、帰ると入力した。&#160;翌日。&#160;午後5時31分。&#160;健司は会社を出た。&#160;外はもう暗かった。&#160;何か特別なことをする予定はない。&#160;美紀と旅行へ行くわけでもない。&#160;高級レストランでもない。&#160;家に帰って、&#160;夕食を食べるだけだった。&#160;健司は駅へ向かって歩いた。&#160;そして、初めて少し分かった気がした。&#160;人生を変える日は、&#160;人生を変えようと決意した日ではないのかもしれない。&#160;普通の日を、&#160;「これはまだ人生ではない」&#160;と扱うのをやめた日なのかもしれない。&#160;健司は歩き続けた。&#160;明日のためではなく、&#160;いつかのためでもなく、&#160;今日の家へ帰るために。Footnote｜『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』とのつながり健司の問題は、仕事や成功そのものではありません。家族を支え、未来を作ろうとした努力にも価値がありました。Part 1とPart 2で浮かび上がったのは、未来のために準備することと、未来まで人生を延期することの違いです。健司は失った時間を取り戻せません。しかし、後悔を使って「まだ残っている今日」を見ることはできます。Healingとは過去へ戻ることではなく、人生がすでに起きている現在へ戻ってくることなのです。Story 4: 神が答えなかった夜マリアが最後に神に祈ったのは、息子が死んだ日の朝だった。&#160;正確には、&#160;最後に普通の祈りをしたのが、その朝だった。&#160;午前5時42分。&#160;リスボンの空はまだ暗かった。&#160;病院の小さな礼拝室には誰もいなかった。&#160;マリアは木製の椅子に座り、両手を握った。&#160;「神様。」&#160;声に出した。&#160;「お願いします。」&#160;それから何を言えばいいのか分からなくなった。&#160;10歳の息子、ティアゴ。&#160;病気が見つかったのは、その8か月前だった。&#160;最初は発熱だった。&#160;風邪だと思った。&#160;薬を飲んだ。&#160;熱が下がった。&#160;また上がった。&#160;検査をした。&#160;別の検査をした。&#160;大きな病院へ行った。&#160;そして、医師から病名を聞いた。&#160;マリアはその言葉を知っていた。&#160;でも、&#160;自分の子どもについて使われる言葉だとは思っていなかった。&#160;治療が始まった。&#160;ティアゴの髪が抜けた。&#160;最初は本人も気にしていた。&#160;ある朝、鏡を見て言った。&#160;「ママ。」&#160;「何？」&#160;「僕、卵みたい。」&#160;マリアは笑った。&#160;ティアゴも笑った。&#160;その夜、マリアは浴室で一人で泣いた。&#160;マリアは祈った。&#160;毎朝。&#160;毎晩。&#160;病院へ向かう電車の中。&#160;診察室の前。&#160;治療中。&#160;眠っているティアゴの横。&#160;「治してください。」&#160;「この子を守ってください。」&#160;「お願いします。」&#160;教会の人たちも祈ってくれた。&#160;神父も祈った。&#160;友人も祈った。&#160;親戚も祈った。&#160;メッセージがたくさん届いた。神様を信じて。奇跡は起こるよ。神様には計画があるから。ある女性はマリアの手を握って言った。&#160;「信仰を失わないで。」&#160;マリアはうなずいた。&#160;治療がうまくいった時期もあった。&#160;検査結果が改善した。&#160;医師が言った。&#160;「良い反応です。」&#160;マリアは病院の廊下で泣いた。&#160;今度は嬉しくて泣いた。&#160;その夜、教会へ行った。&#160;「ありがとうございます。」&#160;何度も言った。&#160;「ありがとうございます。」&#160;三か月後。&#160;病気は戻った。&#160;以前より強く。&#160;マリアはもっと祈った。&#160;食事を抜いて祈った。&#160;夜中にも起きた。&#160;聖書を読んだ。&#160;ろうそくを灯した。&#160;他の人にも祈ってもらった。&#160;何かが足りないのではないかと思った。&#160;自分の信仰が弱いのか。&#160;祈り方が悪いのか。&#160;過去に何か罪を犯したのか。&#160;ある夜、ティアゴが聞いた。&#160;「ママ。」&#160;「何？」&#160;「神様にお願いしてる？」&#160;マリアの胸が痛んだ。&#160;「してるよ。」&#160;「毎日？」&#160;「毎日。」&#160;ティアゴは少し考えた。&#160;「じゃあ大丈夫だね。」&#160;マリアは笑った。&#160;「うん。」&#160;でも病室を出た瞬間、&#160;壁に手をついた。&#160;じゃあ大丈夫だね。&#160;その言葉が怖かった。&#160;最後の一週間。&#160;ティアゴはほとんど食べなくなった。&#160;話す時間も短くなった。&#160;それでもある午後、&#160;窓の外を見て言った。&#160;「海に行きたい。」&#160;「元気になったら行こう。」&#160;マリアは答えた。&#160;「カスカイス？」&#160;「うん。」&#160;「アイス食べる？」&#160;ティアゴが笑った。&#160;「二個。」&#160;「一個。」&#160;「二個。」&#160;「じゃあ一個半。」&#160;「けち。」&#160;マリアは笑った。&#160;ティアゴも笑った。&#160;それが二人の最後の長い会話になった。&#160;そして、&#160;午前5時42分。&#160;マリアは病院の礼拝室にいた。&#160;「神様。」&#160;「お願いします。」&#160;「もう何でもします。」&#160;「私の命を少しあげてもいい。」&#160;「十年でも。」&#160;「二十年でも。」&#160;「この子を助けてください。」&#160;泣きながら言った。&#160;「あなたならできるでしょう？」&#160;午前9時17分。&#160;ティアゴは亡くなった。&#160;マリアはその日から祈らなくなった。&#160;最初の数週間、教会の人たちは家に来た。&#160;食事を持ってきてくれた。&#160;掃除をしてくれた。&#160;一緒に泣いてくれた。&#160;それはありがたかった。&#160;しかし言葉が苦しかった。&#160;「ティアゴは今、もっと良い場所にいるよ。」&#160;マリアはうなずいた。&#160;「神様には理由がある。」&#160;うなずいた。&#160;「いつか意味が分かるよ。」&#160;うなずいた。&#160;「神様は耐えられない試練は与えないから。」&#160;そのときだけ、&#160;マリアはうなずけなかった。&#160;ある日、友人が言った。&#160;「きっとティアゴの人生にも、大きな意味があったのよ。」&#160;マリアは聞いた。&#160;「どんな？」&#160;友人は困った。&#160;「それは……私たちにはまだ分からないけど。」&#160;「じゃあ、どうして意味があるって分かるの？」&#160;沈黙。&#160;友人の顔が悲しそうになった。&#160;マリアはすぐに後悔した。&#160;「ごめん。」&#160;「ううん。」&#160;「あなたに怒ってるんじゃない。」&#160;マリアは言った。&#160;そして初めて気づいた。&#160;では、誰に怒っているのだろう。&#160;一年間、マリアは教会へ行かなかった。&#160;神を否定したわけではなかった。&#160;むしろ、その逆だった。&#160;もし完全に信じなくなったのなら、&#160;怒る必要もなかった。&#160;でもマリアは怒っていた。&#160;毎日。&#160;日曜日の朝。&#160;遠くで教会の鐘が鳴る。&#160;マリアは窓を閉めた。&#160;クリスマス。&#160;教会の前を通らない道を選んだ。&#160;ティアゴの誕生日。&#160;カスカイスへ一人で行った。&#160;海辺でアイスクリームを二つ買った。&#160;一つを自分で食べた。&#160;もう一つは溶けていった。&#160;「二個。」&#160;あの声が聞こえる気がした。&#160;ティアゴが亡くなって一年と三か月。&#160;11月の夜。&#160;リスボンには珍しく強い雨が降っていた。&#160;マリアは仕事から帰る途中だった。&#160;傘が壊れた。&#160;雨宿りするため、近くの建物の軒下へ走った。&#160;そこが教会だった。&#160;以前通っていた教会ではない。&#160;小さな古い教会。&#160;扉が開いていた。&#160;マリアは中へ入った。&#160;雨が弱くなるまで。&#160;それだけのつもりだった。&#160;中にはほとんど誰もいなかった。&#160;ろうそくが数本。&#160;古い木の椅子。&#160;祭壇。&#160;奥のほうに、一人の老女が座っていた。&#160;マリアは一番後ろに座った。&#160;祭壇を見ないようにした。&#160;雨はなかなか止まなかった。&#160;十分。&#160;二十分。&#160;三十分。&#160;マリアは帰ればよかった。&#160;でも帰らなかった。&#160;気がつくと、&#160;祭壇を見ていた。&#160;そして、&#160;一年以上言わなかった言葉が出た。&#160;「神様。」&#160;自分でも驚いた。&#160;声が震えた。&#160;「いるの？」&#160;老女が少しだけこちらを見た。&#160;マリアは構わず続けた。&#160;「いるなら。」&#160;胸の奥から何かが上がってきた。&#160;「どうして？」&#160;一年以上閉じ込めていたものが出た。&#160;「どうしてティアゴだったの？」&#160;「10歳だった。」&#160;「何も悪いことしてない。」&#160;「私は祈った。」&#160;「毎日祈った。」&#160;声が大きくなった。&#160;「みんなで祈った。」&#160;「あなたならできるって言ったでしょう。」&#160;誰が言ったのか分からない。&#160;教会の人か。&#160;自分自身か。&#160;聖書なのか。&#160;世界なのか。&#160;「私は信じたのよ。」&#160;マリアは泣き始めた。&#160;「信じたのに。」&#160;「助けてくれなかった。」&#160;「何のためだったの？」&#160;「何を学べっていうの？」&#160;「私が何か学ぶために、あの子が死ぬ必要があったの？」&#160;声が教会に響いた。&#160;老女は動かなかった。&#160;マリアは立ち上がった。&#160;祭壇を見た。&#160;そして言った。「私はあなたを赦していません。」静かだった。&#160;雷も鳴らなかった。&#160;光も差さなかった。&#160;声も聞こえなかった。&#160;神は答えなかった。&#160;マリアは椅子に座り直した。&#160;顔を両手で覆った。&#160;長い間泣いた。&#160;しばらくすると、&#160;誰かが隣に座った。&#160;さっきの老女だった。&#160;白い髪。&#160;小柄。&#160;黒いコート。&#160;彼女は何も言わず、&#160;ハンカチを差し出した。&#160;マリアは受け取った。&#160;「すみません。」&#160;老女は首を振った。&#160;数分間、二人とも黙っていた。&#160;マリアが言った。&#160;「私、ひどいこと言いました。」&#160;「そう？」&#160;「神様に。」&#160;老女は祭壇を見た。&#160;「聞いていたでしょうね。」&#160;マリアは少し驚いた。&#160;笑いそうになった。&#160;でも笑えなかった。&#160;「息子が死んだんです。」&#160;老女はマリアを見る。&#160;「10歳でした。」&#160;「そう。」&#160;それだけだった。&#160;マリアは待った。&#160;きっと次に来る。&#160;神には計画がある。&#160;天国で会える。&#160;すべてには意味がある。&#160;しかし老女は何も言わなかった。&#160;マリアは耐えられなくなって聞いた。&#160;「どうして何も言わないんですか？」&#160;「何を？」&#160;「普通、言うでしょう。」&#160;「何を言うの？」&#160;「神様には理由があるとか。」&#160;老女は少し考えた。&#160;そして、「私には分からないもの。」と言った。&#160;マリアは老女を見る。&#160;「分からない？」&#160;「分からない。」&#160;「でも、教会にいるのに？」&#160;老女が笑った。&#160;「教会に来たら全部分かるの？」&#160;マリアは黙った。&#160;老女は言った。&#160;「私も夫を亡くしたの。」&#160;「そうなんですか。」&#160;「娘も。」&#160;マリアは顔を上げた。&#160;老女はそれ以上説明しなかった。&#160;「意味、分かりました？」&#160;マリアが聞いた。&#160;老女は首を振った。&#160;「いいえ。」&#160;「今でも？」&#160;「今でも。」&#160;「じゃあ、どうしてここに来るんですか？」&#160;老女は長い間考えた。&#160;そして言った。「分からないまま、一人でいたくないからかしら。」マリアの目からまた涙が出た。&#160;老女は続けた。「あなたも、一人でここにいなくていい。」その夜、&#160;マリアは祈らなかった。&#160;老女も祈ろうとは言わなかった。&#160;二人はただ座っていた。&#160;雨の音。&#160;ろうそくの光。&#160;古い教会。&#160;二人の呼吸。&#160;それだけだった。&#160;翌週。&#160;マリアはまたその教会へ行った。&#160;なぜかは分からなかった。&#160;老女はいなかった。&#160;マリアは後ろの席に座った。&#160;祈らなかった。&#160;その次の週も行った。&#160;今度は老女がいた。&#160;目が合った。&#160;老女が軽く手を上げた。&#160;マリアも上げた。&#160;それだけ。&#160;数か月が過ぎた。&#160;マリアは時々祈るようになった。&#160;でも以前とは違った。&#160;「ありがとうございます。」&#160;だけの日もあった。&#160;「助けてください。」&#160;の日もあった。&#160;何も言えない日もあった。&#160;そして時々、&#160;「まだ怒っています。」&#160;と言った。&#160;ある日、神父がマリアに聞いた。&#160;「信仰が戻ってきましたか？」&#160;マリアは少し考えた。&#160;「分かりません。」&#160;神父はうなずいた。&#160;マリアは続けた。&#160;「戻るっていう言い方が、違う気がします。」&#160;「どういうことですか？」&#160;「前と同じ場所には戻れないから。」&#160;以前のマリアは、&#160;祈れば守られると思っていた。&#160;信じれば答えが来ると思っていた。&#160;苦しみにも理由があると思っていた。&#160;今は分からなかった。&#160;神がなぜティアゴを救わなかったのか。&#160;なぜ子どもが病気になるのか。&#160;なぜ祈りが叶う人と叶わない人がいるのか。&#160;何も分からなかった。&#160;でも、&#160;分からないことを、&#160;分からないまま持っていてもいいのかもしれない。&#160;少なくとも、&#160;無理に答えを作る必要はなくなった。&#160;ある冬の夕方。&#160;マリアが教会へ入ると、&#160;一人の若い女性が後ろの席で泣いていた。&#160;30代くらい。&#160;マリアは少し離れた場所に座った。&#160;女性は泣き続けた。&#160;以前のマリアなら、&#160;何か言わなければと思ったかもしれない。&#160;「大丈夫ですか？」&#160;「祈りましょうか？」&#160;「神様はあなたと共にいます。」&#160;でも今日は、&#160;何も言わなかった。&#160;十分ほどして、&#160;女性が顔を上げた。&#160;目が赤かった。&#160;マリアと目が合った。&#160;「すみません。」&#160;女性が言った。&#160;マリアは首を振った。&#160;「謝らなくていいですよ。」&#160;また沈黙。&#160;女性が言った。&#160;「母が亡くなったんです。」&#160;マリアの胸が少し痛んだ。&#160;「昨日。」&#160;マリアは何も言わなかった。&#160;「みんな、時間が癒してくれるって言うんです。」&#160;女性は泣いた。&#160;「でも、そんなこと聞きたくなくて。」&#160;マリアはバッグを開けた。&#160;中からハンカチを出した。&#160;あの夜、老女からもらったものではない。&#160;普通の白いハンカチ。&#160;それを女性に渡した。&#160;「ありがとうございます。」&#160;女性が聞いた。&#160;「いつか楽になりますか？」&#160;マリアは答えようとした。&#160;「はい。」&#160;と言えば簡単だった。&#160;「時間が癒します。」&#160;とも言えた。&#160;「神様が支えてくれます。」&#160;とも。&#160;でも、&#160;どれも自分には言えなかった。&#160;だからマリアは言った。「分かりません。」女性が顔を上げる。&#160;マリアは続けた。「でも、ここにいます。」二人はしばらく並んで座った。&#160;その瞬間、&#160;マリアはあの雨の夜を思い出した。&#160;神に、&#160;「私はあなたを赦していません」&#160;と言った夜。&#160;神は答えなかった。&#160;少なくとも、&#160;マリアが期待していた形では。&#160;でも、&#160;あの夜、&#160;誰かが隣に座った。&#160;マリアは突然思った。&#160;もしかしたら、&#160;それを「神の答え」と呼ぶ人もいるだろう。&#160;老女が来たこと。&#160;ハンカチ。&#160;沈黙。&#160;「一人でいなくていい」という言葉。&#160;そう考えれば、美しい。&#160;でもマリアは、&#160;そう決めつけないことにした。&#160;偶然だったのかもしれない。&#160;人間の優しさだったのかもしれない。&#160;神だったのかもしれない。&#160;全部だったのかもしれない。&#160;分からなかった。&#160;そして今は、&#160;それでよかった。&#160;春。&#160;ティアゴの誕生日。&#160;マリアはカスカイスへ行った。&#160;海は青かった。&#160;子どもたちが走っていた。&#160;カモメが鳴いていた。&#160;マリアはいつもの店でアイスクリームを買った。&#160;店員が聞いた。&#160;「一つですか？」&#160;マリアは少し考えた。&#160;「二つ。」&#160;海辺のベンチに座る。&#160;一つを自分の隣に置いた。&#160;「ティアゴ。」&#160;風に向かって言った。&#160;「ママ、まだ分からないよ。」&#160;波が来る。&#160;引いていく。&#160;「どうしてあなたなのか。」&#160;「どうして祈っても駄目だったのか。」&#160;「神様が何をしているのか。」&#160;少し笑った。&#160;「何にも分からない。」&#160;隣のアイスクリームが少しずつ溶け始めた。&#160;マリアはそれを見る。&#160;「でもね。」&#160;海を見る。&#160;「今日、来たよ。」&#160;遠くで子どもが笑った。&#160;その声を聞いて、&#160;以前なら胸が締めつけられたかもしれない。&#160;今日は、&#160;悲しかった。&#160;同時に、&#160;少し嬉しかった。&#160;子どもが笑っていることが。&#160;マリアは自分のアイスクリームを食べた。&#160;ティアゴの分も一口食べた。&#160;「二個は多いわ。」&#160;笑った。&#160;帰る前、&#160;海辺に立った。&#160;祈ろうと思った。&#160;でも言葉が出なかった。&#160;だから、&#160;ただ海を見た。&#160;それが祈りなのかどうか、&#160;マリアには分からなかった。&#160;最後に一言だけ言った。「私はまだここにいます。」神に言ったのか。&#160;ティアゴに言ったのか。&#160;自分自身に言ったのか。&#160;分からなかった。&#160;それでも、&#160;その言葉だけは本当だった。&#160;マリアは海に背を向け、&#160;ゆっくり歩き始めた。&#160;答えを見つけたからではない。&#160;答えがないままでも、&#160;まだ誰かを愛し、&#160;誰かの隣に座り、&#160;今日を生きることができると、&#160;少しだけ分かったからだった。Footnote｜『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』とのつながりこの物語では、苦しみに「神の計画」という答えを与えません。Part 1で扱った信仰と人生、Part 2で考えた宗教的葛藤と「意味を外から押しつけない」という視点を、子どもの死という最も答えにくい問いまでMagnifyしました。マリアは以前の信仰には戻らず、息子の死の意味も発見しません。それでも他者の隣に座ることはできます。Healingとは答えを手に入れることではなく、答えのない人生の中でも愛することをやめないことなのかもしれません。Story 5: 最後ではない日医師が「一年」という言葉を口にしたとき、トマスは壁の時計を見ていた。&#160;午前10時23分。&#160;秒針が動いていた。&#160;カチ。&#160;カチ。&#160;カチ。&#160;こんなときにも時計は普通に動くのか、とトマスは思った。&#160;「もちろん、正確には分かりません。」&#160;医師が言った。&#160;「治療への反応によって変わります。」&#160;トマスはうなずいた。&#160;「一年より長い可能性も？」&#160;「あります。」&#160;「短い可能性も？」&#160;医師は少し間を置いた。&#160;「あります。」&#160;トマスは67歳だった。&#160;チリのサンティアゴで生まれ、28歳のときフランスへ移住した。&#160;今はフランス南部の小さな町に住んでいる。&#160;妻とは6年前に離婚した。&#160;仲が悪いわけではない。&#160;娘のソフィアは車で40分ほどの町に住み、8歳の息子ルカがいる。&#160;トマスは建築関係の仕事を長く続け、3年前に引退した。&#160;健康だった。&#160;少なくとも、&#160;その朝まではそう思っていた。&#160;病院を出た。&#160;外は驚くほどきれいな日だった。&#160;青い空。&#160;カフェのテラス。&#160;自転車。&#160;犬を散歩させている女性。&#160;パン屋の前に並んでいる人たち。&#160;誰も、&#160;トマスの残り時間が一年かもしれない&#160;ということを知らない。&#160;それが不思議だった。&#160;家へ帰った。&#160;コーヒーを淹れた。&#160;飲まなかった。&#160;リビングを歩いた。&#160;座った。&#160;立った。&#160;また歩いた。&#160;そして突然、ノートを取り出した。&#160;一番上に書いた。死ぬまでにやること最初に書いたのは、&#160;パタゴニアへ行く。&#160;若い頃、一度だけ行った。&#160;もう一度見たかった。&#160;次。&#160;京都。&#160;写真でしか見たことがない。&#160;次。&#160;オーロラを見る。&#160;サンティアゴの昔の家を見る。&#160;マチュ・ピチュ。&#160;気球に乗る。&#160;スカイダイビング。&#160;少し考えた。&#160;「これは別にやりたくないな。」&#160;線を引いて消した。&#160;世界一おいしいワインを飲む。&#160;ミシュラン三つ星の店。&#160;40年間会っていない友人を探す。&#160;昔好きだった女性に連絡する。&#160;ここで手が止まった。&#160;「それはやめておこう。」&#160;消した。&#160;一時間後。&#160;リストは42項目になった。&#160;トマスは初めて少し安心した。&#160;やることができたからだ。&#160;死は怖い。&#160;でも、&#160;プロジェクトなら管理できる。&#160;その夜、娘のソフィアに電話した。&#160;「明日、会える？」&#160;「もちろん。」&#160;「ルカも？」&#160;「学校のあとなら。」&#160;「じゃあ三人で。」&#160;翌日。&#160;トマスは病気のことを話した。&#160;ソフィアは泣いた。&#160;「一年って……。」&#160;「一年とは限らない。」&#160;「でも……。」&#160;「もっと長いかもしれない。」&#160;トマスは明るく言った。&#160;「それに、やりたいことがいっぱいあるんだ。」&#160;ノートを見せた。&#160;ソフィアは涙を拭きながらページを見る。&#160;「パタゴニア。」&#160;「そう。」&#160;「京都。」&#160;「行ったことないから。」&#160;「オーロラ。」&#160;「一度くらい見たいだろ。」&#160;ソフィアは少し笑った。&#160;「お父さんらしい。」&#160;ルカが横からノートを覗いた。&#160;「ディズニーランドは？」&#160;「ない。」&#160;「入れたほうがいいよ。」&#160;「どうして？」&#160;「死ぬ前に行ったほうがいいから。」&#160;ソフィアが言った。&#160;「ルカ！」&#160;トマスは大笑いした。&#160;「確かに。」&#160;そして43番目に書いた。&#160;ルカとディズニーランド。&#160;その日から、&#160;トマスは忙しくなった。&#160;まず旅行会社。&#160;航空券。&#160;ホテル。&#160;保険。&#160;医師との相談。&#160;治療スケジュール。&#160;パスポートの確認。&#160;最初はパタゴニアへ行った。&#160;山を見た瞬間、泣いた。&#160;若い頃の自分を思い出した。&#160;素晴らしかった。&#160;リストの一番に線を引いた。&#160;✓ パタゴニア&#160;気持ちよかった。&#160;次はアイスランド。&#160;オーロラ。&#160;一晩目、見えなかった。&#160;二晩目も。&#160;三晩目。&#160;夜空に緑の光が現れた。&#160;トマスは写真を何十枚も撮った。&#160;隣にいた観光客が言った。&#160;「カメラを置いて見たほうがいいですよ。」&#160;トマスは笑った。&#160;「そうですね。」&#160;でも、もう少し撮った。&#160;✓ オーロラ&#160;家へ戻って三日後。&#160;今度はローマ。&#160;その次はスペイン。&#160;そしてディズニーランド。&#160;ルカは大喜びだった。&#160;トマスはジェットコースターで気分が悪くなった。&#160;ルカは笑った。&#160;「おじいちゃん、顔真っ白。」&#160;「もう二度と乗らない。」&#160;「もう一回！」&#160;「絶対嫌だ。」&#160;✓ ルカとディズニーランド&#160;リストに線が増えていった。&#160;それなのに、&#160;トマスの中の焦りは減らなかった。&#160;むしろ増えていた。&#160;ある朝。&#160;残り39項目。&#160;トマスは計算した。&#160;仮に一年。&#160;52週間。&#160;治療の週もある。&#160;体調が悪い日もある。&#160;全部できるのか？&#160;京都は桜の季節がいい。&#160;でも、その頃まで元気だろうか。&#160;サンティアゴはいつ行く？&#160;マチュ・ピチュは体力が必要だ。&#160;ワインは治療中でも飲めるのか？&#160;トマスは突然、&#160;死ぬ前に生きなければならない&#160;と思い始めた。&#160;朝起きる。&#160;カレンダーを見る。&#160;空白の日があると不安になる。&#160;一日無駄にした。&#160;そう感じるようになった。&#160;ソフィアから電話が来た。&#160;「日曜日、うちに来ない？」&#160;「日曜日？」&#160;「ルカが会いたがってる。」&#160;トマスはカレンダーを見る。&#160;「その日はリヨンへ行こうと思ってる。」&#160;「何しに？」&#160;「有名なレストラン。」&#160;「そう。」&#160;少し沈黙。&#160;「また今度でいいよ。」&#160;「来週は？」&#160;「ルカ、サッカー。」&#160;「じゃあその次。」&#160;「分かった。」&#160;電話を切った。&#160;トマスは予約サイトを開いた。&#160;そして突然、手が止まった。&#160;何かがおかしい気がした。&#160;でも、&#160;何がおかしいのか分からなかった。&#160;数週間後。&#160;トマスは京都旅行を予約した。&#160;ずっと楽しみにしていた。&#160;寺。&#160;庭園。&#160;朝の散歩。&#160;食事。&#160;紅葉。&#160;写真で見た場所をノートに貼った。&#160;旅行前夜。&#160;スーツケースを玄関に置いた。&#160;午前5時起床。&#160;ところが午前4時32分。&#160;スマートフォンが鳴った。&#160;航空会社からだった。&#160;悪天候と機材の問題。&#160;フライトキャンセル。&#160;トマスは信じられなかった。&#160;すぐに電話した。&#160;「次の便は？」&#160;二日後。&#160;「二日後？」&#160;「申し訳ありません。」&#160;「今日行かなきゃいけないんです。」&#160;「本日は難しい状況です。」&#160;「私は時間がないんです。」&#160;電話の向こうの女性が黙った。&#160;トマスは気づいた。&#160;彼女には意味が分からない。&#160;電話を切った。&#160;怒りが込み上げた。&#160;スーツケースを蹴った。&#160;「ふざけるな。」&#160;椅子に座った。&#160;時計を見る。&#160;午前5時17分。&#160;一日予定がなくなった。&#160;一日、無駄になった。&#160;午前9時。&#160;ソフィアから電話が来た。&#160;「今、日本？」&#160;「家。」&#160;「え？」&#160;「キャンセル。」&#160;「大変。」&#160;「最悪だよ。」&#160;「じゃあ今日暇？」&#160;「暇というか……。」&#160;「ルカ、学校休みなの。」&#160;「どうして？」&#160;「先生たちの研修日。」&#160;トマスはため息をついた。&#160;「連れてきてもいい？」&#160;午前10時半。&#160;玄関のベルが鳴った。&#160;ルカが入ってきた。&#160;「日本行かなかったの？」&#160;「行けなかった。」&#160;「じゃあ遊べるね。」&#160;「まあな。」&#160;「犬の散歩行こう。」&#160;「犬？」&#160;ソフィアが後ろから入ってきた。&#160;小さな雑種犬を連れている。&#160;「今日だけ預かってるの。」&#160;トマスは犬を見る。&#160;犬もトマスを見る。&#160;「名前は？」&#160;「ピコ。」&#160;「変な名前。」&#160;ルカが怒った。&#160;「かわいい名前だよ。」&#160;三人で外へ出た。&#160;パン屋へ行った。&#160;ルカがクロワッサンを二つ欲しがった。&#160;「一つ。」&#160;「二つ。」&#160;「一つ。」&#160;「一個半。」&#160;トマスは止まった。&#160;どこかで聞いたようなやり取りだった。&#160;でも思い出せなかった。&#160;「二つでいい。」&#160;「やった。」&#160;公園へ行った。&#160;ルカは犬と走った。&#160;トマスはベンチに座った。&#160;旅行なら、&#160;今ごろ空港だった。&#160;そのあと飛行機。&#160;映画。&#160;機内食。&#160;乗り換え。&#160;ホテル。&#160;予定表。&#160;でも今は、&#160;8歳の孫が犬に引っ張られて転びそうになっている。&#160;トマスは笑った。&#160;「気をつけろ！」&#160;「ピコが速すぎる！」&#160;昼。&#160;家へ戻った。&#160;ソフィアがスープを作り始めた。&#160;「手伝って。」&#160;「俺？」&#160;「暇でしょう。」&#160;その言葉に少し腹が立った。&#160;「暇じゃない。」&#160;「何するの？」&#160;トマスは答えられなかった。&#160;ソフィアが笑った。&#160;「玉ねぎ切って。」&#160;三人で料理した。&#160;ルカがニンジンを変な形に切った。&#160;「危ない。」&#160;「できるよ。」&#160;「指切るぞ。」&#160;「おじいちゃん、うるさい。」&#160;ソフィアが笑った。&#160;「誰かに似てる。」&#160;午後2時。&#160;トマスはソファで寝てしまった。&#160;目を覚ますと3時半。&#160;驚いて起きた。&#160;一時間半も寝た。&#160;残り時間が一年かもしれないのに。&#160;一時間半。&#160;何もしていない。&#160;でも、&#160;隣を見るとルカも寝ていた。&#160;口を少し開けて。&#160;ピコがルカの足元で丸くなっている。&#160;トマスはその顔を見た。&#160;スマートフォンを取り出した。&#160;写真を撮ろうとした。&#160;そして、&#160;やめた。&#160;ただ見た。&#160;夕方。&#160;三人でスープを食べた。&#160;ルカが学校の話をした。&#160;友達のマテオがサッカーでずるをした話。&#160;先生が変な靴を履いていた話。&#160;算数が嫌いな話。&#160;どれも重要ではなかった。&#160;トマスは全部聞いた。&#160;食後。&#160;ソフィアが皿を洗っていた。&#160;トマスは横で拭いた。&#160;「お父さん。」&#160;「何？」&#160;「怖い？」&#160;トマスの手が止まった。&#160;「何が？」&#160;ソフィアは振り返らない。&#160;「死ぬこと。」&#160;トマスは皿を置いた。&#160;「怖いよ。」&#160;初めてそう言った。&#160;今まで、&#160;「大丈夫。」&#160;「まだ一年と決まったわけじゃない。」&#160;「やりたいことがいっぱいある。」&#160;そう言ってきた。&#160;でも今日は、&#160;「怖い。」&#160;と言った。&#160;ソフィアがうなずいた。&#160;「私も。」&#160;二人はしばらく黙った。&#160;トマスが言った。&#160;「お前を置いていくのが嫌だ。」&#160;ソフィアの目に涙が浮かんだ。&#160;「私も嫌。」&#160;「ルカが大きくなるの見たい。」&#160;「うん。」&#160;「卒業とか。」&#160;「うん。」&#160;「結婚とか。」&#160;ソフィアが笑った。&#160;「まだ8歳。」&#160;「分かってる。」&#160;二人とも泣きながら笑った。&#160;夜8時。&#160;ソフィアとルカが帰った。&#160;家が静かになった。&#160;トマスはリビングに座った。&#160;テーブルの上には、&#160;死ぬまでにやること&#160;と書かれたノート。&#160;開いた。&#160;パタゴニア。&#160;線が引いてある。&#160;オーロラ。&#160;線。&#160;ディズニーランド。&#160;線。&#160;京都。&#160;まだ。&#160;マチュ・ピチュ。&#160;まだ。&#160;サンティアゴ。&#160;まだ。&#160;今日やったことを考えた。&#160;パンを買った。&#160;犬を散歩した。&#160;公園に座った。&#160;玉ねぎを切った。&#160;昼寝した。&#160;孫の話を聞いた。&#160;娘と皿を洗った。&#160;死ぬのが怖いと言った。&#160;一つもリストにない。&#160;トマスは長い間ノートを見ていた。&#160;そして思った。&#160;今日が、この数か月で一番よかった。&#160;それが少し怖かった。&#160;だって、&#160;何もしていない。&#160;世界遺産を見ていない。&#160;飛行機にも乗っていない。&#160;新しい国にも行っていない。&#160;写真もほとんどない。&#160;SNSに投稿するものもない。&#160;それでも、&#160;今日をもう一度やりたいと思った。&#160;トマスはペンを取った。&#160;44番目。&#160;何を書くか考えた。&#160;そして、&#160;ゆっくり書いた。普通の日を、普通だからという理由で捨てない。翌朝。&#160;京都の予約を取り直した。&#160;行くのをやめなかった。&#160;春。&#160;トマスは京都へ行った。&#160;桜を見た。&#160;早朝の寺を歩いた。&#160;庭園で一時間座った。&#160;素晴らしかった。&#160;帰国してノートに線を引いた。&#160;✓ 京都&#160;夏。&#160;サンティアゴへ行った。&#160;昔住んでいた通りを歩いた。&#160;家は別の色に塗られていた。&#160;知らない家族が住んでいた。&#160;トマスは写真を一枚だけ撮った。&#160;✓ サンティアゴ&#160;マチュ・ピチュには行けなかった。&#160;体調が悪くなった。&#160;医師から止められた。&#160;以前なら悔しかっただろう。&#160;もちろん今も残念だった。&#160;でも、&#160;ノートの横に書いた。行きたかった。行けなかった。それも人生。病気が分かってから11か月。&#160;トマスはまだ生きていた。&#160;医師は言った。&#160;「治療への反応は予想より良いです。」&#160;「あとどれくらい？」&#160;「分かりません。」&#160;以前なら、もっと正確な数字を求めたかもしれない。&#160;今日は、&#160;「そうですか。」&#160;とだけ答えた。&#160;ある朝。&#160;ルカが泊まりに来ていた。&#160;二人でピコを散歩させた。&#160;秋の空気。&#160;パン屋から焼きたてのパンの匂い。&#160;道路を自転車が通る。&#160;向こうで女性が洗濯物を干している。&#160;どこかの家から音楽が聞こえる。&#160;特別なものは何もない。&#160;ルカが聞いた。&#160;「おじいちゃん。」&#160;「何？」&#160;「今日、何するの？」&#160;「特に何も。」&#160;「どこも行かない？」&#160;「行かない。」&#160;「じゃあ、つまんない日？」&#160;トマスは笑った。&#160;「どうだろうな。」&#160;二人は歩いた。&#160;ピコが突然立ち止まり、&#160;道端の草を長い間嗅ぎ始めた。&#160;「ピコ！」&#160;ルカが引っ張る。&#160;犬は動かない。&#160;トマスは笑った。&#160;「待ってやれ。」&#160;「遅いよ。」&#160;「急いでないだろ。」&#160;その言葉を口にした瞬間、&#160;トマスは自分でも少し驚いた。&#160;急いでいない。&#160;病気は治っていない。&#160;死が消えたわけでもない。&#160;時間が無限になったわけでもない。&#160;むしろ、&#160;以前より有限だと知っている。&#160;それでも、&#160;急いでいなかった。&#160;パン屋でバゲットを買った。&#160;帰り道。&#160;ルカが突然聞いた。&#160;「おじいちゃん。」&#160;「何？」「今日って特別な日？」トマスは答えようとして、&#160;少し止まった。&#160;空を見る。&#160;薄い雲。&#160;朝の光。&#160;孫。&#160;犬。&#160;温かいパン。&#160;自分の足。&#160;まだ歩いている身体。&#160;帰る家。&#160;今日電話できる娘。&#160;まだ聞ける鳥の声。&#160;トマスは言った。「いや。」二人は少し歩いた。&#160;そしてトマスは続けた。「だからいいんだよ。」ルカには意味が分からなかった。&#160;「何それ？」&#160;トマスは笑った。&#160;「大人になったら分かる。」&#160;「大人っていつ？」&#160;「いつだろうな。」&#160;「おじいちゃんも大人？」&#160;「一応。」&#160;「じゃあ何で分からないこといっぱいあるの？」&#160;トマスは大笑いした。&#160;「それはいい質問だ。」&#160;三人。&#160;正確には、&#160;二人と一匹。&#160;ゆっくり家へ向かって歩いた。&#160;その日の午後、&#160;トマスはノートを開いた。&#160;まだ線の引かれていない項目がたくさんあった。&#160;行けない場所もあるだろう。&#160;会えない人もいる。&#160;間に合わないこともある。&#160;そして、&#160;最後の日がいつ来るのかも分からない。&#160;トマスはページの一番下に、&#160;もう一つだけ書いた。人生を全部終わらせてから、死ぬ必要はない。読み返した。&#160;少し変な文章だった。&#160;でも消さなかった。&#160;窓の外からルカの声がした。&#160;「おじいちゃん！」&#160;トマスはノートを閉じた。&#160;「何？」&#160;「ピコがボール取った！」&#160;「今行く。」&#160;トマスは立ち上がった。&#160;ノートをテーブルに残した。&#160;まだ終わっていないリスト。&#160;まだ終わっていない人生。&#160;それでよかった。&#160;外へ出る。&#160;太陽が少しまぶしかった。&#160;ルカが走っている。&#160;犬が逃げる。&#160;トマスも追いかける。&#160;すぐ息が切れた。&#160;「待て！」&#160;ルカが笑う。&#160;「遅いよ！」&#160;「67歳だぞ！」&#160;「言い訳！」&#160;トマスも笑った。&#160;そして、その何でもない午後の中へ歩いていった。&#160;傷つかなかった人としてではない。&#160;失わなかった人としてでもない。&#160;死を克服した人としてでもない。&#160;残された時間の意味をすべて理解した人としてでもない。&#160;ただ、&#160;愛した人。&#160;失った人。&#160;怖がっている人。&#160;まだ生きている人として。&#160;今日という、&#160;何でもない人生の中へ。Footnote｜『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』とのつながりこの最終話では、Part]]></description>
		
					<wfw:commentRss>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-modern-stories/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
			</item>
		<item>
		<title>『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』心理学解説</title>
		<link>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-psychology/</link>
					<comments>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-psychology/#respond</comments>
		
		<dc:creator><![CDATA[Nick Sasaki]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 19 Sep 2026 00:32:36 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[スピリチュアル]]></category>
		<category><![CDATA[人生・生き方]]></category>
		<category><![CDATA[仮想対談]]></category>
		<category><![CDATA[心理学]]></category>
		<category><![CDATA[文学]]></category>
		<category><![CDATA[Healing]]></category>
		<category><![CDATA[グリーフ]]></category>
		<category><![CDATA[セルフコンパッション]]></category>
		<category><![CDATA[リュ・シファ]]></category>
		<category><![CDATA[人生の意味]]></category>
		<category><![CDATA[今を生きる]]></category>
		<category><![CDATA[信仰]]></category>
		<category><![CDATA[喪失]]></category>
		<category><![CDATA[実存心理学]]></category>
		<category><![CDATA[心の傷]]></category>
		<category><![CDATA[悲しみ]]></category>
		<category><![CDATA[悲嘆]]></category>
		<category><![CDATA[愛]]></category>
		<category><![CDATA[愛しなさい]]></category>
		<category><![CDATA[愛着]]></category>
		<category><![CDATA[感謝]]></category>
		<category><![CDATA[死]]></category>
		<category><![CDATA[生き方]]></category>
		<category><![CDATA[神]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://imaginaryconversation.com/?p=3640</guid>

					<description><![CDATA[はじめに『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』というタイトルを読むと、最初は少し無理なことを求められているように感じるかもしれません。深く傷ついた経験を、本当に忘れられるのでしょうか。大切な人を失った悲しみを、本当に「乗り越える」必要があるのでしょうか。リュ・シファが世界各地から集めた77篇の詩をさらに深く読んでいくと、この本が問いかけているのは恋愛や心の傷だけではないことが見えてきます。愛、喪失、悲しみ、感謝、信仰、死、そして今を生きること。今回の架空の対話では、リュ・シファと、愛着、セルフ・コンパッション、悲嘆、感謝、宗教心理学、実存心理学を研究してきた専門家たちが、この本から生まれる25の問いを考えます。傷を消すことがHealingなのか。悲しみには意味が必要なのか。なぜ幸せは失ってから見えるのか。苦しいとき、人はなぜ神を求めるのか。そして、なぜ私たちは人生を「いつか」まで延期してしまうのか。最後に残るのは、一つの大きな問いです。人生が完全になるのを待たずに、不完全な人生そのものを愛することはできるのでしょうか？(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。） Insert Video Table of Contents はじめにTopic 1: 傷ついた人は、それでももう一度愛せるのか？Topic 2：悲しみは「乗り越える」ものなのか、それとも人生の模様の一部になるのか？Topic 3：なぜ私たちは、人生が起きている「今」を見失うのか？Topic 4：苦しみの中で、人はなぜ神と意味を求めるのか？Topic 5：なぜ人は、自分の人生を生きることを「いつか」まで延期するのか？最後に Topic 1: 傷ついた人は、それでももう一度愛せるのか？司会：最初は、やはりこの本のタイトルそのものから始めたいと思います。&#160;『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』。&#160;とても美しい言葉です。&#160;でも正直に言うと、私は少し怖い言葉でもあると思うんです。&#160;たとえば、愛していた人に裏切られた人。&#160;何十年も信じていた配偶者から傷つけられた人。&#160;親から愛されなかった人。&#160;友人に裏切られた人。&#160;あるいは、一度誰かを心から信じたために、その後何年も立ち直れなくなった人。&#160;そういう人に、&#160;「一度も傷ついたことがないかのように愛しなさい」&#160;と言ったら、&#160;場合によっては残酷ではないでしょうか。&#160;リュ・シファ：そうですね。&#160;だから私は、この言葉を、&#160;「傷を忘れなさい」&#160;という意味では読んでほしくありません。&#160;傷ついたことは、なかったことにはできません。&#160;人は経験したことを持って生きていきます。&#160;スー・ジョンソン：心理学的にも、そこはとても重要です。&#160;深く傷ついた経験は、単なる「嫌な思い出」ではありません。&#160;特に、自分にとって重要だった人との関係で傷つくと、&#160;人は次の関係に入るときにも、&#160;「また同じことが起こるのではないか」&#160;と感じるようになります。&#160;それは弱さではありません。&#160;心が、&#160;「もう同じ危険に遭わないようにしよう」&#160;と学んだ結果でもあります。&#160;司会：では、傷ついたあとに人を信じられなくなるのは、ある意味では自然なんですね。&#160;スー・ジョンソン：とても自然です。&#160;たとえば、ある人が深く愛した相手から突然裏切られたとします。&#160;次の人がどれだけ誠実でも、&#160;少し返信が遅いだけで不安になるかもしれない。&#160;少し態度が変わっただけで、&#160;「もう私を愛していないのでは？」&#160;と思うかもしれない。&#160;その人は、目の前の相手だけを見ているのではありません。&#160;過去の経験も一緒に見ているんです。&#160;司会：それは少し悲しいですね。&#160;新しい人は、何もしていないのに。&#160;スー・ジョンソン：そうです。&#160;でも、そこで傷ついた人を責めても意味はありません。&#160;まず、&#160;「なぜ私はこんなに怖いのだろう？」&#160;と自分を責めるのではなく、&#160;「私は一度、本当に傷ついたから怖いんだ」&#160;と理解することが必要です。&#160;クリスティン・ネフ：そこにセルフ・コンパッションが必要になります。&#160;傷ついた人によく起こることがあります。&#160;誰かに傷つけられたあと、&#160;今度は自分自身を傷つけ始めるんです。&#160;「どうしてあんな人を信じたんだろう。」&#160;「私が馬鹿だった。」&#160;「見る目がなかった。」&#160;「私に価値がないから捨てられたんだ。」&#160;つまり、一人の人に傷つけられたあと、&#160;自分まで自分の敵になってしまう。&#160;司会：それは確かにありますね。&#160;傷そのものより、&#160;「なぜ自分はあんなことを許してしまったんだ」&#160;という自己嫌悪のほうが長く残ることもある。&#160;クリスティン・ネフ：そうです。&#160;だからHealingの最初の一歩は、&#160;必ずしも、&#160;「もう一度誰かを信じること」&#160;ではありません。&#160;まず、傷ついたときに、自分まで自分の敵にならない人になること。そこから始めてもいいんです。&#160;司会：でも、ここで少し難しい質問をしたいです。&#160;もし傷つかないために人を信じないと決めたら、&#160;実際、それはかなり合理的ではありませんか？&#160;誰も深く愛さない。&#160;誰にも期待しない。&#160;心の中に入れない。&#160;そうすれば、大きく傷つく可能性は減ります。&#160;アーヴィン・ヤーロム：減るでしょう。&#160;しかし、そこで別の問いが生まれます。「傷つかないこと」が人生の最終目的なのでしょうか。司会：……なるほど。&#160;アーヴィン・ヤーロム：完全に安全な人生を作ろうとすれば、&#160;多くのものを避けなければなりません。&#160;愛。&#160;友情。&#160;挑戦。&#160;夢。&#160;親密さ。&#160;誰かを必要とすること。&#160;誰かに自分を見せること。&#160;それらにはすべて、不確実性があります。&#160;だから、&#160;傷つかないために心を閉じるという選択は、&#160;論理的には理解できます。&#160;ただし、その代償もあります。&#160;司会：孤独ですか？&#160;ヤーロム：孤独だけではありません。&#160;人生に触れないことです。&#160;リュ・シファ：だから、&#160;「もう傷つかないように生きる」&#160;という人生と、&#160;「傷つく可能性があっても愛する」&#160;という人生の間に、&#160;この本の問いがあるのだと思います。&#160;司会：でも、それを聞くと、&#160;また「傷つく覚悟で愛せ」という精神論になりませんか？&#160;危険な相手のところへ戻る必要はないですよね。&#160;スー・ジョンソン：もちろんありません。&#160;ここは非常に重要です。&#160;愛することと、安全を無視することは別です。&#160;傷ついた経験から境界線を学ぶことは、とても大切です。&#160;司会：境界線。&#160;スー・ジョンソン：はい。&#160;でも私は、&#160;境界線と壁は違う&#160;と考えると分かりやすいと思います。&#160;境界線は、&#160;「ここから先は私を傷つけないでください」&#160;と言います。&#160;壁は、&#160;「誰も入ってこないでください」&#160;と言います。&#160;境界線には、&#160;扉があります。&#160;司会：それは面白いですね。&#160;傷ついたあとに必要なのは、&#160;壁ではなく、扉のある境界線かもしれない。&#160;クリスティン・ネフ：そして、その扉をいつ開けるかは本人が決めていいんです。&#160;急ぐ必要はありません。&#160;「もう一年経ったから。」&#160;「新しい恋をしたほうがいい。」&#160;「そろそろ許したほうがいい。」&#160;そういう外からの時間表に合わせる必要もありません。&#160;司会：では、Forgiveness、Trust、Reconciliation、Love。&#160;これらは全部別なのでしょうか？&#160;クリスティン・ネフ：別です。&#160;スー・ジョンソン：とても大切な区別です。&#160;Forgiveness、赦し。&#160;Trust、信頼。&#160;Reconciliation、関係の修復。&#160;Love、愛。&#160;これらを全部一つにしてしまうと、&#160;傷ついた人をさらに苦しめることがあります。&#160;司会：たとえば？&#160;スー・ジョンソン：誰かを赦したからといって、&#160;もう一度その人を信頼する義務はありません。&#160;赦したからといって、&#160;関係を再開する必要もありません。&#160;誰かをまだ愛していても、&#160;その人と一緒にいることが安全とは限りません。&#160;逆に、&#160;関係を終わらせても、&#160;憎しみ続ける必要はありません。&#160;司会：これはかなり重要ですね。&#160;「愛するなら戻るべきだ」&#160;ではない。&#160;スー・ジョンソン：まったく違います。&#160;リュ・シファ：もしかすると、&#160;「一度も傷ついたことがないかのように愛する」&#160;という言葉の中で、&#160;一番大切なのは、&#160;「かのように」&#160;なのかもしれません。&#160;司会：どういう意味でしょう？&#160;リュ・シファ：傷つかなかったことにするのではありません。&#160;傷はあります。&#160;記憶もあります。&#160;警戒心もあるでしょう。&#160;それでも、その傷に、これからの人生のすべてを決めさせない。そういう意味で、&#160;「かのように」&#160;なのではないでしょうか。&#160;司会：つまり、&#160;傷を消してから愛するのではない。&#160;リュ・シファ：そうです。&#160;傷ついた自分を連れて愛する。&#160;司会：でも、新しい人を信じようとすると、&#160;過去の人がしたことを思い出してしまいます。&#160;「前の人も最初は優しかった。」&#160;「前の人も愛してると言った。」&#160;そう思ったら、どうすればいいでしょう。&#160;スー・ジョンソン：その恐怖を否定しなくていいんです。&#160;ただ、一つ覚えておきたいことがあります。昨日の人にされたことを、今日の人の罪にしない。司会：かなり難しいですね。&#160;スー・ジョンソン：難しいです。&#160;だから一度に全面的に信頼する必要はありません。&#160;信頼は決断ではなく、&#160;多くの場合、&#160;経験の積み重ね&#160;です。&#160;この人は約束を守った。&#160;私が弱さを見せても利用しなかった。&#160;私が「嫌だ」と言ったとき、尊重してくれた。&#160;喧嘩をしても逃げなかった。&#160;間違えたとき、謝った。&#160;そういう小さな経験が、&#160;古い経験とは違う新しい記憶を作っていきます。&#160;ロバート・エモンズ：ここには、もう一つ重要なことがあります。&#160;傷ついた人は、&#160;危険を見つける能力が非常に高くなることがあります。&#160;それ自体は悪いことではありません。&#160;しかし、危険だけを見るようになると、&#160;安全の証拠が見えなくなることがあります。&#160;司会：安全の証拠？&#160;ロバート・エモンズ：はい。&#160;「この人は今日も約束を守った。」&#160;「この友人は話を聞いてくれた。」&#160;「この人の前では少し安心できた。」&#160;そうした小さなものです。&#160;感謝というと、&#160;「人生は素晴らしいと思いなさい」&#160;という話に聞こえるかもしれません。&#160;でもそうではありません。&#160;苦しみがあることを認めながら、&#160;苦しみ以外に存在しているものにも気づく。&#160;それが重要です。&#160;司会：つまり、&#160;「この人も私を傷つけるかもしれない」&#160;という可能性と、&#160;「この人は今のところ私を大切にしている」&#160;という現実を、&#160;同時に持つ。&#160;ロバート・エモンズ：そうです。&#160;ケネス・パーガメント：信仰の世界でも似たことがあります。&#160;人間に裏切られたことで、&#160;神まで信じられなくなる人がいます。&#160;宗教共同体で傷ついた人なら、&#160;祈ることそのものが苦しくなる場合もあります。&#160;その人に、&#160;「もっと信じなさい」&#160;と言うだけでは助けになりません。&#160;司会：信仰にも傷がある。&#160;ケネス・パーガメント：あります。&#160;だからHealingは、&#160;昔の状態へ戻ることとは限りません。&#160;以前と同じ信じ方に戻らなくてもいい。&#160;以前と同じ愛し方に戻らなくてもいい。&#160;人は傷ついたあと、&#160;より慎重で、&#160;より深く、&#160;より正直な関係を作ることもできます。&#160;司会：では最後に、皆さんに一つだけ聞きたいです。Topic 2：悲しみは「乗り越える」ものなのか、それとも人生の模様の一部になるのか？湖の霧は、ほとんど消えていた。&#160;Topic 1の最後に、ジョージ・ボナーノが口にした問いだけが、その場に残っていた。&#160;ジョージ・ボナーノ：「人は悲しんだら、必ず何かを乗り越えなければならないのでしょうか？」&#160;司会は彼を見た。&#160;司会：「どういう意味ですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「私たちはよく言いますよね。」&#160;「悲しみを乗り越える。」&#160;「喪失を克服する。」&#160;「前へ進む。」&#160;「立ち直る。」&#160;少し間を置いた。&#160;ジョージ・ボナーノ：「でも、その言葉の中には、ある前提が隠れていることがあります。」&#160;司会：「どんな前提ですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「悲しみとは、できるだけ早く通過して、向こう側へ行くべき場所だという前提です。」&#160;クリスティン・ネフが窓辺から振り返った。&#160;クリスティン・ネフ：「そして、なかなか向こう側へ行けない人は、自分がおかしいのではないかと思い始める。」&#160;司会：「一年経ったのにまだ悲しい。」&#160;クリスティン・ネフ：「ええ。」&#160;司会：「三年経ったのに、写真を見ると泣いてしまう。」&#160;クリスティン・ネフ：「そうです。」&#160;司会：「みんな普通に生活しているのに、自分だけ取り残されたように感じる。」&#160;クリスティン・ネフ：「そして悲しみに加えて、もう一つ苦しみが生まれます。」&#160;司会：「『私はまだ立ち直れていない』という苦しみ？」&#160;クリスティン・ネフ：「そうです。」&#160;ジョージは湖のそばにある濡れた石に腰を下ろした。&#160;ジョージ・ボナーノ：「悲嘆について、長い間かなり強いイメージがありました。」&#160;「大きな喪失を経験したら、人は深く崩れる。」&#160;「そこから一定の過程を通って、少しずつ回復していく。」&#160;「でも実際の人間は、そんなに一つの道を歩きません。」&#160;司会：「どう違うんでしょう？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「長い間、強い悲しみが続く人もいます。」&#160;「一度かなり落ち込んでから、徐々に日常へ戻る人もいます。」&#160;「そして、大切な人を失って深い悲しみを感じながらも、比較的早い段階から仕事をし、笑い、人と会い、生活を続けられる人もいます。」&#160;司会：「それは、本当にその人を愛していたんでしょうか？」&#160;ジョージはすぐには答えなかった。&#160;ジョージ・ボナーノ：「なぜ、そう思いましたか？」&#160;司会は少し困った顔をした。&#160;司会：「分かりません。」&#160;「でも……。」&#160;「たとえば、30年間一緒にいた妻を亡くした夫が、数週間後には友人と食事をして笑っている。」&#160;「それを見たら、周りの人は少し思うかもしれません。」「もう元気なの？」ジョージがうなずいた。&#160;司会：「逆に、何年も悲しんでいる人を見ると……。」「それだけ深く愛していたんだね。」「と言う。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「そこには、とても危険な式があります。」&#160;司会：「式？」&#160;ジョージは指で空中に書くようにした。悲しみの大きさ ＝ 愛の大きさジョージ・ボナーノ：「でも、人間はそんなに単純ではありません。」&#160;リュ・シファは、それまで黙って聞いていた。&#160;司会が彼を見る。&#160;司会：「リュ・シファさん。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「今回、この本について調べていて、私が知らなかったことがありました。」&#160;リュ・シファは静かに待った。&#160;司会：「この本を、鄭埰琫さんに捧げているんですね。」&#160;少し空気が変わった。&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「もともと、一緒にこの本を作ろうとしていた。」&#160;リュ・シファ：「そうです。」&#160;司会：「でも、その約束を果たす前に亡くなった。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;しばらく、誰も話さなかった。&#160;鳥が一羽、湖面すれすれを飛んでいった。&#160;司会：「だとすると……。」&#160;「この本は、悲しんでいる人を外から見て選んだ詩集ではないんですね。」&#160;リュ・シファは湖を見たまま答えた。&#160;リュ・シファ：「人が誰かを失うと、不思議なことが起きます。」&#160;「その人がいなくなったのに、その人との会話は終わらない。」&#160;司会は黙って聞いている。&#160;リュ・シファ：「何か美しいものを見る。」&#160;「すると、見せたくなる。」&#160;「面白い言葉を読む。」&#160;「すると、話したくなる。」&#160;「本が完成する。」&#160;「すると、本当なら最初に渡したかった人がいない。」&#160;少し沈黙した。&#160;リュ・シファ：「死によって人はいなくなります。」&#160;「でも、関係までその瞬間に消えるわけではないのでしょう。」&#160;司会：「では、一つ目の質問です。」「愛する人を失ったとき、正しい悲しみ方はあるのでしょうか？」ジョージ・ボナーノ：「一つの正しい形がある、と考えないほうがいいでしょう。」&#160;司会：「では、泣かなくてもいい？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「泣くことだけが悲嘆ではありません。」&#160;司会：「仕事に戻ってもいい？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「もちろんです。」&#160;司会：「笑っても？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「もちろん。」&#160;司会：「新しい人を愛しても？」&#160;ジョージは少し微笑んだ。&#160;ジョージ・ボナーノ：「それも、その人の人生です。」&#160;司会はリュ・シファを見る。&#160;司会：「でも、罪悪感を感じる人もいるでしょうね。」&#160;リュ・シファがうなずいた。&#160;司会：「自分だけ笑っていいのか。」&#160;「自分だけ旅行していいのか。」&#160;「自分だけ美味しいものを食べていいのか。」&#160;「自分だけ幸せになっていいのか。」&#160;クリスティンが静かに入った。&#160;クリスティン・ネフ：「そこで、自分に一つ質問してみてもいいと思います。」&#160;司会：「何でしょう？」&#160;クリスティン・ネフ：「あなたが亡くなった側だったら、愛する人にどう生きてほしいですか？」&#160;司会の表情が止まった。&#160;クリスティン・ネフ：「あなたのことを忘れないために、残りの人生をずっと苦しんでいてほしいでしょうか。」&#160;誰も答えなかった。&#160;クリスティン・ネフ：「それとも、ときどきあなたを思い出して泣きながら、それでも笑い、食べ、誰かを愛し、生きてほしいでしょうか。」&#160;司会が小さく言った。&#160;司会：「後者ですね。」&#160;少しして司会がジョージに尋ねた。&#160;司会：「でも逆の場合はどうですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「逆？」&#160;司会：「十年経っても悲しい。」&#160;「ある曲を聞いた瞬間に涙が出る。」&#160;「亡くなった妻の誕生日になると、何もする気になれない。」&#160;「それは、まだ回復していないということですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「その一つの瞬間だけでは、そう判断できません。」&#160;「悲しみが残っていることと、人生が止まっていることは同じではありません。」&#160;司会が少し考える。&#160;司会：「Topic 1と似ていますね。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「どういうところが？」&#160;司会：「傷が残っていることと、傷に支配されていることは違う。」&#160;ジョージがうなずいた。&#160;司会：「悲しみが残っていることと、悲しみに人生全部を支配されていることも違う。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「そう考えることができます。」&#160;司会は庭を歩き始めた。&#160;しばらくして、別の問いを投げた。&#160;司会：「では二つ目です。」「苦しみには、本当に意味があるのでしょうか？」誰もすぐには答えなかった。&#160;司会：「よく聞く言葉があります。」「すべてのことには意味がある。」「この苦しみにも意味がある。」「この経験があなたを成長させる。」司会はリュ・シファを見る。&#160;司会：「本当でしょうか？」&#160;リュ・シファは少し考えた。&#160;リュ・シファ：「私は、苦しんでいる人にそれを簡単には言えません。」&#160;司会：「なぜ？」&#160;リュ・シファ：「その人の苦しみの意味を、私が知っているはずがないからです。」&#160;司会がうなずく。&#160;司会：「でもHealing Poemという考えがありますよね。」&#160;リュ・シファ：「あります。」&#160;司会：「だったら、詩によって傷が癒やされる？」&#160;リュ・シファは首を少し傾けた。&#160;リュ・シファ：「『癒やす』という言葉をどう理解するかでしょう。」&#160;「傷がなくなることなら、詩にはできません。」&#160;「死んだ人を戻すこともできません。」&#160;「起きた出来事を、起きなかったことにもできません。」&#160;司会：「では、詩に何ができる？」&#160;リュ・シファ：「自分の痛みを、自分だけのものではなくすること。」&#160;司会は彼を見る。&#160;リュ・シファ：「何百年前の人が、自分と同じように悲しんでいた。」&#160;「違う国の人が、自分には言葉にできなかったことを書いていた。」&#160;「それを読むと、痛みが消えなくても……。」&#160;少し言葉を探した。&#160;リュ・シファ：「孤独の形が変わることがあります。」&#160;クリスティンが言った。&#160;クリスティン・ネフ：「これはとても大切だと思います。」&#160;「人は苦しむと、『なぜ私はこんなことになったのだろう』と思います。」&#160;「そして、その苦しみの中で孤立しやすくなります。」&#160;「でも苦しむこと自体は、人間であることの一部でもあります。」&#160;司会が尋ねる。&#160;司会：「では、苦しみには意味がある？」&#160;クリスティン・ネフ：「私は、その二つを分けたいです。」「この苦しみには意味がある。」と、「私はこの苦しみのあとに、意味を作ることができるかもしれない。」「これは同じではありません。」&#160;司会はゆっくりうなずいた。&#160;司会：「一つ目は、起きた出来事そのものを説明している。」&#160;クリスティン・ネフ：「そうです。」&#160;司会：「二つ目は、これから自分がどう生きるかを話している。」&#160;クリスティン・ネフ：「そうです。」&#160;ジョージが加わった。&#160;ジョージ・ボナーノ：「そして、意味を作らなくてもいい人もいます。」&#160;司会が振り返った。&#160;司会：「作らなくてもいい？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「すべての喪失から人生哲学を作る必要はありません。」&#160;「成長しなければならないわけでもありません。」&#160;「より強い人にならなければならないわけでもない。」&#160;「起きたことを悲しみながら、生活を続ける。」&#160;「それだけでもいいのです。」&#160;司会が笑った。&#160;司会：「それ、少し安心します。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「なぜですか？」&#160;司会：「最近は、何か辛いことが起きるたびに、『この経験から何を学びましたか？』と聞かれるような気がするからです。」&#160;クリスティンも笑った。&#160;司会：「たまには、『何も学びませんでした。辛かったです』でもいい？」&#160;クリスティン・ネフ：「もちろんです。」&#160;リュ・シファも微笑んだ。&#160;リュ・シファ：「それも、とても正直な詩になりそうですね。」&#160;昼に近づき、雲の間から少しずつ光が差してきた。&#160;湖面の色も変わっていた。&#160;司会はその光を眺めながら、三つ目の問いを出した。&#160;司会：「では最後です。」「悲しみを抱えたまま、人は幸せになれるのでしょうか？」リュ・シファが聞き返した。&#160;リュ・シファ：「なぜ、なれないと思うのですか？」&#160;司会：「幸せと悲しみは反対だから。」&#160;ジョージが首を振った。&#160;ジョージ・ボナーノ：「人間の感情は、そこまできれいに分かれていません。」&#160;司会：「同時に存在できる？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「できます。」&#160;「悲しみながら笑う。」&#160;「誰かを恋しく思いながら、新しい誰かを愛する。」&#160;「失ったものを思いながら、今あるものを楽しむ。」&#160;「それは矛盾ではありません。」&#160;リュ・シファが庭の木を指した。&#160;昨夜の雨で、いくつかの葉が地面に落ちている。&#160;その一方で、雲の切れ間から差す光を受けている葉もある。&#160;リュ・シファ：「私はこの本の最後に、『人生を一つの模様として見る』ということについて書きました。」&#160;司会が彼を見る。&#160;リュ・シファ：「模様には、一つの色だけがあるわけではありません。」&#160;「明るい糸だけでもない。」&#160;「暗い糸だけでもない。」&#160;「一本だけを見れば、なぜそこにその色があるのか分からないこともあります。」&#160;「でも少し離れて見ると、それらが一つの模様になっている。」&#160;司会：「では、悲しみもその糸の一本？」&#160;リュ・シファ：「そう考えることもできるでしょう。」&#160;司会は少し考えた。&#160;司会：「でも、それって悲しみを美化していませんか？」&#160;リュ・シファはすぐに答えなかった。&#160;リュ・シファ：「美しい模様を作るために、悲劇が必要だと言っているのではありません。」&#160;「苦しんだほうが良い、と言っているのでもない。」&#160;「もし避けられる苦しみなら、避けたほうがいい。」&#160;「救える命なら、救うべきです。」&#160;「修復できる関係なら、努力してもいい。」&#160;「治療できる病気なら、治療する。」&#160;「ただ……。」&#160;彼は地面に落ちた葉を見る。&#160;リュ・シファ：「すでに起きてしまったことまで、自分の人生ではなかったことにはできません。」&#160;司会は長い間黙っていた。&#160;そして、ぽつりと言った。&#160;司会：「もしかすると私は、Healingという言葉を勘違いしていたのかもしれません。」&#160;クリスティン・ネフ：「どういうふうに？」&#160;司会：「傷がなくなることだと思っていました。」&#160;「もう思い出しても痛くない。」&#160;「もう泣かない。」&#160;「もう寂しくない。」&#160;「そこまで行ったら、回復した。」&#160;ジョージが聞いている。&#160;司会：「でも、もしかすると……。」&#160;少し考えた。「Healingとは、悲しみが消えることではなく、悲しみがあっても人生全体が悲しみだけではなくなることなのかもしれませんね。」誰もすぐには答えなかった。&#160;リュ・シファは湖を見ていた。&#160;ジョージが静かに言った。&#160;ジョージ・ボナーノ：「私は、その表現が好きです。」&#160;そのとき、ロバート・エモンズが家の扉を開けて外へ出てきた。&#160;手には古い写真が一枚あった。&#160;ロバート・エモンズ：「皆さんの話を中で聞いていました。」&#160;司会が写真を見る。&#160;司会：「それは？」&#160;ロバートは写真を差し出した。&#160;写っているのは、どこにでもありそうな家族の食卓だった。&#160;豪華な料理ではない。&#160;特別な日でもない。&#160;誰かが笑っている。&#160;テーブルには食べかけの皿。&#160;椅子の下には犬。&#160;一人は携帯電話を見ている。&#160;一人は誰かに話しかけている。&#160;ロバート・エモンズ：「この写真を見て、どう思いますか？」&#160;司会はしばらく眺めた。&#160;司会：「幸せそうですね。」&#160;ロバートが尋ねた。&#160;ロバート・エモンズ：「でも、この瞬間にこの家族は、自分たちが幸せだと分かっていたでしょうか？」&#160;司会は写真をもう一度見た。&#160;そして、少し笑った。&#160;司会：「たぶん……。」&#160;「分かっていなかったでしょうね。」&#160;ロバート・エモンズ：「なぜでしょう？」&#160;司会は答えられなかった。&#160;湖には、もう朝の霧は残っていなかった。&#160;目の前にあったものが、ようやく見えるようになっていた。&#160;そして会話は、Topic 3「なぜ私たちは、人生が起きている『今』を見失うのか？」&#160;へと続いていった。Topic 3：なぜ私たちは、人生が起きている「今」を見失うのか？ロバート・エモンズが差し出した写真を、司会はまだ手に持っていた。&#160;どこにでもありそうな食卓だった。&#160;豪華な料理はない。&#160;特別な飾りもない。&#160;誰かが笑っている。&#160;一人は携帯電話を見ている。&#160;椅子の下には犬がいる。&#160;おそらく、この写真が撮られた数分後には誰かが皿を片づけ、誰かがテレビをつけ、誰かが「明日早いから」と部屋へ戻ったのだろう。&#160;司会：「不思議ですね。」&#160;ロバート・エモンズ：「何がですか？」&#160;司会：「この写真を見ていると、幸せそうに見える。」&#160;「でも、この瞬間にこの人たちは……。」&#160;写真をもう一度見る。&#160;司会：「たぶん、『私は今、幸せだ』なんて考えていなかったでしょうね。」&#160;ロバート・エモンズ：「おそらく。」&#160;司会：「では、なぜ後になって分かるんでしょう？」&#160;ロバートは答える代わりに聞いた。&#160;ロバート・エモンズ：「あなたにも、そういう時間がありますか？」&#160;司会は少し笑った。&#160;司会：「たくさんあります。」&#160;「昔は面倒だったことが、今になると懐かしい。」&#160;「家の中がうるさい。」&#160;「誰かが冷蔵庫を開けっぱなしにする。」&#160;「送っていかなければならない。」&#160;「迎えに行かなければならない。」&#160;「何度言っても片づけない。」&#160;少し間を置いた。&#160;司会：「そのときは、『少し静かにならないかな』と思う。」&#160;「でも本当に静かになると……。」&#160;司会は言葉を止めた。&#160;クリスティン・ネフが静かに尋ねた。&#160;クリスティン・ネフ：「どうなりますか？」&#160;司会：「あのうるささが、幸せだったと分かる。」&#160;誰もすぐには話さなかった。&#160;ロバート・エモンズ：「人間には、良いものにも慣れる性質があります。」&#160;司会：「幸せにも慣れてしまう？」&#160;ロバート・エモンズ：「そうです。」&#160;「新しい家。」&#160;「新しい仕事。」&#160;「結婚。」&#160;「健康。」&#160;「家族。」&#160;「最初は特別だったものが、少しずつ日常になります。」&#160;司会：「それは悪いことですか？」&#160;ロバート・エモンズ：「必ずしも。」&#160;「もし毎朝、目を覚ますたびに『私は生きている！』と驚き、蛇口から水が出るたびに感動していたら、生活するのも大変でしょう。」&#160;司会が笑った。&#160;司会：「確かに。」&#160;ロバート・エモンズ：「慣れることは、人間が生活するために必要でもあります。」&#160;「ただ、その便利な能力には代償があります。」&#160;司会：「何でしょう？」&#160;ロバート・エモンズ：「大切なものまで、背景になってしまうことです。」&#160;司会は写真を見た。&#160;司会：「では一つ目の質問です。」「なぜ普通の日は、失ってから美しく見えるのでしょう？」ジョージ・ボナーノが口を開いた。&#160;ジョージ・ボナーノ：「一つ気をつけたいことがあります。」&#160;司会：「何ですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「過去は、写真ほど正確ではありません。」&#160;司会：「どういう意味ですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「私たちは過去を思い出すとき、その時代のすべてを再生しているわけではありません。」&#160;「子どもが小さかった頃を懐かしく思う。」&#160;「でも当時は、睡眠不足だったかもしれない。」&#160;「お金の心配をしていたかもしれない。」&#160;「夫婦喧嘩もあったかもしれない。」&#160;「仕事に疲れていたかもしれない。」&#160;司会が笑った。&#160;司会：「思い出の中では、その部分が少し消えている。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「そういうこともあります。」&#160;司会：「では、『昔は幸せだった』というのは錯覚ですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「そうとも限りません。」&#160;「大切なのは、過去を完璧だった場所に変えないことです。」&#160;クリスティンが加わる。&#160;クリスティン・ネフ：「ここはとても重要ですね。」&#160;「過去を美しくしすぎると、今が必ず負けます。」&#160;司会：「なるほど。」&#160;クリスティン・ネフ：「20年前の一番美しい記憶と、今日の疲れた午後を比べてしまう。」&#160;「それでは現在は勝てません。」&#160;リュ・シファが写真を受け取った。&#160;リュ・シファ：「でも、この写真にはもう一つ面白いところがあります。」&#160;司会：「何でしょう？」&#160;リュ・シファ：「誰もこちらを見ていません。」&#160;確かにそうだった。&#160;誰かは食べている。&#160;誰かは話している。&#160;犬は床を見ている。&#160;リュ・シファ：「つまり、この人たちは『思い出を作ろう』としていない。」&#160;「ただ生きている。」&#160;司会が写真を見る。&#160;リュ・シファ：「人生の大部分は、こういう時間ではないでしょうか。」&#160;「後から振り返って意味が分かる。」&#160;「でも、その瞬間には名前がついていない。」&#160;司会：「幸せなのに、幸せと呼ばれていない。」&#160;リュ・シファ：「そうです。」&#160;ロバートが司会に尋ねた。&#160;ロバート・エモンズ：「もし、この写真の家族に一つだけ教えられるとしたら、何と言いますか？」&#160;司会は考えた。&#160;司会：「この時間は、いつまでも続かないよ。」&#160;言った瞬間、少し寂しい表情になった。&#160;司会：「でも、それを毎日考えていたら、悲しくなりませんか？」&#160;メアリー・オリヴァーはPart 1の参加者だったため、今回はいない。&#160;代わりにリュ・シファが答えた。&#160;リュ・シファ：「毎秒考える必要はないでしょう。」&#160;「時々でいいのではありませんか。」&#160;司会：「時々？」&#160;リュ・シファ：「この人と食べる夕食にも、最後の日がある。」&#160;「この犬と歩く散歩にも、最後の日がある。」&#160;「親から電話がかかってくる日にも、最後がある。」&#160;「自分の足で歩ける日にも、最後がある。」&#160;「でも、それが今日だとは限りません。」&#160;少し微笑んだ。&#160;リュ・シファ：「だから、今日を葬式のように生きる必要はありません。」&#160;司会も笑った。&#160;リュ・シファ：「ただ、ときどき思い出す。」「これは永遠ではない。」「それだけで、見え方が少し変わることがあります。」&#160;司会は湖のほうへ歩き出した。&#160;司会：「でも、人間にはもう一つ問題があります。」&#160;ロバート・エモンズ：「何でしょう？」&#160;司会：「今あるものより、ないものばかり見てしまう。」&#160;「もっとお金があれば。」&#160;「もっと良い家だったら。」&#160;「もっと成功したら。」&#160;「もっと自由だったら。」&#160;「もっと時間があったら。」&#160;「もっと健康だったら。」&#160;そして聞いた。「なぜ人間は、『あるもの』より『ないもの』を見るのでしょう？」ロバートは少し考えた。&#160;ロバート・エモンズ：「人間が問題を見つける能力は、生存に役立ってきました。」&#160;「危険。」&#160;「不足。」&#160;「うまくいっていないこと。」&#160;「そうしたものに注意を向けることには意味があります。」&#160;司会：「つまり、不満を見つける能力そのものが悪いわけではない。」&#160;ロバート・エモンズ：「そうです。」&#160;「問題は、それが唯一の見方になることです。」&#160;司会は笑った。&#160;司会：「冷蔵庫に食べ物が99個あっても、ない1個を探しているようなものですね。」&#160;ロバート・エモンズ：「まさに。」&#160;司会：「では、感謝すれば解決しますか？」&#160;ロバート・エモンズ：「そんなに単純ではありません。」&#160;司会：「安心しました。」&#160;みんなが笑った。&#160;司会：「正直、『毎朝感謝することを10個書きましょう』と言われると、それ自体が仕事になりそうで。」&#160;ロバートも笑った。&#160;ロバート・エモンズ：「感謝は、現実の問題を否定することではありません。」&#160;「病気なら、病気です。」&#160;「関係が苦しいなら、苦しい。」&#160;「経済的に困っているなら、その問題は現実です。」&#160;司会：「では感謝とは？」&#160;ロバート・エモンズ：「苦しいものだけが現実ではない、と見る能力でもあります。」&#160;司会の表情が変わった。&#160;ロバート・エモンズ：「今日、苦しいことがある。」&#160;「それは事実。」&#160;「同時に、誰かが自分を気にかけてくれている。」&#160;「それも事実かもしれない。」&#160;「身体の一部が痛む。」&#160;「それも事実。」&#160;「でも、自分の足で庭まで歩けた。」&#160;「それも事実。」&#160;クリスティン・ネフ：「片方を消す必要はないんですね。」&#160;ロバート・エモンズ：「そうです。」&#160;司会：「Topic 2と同じだ。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「何がですか？」&#160;司会：「悲しいか、幸せか。」&#160;「どちらか一つではなかった。」&#160;「今も同じ。」&#160;「苦しいか、ありがたいか。」&#160;「どちらか一つを選ばなくてもいい。」&#160;しばらくして司会が言った。&#160;司会：「でも、もっと大きな問題があります。」&#160;全員が彼を見る。&#160;司会：「私たちは、現在そのものを後回しにしていませんか？」&#160;リュ・シファが少し微笑んだ。&#160;司会：「若い頃は……。」「学校を卒業したら。」「卒業したら……。」「良い仕事に就いたら。」「仕事に就いたら……。」「もっとお金ができたら。」「結婚したら。」&#160;「家を買ったら。」&#160;「子どもが大きくなったら。」&#160;「仕事が落ち着いたら。」&#160;「退職したら。」&#160;司会は笑った。&#160;司会：「人生、いつ始まるんですか？」&#160;リュ・シファは答えなかった。&#160;代わりに司会へ尋ねた。&#160;リュ・シファ：「あなたは、いつ始まると思っていましたか？」&#160;司会は考えた。&#160;司会：「たぶん……。」&#160;「何かが整ったら。」&#160;リュ・シファ：「何が？」&#160;司会：「全部です。」&#160;みんなが笑った。&#160;司会：「お金。」&#160;「仕事。」&#160;「家族。」&#160;「健康。」&#160;「時間。」&#160;「心配事。」&#160;「それらが全部ちょうど良くなったら、ようやく安心して人生を楽しめる。」&#160;リュ・シファ：「そんな時期はありましたか？」&#160;司会は笑いながら首を振った。&#160;司会：「ないですね。」&#160;ロバートが尋ねた。&#160;ロバート・エモンズ：「では、問題は人生でしょうか。」&#160;「それとも条件でしょうか。」&#160;司会：「どういう意味ですか？」&#160;ロバート・エモンズ：「人生が始まっていなかったのではありません。」&#160;「人生を楽しんでいい条件を、自分で未来に置いていたのかもしれない。」&#160;司会は黙った。&#160;リュ・シファが言った。&#160;リュ・シファ：「人間には、とても不思議な習慣があります。」&#160;「未来を心配して、現在を使う。」&#160;「未来の幸福のために働いて、現在の幸福を後回しにする。」&#160;「そして、ようやく時間ができたころには、以前持っていた何かがなくなっている。」&#160;司会が静かに言った。&#160;司会：「時間はできた。でも子どもは家にいない。」&#160;「お金はできた。でも親は年を取った。」&#160;「仕事は落ち着いた。でも身体が昔ほど動かない。」&#160;誰もすぐには答えなかった。&#160;リュ・シファ：「だからといって、若い頃に仕事をしなければよかった、という話ではありません。」&#160;司会：「そうですよね。」&#160;リュ・シファ：「未来のために準備することも人生です。」&#160;「ただ……。」「未来のために生きることと、未来まで生きることを延期することは違います。」その言葉のあと、長い沈黙があった。&#160;やがてクリスティンが言った。&#160;クリスティン・ネフ：「ここでも、自分に厳しくなりすぎないことが大切です。」&#160;司会：「どういう意味ですか？」&#160;クリスティン・ネフ：「今この話を聞いて、『私は人生を無駄にしてきた』と思う人がいるかもしれません。」&#160;司会の顔から笑みが消えた。&#160;クリスティン・ネフ：「『子どもが小さいとき、もっと一緒にいればよかった。』」&#160;「『親にもっと電話すればよかった。』」&#160;「『仕事ばかりしなければよかった。』」&#160;「『もっと人生を楽しめばよかった。』」&#160;司会が静かに言った。&#160;司会：「ありますね。」&#160;クリスティン・ネフ：「でも、過去の自分を、今の自分が持っている知恵で裁かないことです。」&#160;司会は彼女を見る。&#160;クリスティン・ネフ：「その頃のあなたには、その頃の心配があった。」&#160;「その頃の責任があった。」&#160;「その頃の知識しかなかった。」&#160;「今だから見えるものがあります。」&#160;司会：「では、後悔しても意味がない？」&#160;クリスティン・ネフ：「いいえ。」&#160;「後悔には使い道があります。」&#160;司会：「どんな？」&#160;ジョージが先に答えた。「失って学んだことを、まだ失っていないものに使う。」司会は少し驚いて彼を見る。&#160;Topic 1から続いてきた会話の中で、何度か現れた言葉だった。&#160;クリスティン・ネフ：「過去を罰するためではなく、現在を見るために後悔を使う。」&#160;司会は写真をもう一度見た。&#160;司会：「それなら……。」&#160;「子どもが小さかった時間は戻らない。」&#160;「でも、大人になった子どもはいるかもしれない。」&#160;クリスティン・ネフ：「はい。」&#160;司会：「若かった頃の親は戻らない。」&#160;「でも、今まだ電話できる親がいるかもしれない。」&#160;クリスティン・ネフ：「そうです。」&#160;司会：「昔の健康は戻らないかもしれない。」&#160;「でも今日できることはある。」&#160;ロバートがうなずいた。&#160;司会：「過去に戻ることばかり考えていたら、今度は今日まで失うことになる。」&#160;誰も何も言わなかった。&#160;午後の日差しが湖の水面に広がっていた。&#160;司会は突然、ロバートに尋ねた。&#160;司会：「一つ実験していいですか？」&#160;ロバート・エモンズ：「どうぞ。」&#160;司会：「この場にいる全員に聞きたい。」&#160;「今この瞬間にあるもので、いつか失ったら恋しくなるものを一つだけ挙げてください。」&#160;最初にジョージが答えた。&#160;ジョージ・ボナーノ：「誰かと話せる時間。」&#160;クリスティン。&#160;クリスティン・ネフ：「自分の身体で歩けること。」&#160;ロバート。&#160;ロバート・エモンズ：「普通の朝。」&#160;リュ・シファは湖を見た。&#160;リュ・シファ：「まだ名前のついていない今日。」&#160;司会が笑った。&#160;司会：「詩人はずるいですね。」&#160;みんなが笑った。&#160;リュ・シファ：「では、あなたは？」&#160;司会はしばらく考えた。&#160;そして答えた。&#160;司会：「まだ電話できる人がいること。」&#160;笑い声が消えた。&#160;しばらくして司会が言った。&#160;司会：「でも、毎日こんなことを考えながら生きるのは無理ですよね。」&#160;「朝起きて、『このコーヒーも最後かもしれない』。」&#160;「犬を見て、『この散歩も最後かもしれない』。」&#160;「電話が鳴って、『この電話も最後かもしれない』。」&#160;「そんなことをしていたら、疲れてしまう。」&#160;リュ・シファが笑った。&#160;リュ・シファ：「だから、毎日すべてをありがたがる必要はないと思います。」&#160;司会：「では、どうすればいい？」&#160;リュ・シファ：「時々、目を覚ます。」&#160;司会：「時々？」&#160;リュ・シファ：「ええ。」&#160;「人生の全部を意識して生きることなどできません。」&#160;「忘れる。」&#160;「忙しくなる。」&#160;「腹を立てる。」&#160;「当たり前になる。」&#160;「そして、ときどき思い出す。」「ああ、私は今、自分の人生の中にいる。」司会はその言葉を聞いて、しばらく湖を見ていた。&#160;そして、ゆっくり言った。&#160;司会：「もしかすると、人生を愛するというのは……。」&#160;「毎日人生を好きでいることではないのかもしれませんね。」&#160;リュ・シファが彼を見る。&#160;司会：「嫌な日もある。」&#160;「悲しい日もある。」&#160;「何もありがたいと思えない日もある。」&#160;「それでも……。」「自分の人生が起きている場所に、時々ちゃんと戻ってくる。」ロバートが静かにうなずいた。&#160;そのとき、少し離れた場所で会話を聞いていたケネス・パーガメントが口を開いた。&#160;ケネス・パーガメント：「でも、人間が現在に戻ることが最も難しくなるのは、いつでしょう。」&#160;司会が振り返る。&#160;司会：「苦しいとき？」&#160;ケネス・パーガメント：「そうです。」&#160;「人生が理解できなくなったとき。」&#160;「努力しても報われなかったとき。」&#160;「愛する人を失ったとき。」&#160;「医師から望んでいなかった言葉を聞いたとき。」&#160;「自分ではどうすることもできない出来事に出会ったとき。」&#160;司会は黙っている。&#160;ケネス・パーガメント：「そんなとき、人間は単に『どうすればいい？』とは聞きません。」&#160;少し間を置いた。「なぜ？」「と聞き始めます。」&#160;司会の表情が変わった。&#160;ケネス・パーガメント：「なぜ私なのか。」&#160;「なぜこの人なのか。」&#160;「なぜこんなことが起きたのか。」&#160;「なぜ祈ったのに何も変わらなかったのか。」&#160;そして静かに続けた。「神は、どこにいるのか。」湖の上を風が渡っていった。&#160;さっきまで暖かかった午後の光が、少しずつ長い影を作り始めていた。&#160;司会は手に持っていた写真を閉じるように胸元へ寄せた。&#160;そして会話は、Topic 4「苦しみの中で、人はなぜ神と意味を求めるのか？」&#160;へと続いていった。Topic 4：苦しみの中で、人はなぜ神と意味を求めるのか？午後の光は、少しずつ傾き始めていた。&#160;湖の水面には長い影が伸び、風が木々の葉を揺らしている。&#160;ケネス・パーガメントが静かに言った。&#160;ケネス・パーガメント：「人生が理解できなくなったとき、人間は『どうすればいい？』だけではなく、『なぜ？』と聞き始めます。」&#160;司会は写真を胸元に抱えたまま、彼を見る。&#160;司会：「なぜ私なのか。」&#160;「なぜこの人なのか。」&#160;「なぜこんなことが起きたのか。」&#160;そして少し間を置いた。&#160;司会：「神は、どこにいるのか。」&#160;誰もすぐには答えなかった。&#160;司会：「不思議ですよね。」&#160;「人生が順調なときには、神についてあまり考えなかった人でも、病気になったり、誰かを失ったりすると急に祈り始めることがある。」&#160;「なぜなんでしょう。」&#160;ケネス・パーガメント：「人は、自分の力だけではどうにもならないものに出会ったとき、より大きな意味の枠組みを求めることがあります。」&#160;司会：「意味の枠組み？」&#160;ケネス・パーガメント：「はい。」&#160;「何のために生きるのか。」&#160;「なぜ苦しみがあるのか。」&#160;「死とは何か。」&#160;「自分は一人なのか。」&#160;「この出来事に何か意味があるのか。」&#160;「こうした問いは、日常が安定しているときには背景に隠れていることがあります。」&#160;「でも大きな苦しみが起きると、突然前に出てくる。」&#160;司会：「それが宗教になる？」&#160;ケネス・パーガメント：「宗教になる人もいます。」&#160;「祈りになる人もいる。」&#160;「共同体に戻る人もいる。」&#160;「自然の中に行く人もいる。」&#160;「哲学を読む人もいる。」&#160;「詩を読む人もいる。」&#160;「誰かに話す人もいる。」&#160;司会はリュ・シファを見る。&#160;司会：「それで、この本なんですね。」&#160;リュ・シファは静かにうなずいた。&#160;司会：「でも、一つ目の質問です。」「人間はなぜ、苦しむと『意味』を必要とするのでしょう？」アーヴィン・ヤーロムが、それまで聞いていた場所からゆっくり口を開いた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「苦しみそのものが辛いのはもちろんです。」&#160;「ただ、人間にとってさらに辛いことがあります。」&#160;司会：「何ですか？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「その苦しみが、何のためなのか全く分からないことです。」&#160;司会は黙って聞く。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「人間は、自分の人生を一つの物語として理解しようとします。」&#160;「過去に何があった。」&#160;「今ここにいる。」&#160;「これからどこへ行く。」&#160;「その流れが突然切れると、人は混乱します。」&#160;司会：「たとえば？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「健康だった人が突然、重い病気を告げられる。」&#160;「家族を大切にしていた人が、大切な家族を失う。」&#160;「正直に生きてきた人が、理不尽な出来事に遭う。」&#160;「すると、それまで自分が信じていた人生の物語が崩れる。」&#160;司会：「だから『なぜ』と聞く。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そうです。」&#160;リュ・シファが口を開いた。&#160;リュ・シファ：「詩にも、その役割があると思います。」&#160;司会：「答えをくれる？」&#160;リュ・シファ：「必ずしも。」&#160;「むしろ、答えられない問いを持つための言葉をくれることがあります。」&#160;司会が少し驚く。&#160;司会：「答えではなく、問いを持つための言葉？」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;「言葉にできなかった痛みを言葉にする。」&#160;「自分だけではないと気づく。」&#160;「何百年も前の人も、同じ問いを持っていたと知る。」&#160;「それだけで、人は少し孤独ではなくなることがあります。」&#160;司会は少し考えた。&#160;司会：「でも、意味を見つけることって、時々危険ではありませんか？」&#160;ケネスが彼を見る。&#160;司会：「たとえば、誰かが病気になった。」&#160;「すると周りが言う。」「きっとこの病気には意味があります。」「あるいは、家族を失った人に。」「すべて神の計画です。」司会の表情が厳しくなる。&#160;司会：「それ、本当に優しい言葉なんでしょうか？」&#160;ケネスはすぐには答えなかった。&#160;ケネス・パーガメント：「場合によっては、その人を支えることもあります。」&#160;「その人自身が信じているなら。」&#160;「自分の信仰の中で、その言葉が支えになるなら。」&#160;「でも、外から押しつけられると、別のことが起きることがあります。」&#160;司会：「どんなことですか？」&#160;ケネス・パーガメント：「『では、神はなぜ私にこんなことをしたのか』。」&#160;「『私は何か悪いことをしたのか』。」&#160;「『祈りが足りなかったのか』。」&#160;「『信仰が弱かったのか』。」&#160;「『神に見捨てられたのか』。」&#160;司会は静かにうなずいた。&#160;ケネス・パーガメント：「宗教は人を支えることがあります。」&#160;「でも宗教的な葛藤が、人をさらに苦しませることもあります。」&#160;司会：「では二つ目の質問です。」「『神には計画がある』という言葉は、慰めなのか、それとも傷になることもあるのか？」アーヴィンが少し身を乗り出した。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「私は、答えを急ぎすぎることを心配します。」&#160;司会：「答えを急ぎすぎる？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「人が深く苦しんでいるとき、周りの人は沈黙に耐えられないことがあります。」&#160;「だから何か意味のあることを言おうとする。」&#160;「でも、その言葉は、苦しんでいる本人のためというより、話す側が自分の不安を減らすためであることもあります。」&#160;司会は少し驚いた。&#160;司会：「慰めているつもりで、自分を慰めている？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そういう場合もあります。」&#160;リュ・シファが続けた。&#160;リュ・シファ：「詩も同じだと思います。」&#160;司会：「詩も？」&#160;リュ・シファ：「美しい言葉は、時々危険です。」&#160;司会が彼を見る。&#160;リュ・シファ：「美しいからこそ、本当に苦しんでいる人の痛みを簡単に包んでしまうことがある。」&#160;「でも、包んだことと理解したことは同じではありません。」&#160;司会は本を見た。&#160;司会：「この本のタイトルも？」&#160;リュ・シファは少し笑った。&#160;リュ・シファ：「だからTopic 1で、あれだけ疑ってもらったのでしょう。」&#160;司会も笑った。&#160;司会：「では、本当に苦しんでいる人の隣では、何を言えばいいんでしょう。」&#160;クリスティン・ネフが静かに答える。&#160;クリスティン・ネフ：「何も言わないという選択もあります。」&#160;司会：「沈黙？」&#160;クリスティン・ネフ：「はい。」&#160;「『分からない。』」&#160;「『でも、ここにいる。』」&#160;「それだけのほうがいい時があります。」&#160;司会は静かに繰り返した。「分からない。でも、ここにいる。」リュ・シファがうなずいた。&#160;リュ・シファ：「それは、とても深い祈りに近いこともあると思います。」&#160;司会はそこで少し表情を変えた。&#160;司会：「神に怒ってもいいのでしょうか？」&#160;ケネスはすぐに答えた。&#160;ケネス・パーガメント：「そういうことは起こります。」&#160;司会：「それは信仰がないということ？」&#160;ケネス・パーガメント：「必ずしもそうではありません。」&#160;「むしろ、神との関係を本気で持っているからこそ怒る人もいます。」&#160;司会は少し考えた。&#160;司会：「どうして助けてくれなかったんだ。」&#160;「なぜこの人を連れていったんだ。」&#160;「なぜ祈ったのに何も変わらなかったんだ。」&#160;ケネス・パーガメント：「そうです。」&#160;司会：「そんな祈りでも祈りなんですか？」&#160;ケネス・パーガメント：「私は、そう考えます。」&#160;リュ・シファが静かに加えた。&#160;リュ・シファ：「本当に近い関係なら、感謝だけではないでしょう。」&#160;「怒りもある。」&#160;「疑いもある。」&#160;「沈黙もある。」&#160;「それでも関係が続いていることがあります。」&#160;アーヴィンが司会に尋ねた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「ところで、あなたは今、『神』という言葉を使っています。」&#160;司会：「はい。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「もし神を信じていない人だったら、この問いはどうなるでしょう。」&#160;司会は少し考えた。&#160;司会：「『人生には意味があるのか』になる？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そうかもしれません。」&#160;司会：「でも、神を信じない人でも、家族を大切にしたり、自然に感動したり、誰かのために犠牲になったりする。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「もちろんです。」&#160;司会：「それもSpiritualと言える？」&#160;ケネスが答えた。&#160;ケネス・パーガメント：「人によります。」&#160;「宗教という言葉を使う人もいる。」&#160;「Spiritualityという言葉を使う人もいる。」&#160;「どちらも使わない人もいる。」&#160;「大切なのは、その人が人生の中で何を神聖なものとして扱っているかです。」&#160;司会：「神聖なもの？」&#160;ケネス・パーガメント：「何としても守りたいもの。」&#160;「深い意味を感じるもの。」&#160;「自分より大きいと感じるもの。」&#160;「人によって、それは神かもしれない。」&#160;「家族かもしれない。」&#160;「自然かもしれない。」&#160;「真理かもしれない。」&#160;「愛かもしれない。」&#160;司会は少し笑った。&#160;司会：「そうすると、宗教が違っても話せる部分が出てきますね。」&#160;リュ・シファがうなずいた。&#160;リュ・シファ：「私はそこに興味があります。」&#160;司会：「77篇を選んだ理由も？」&#160;リュ・シファ：「同じ答えを並べたかったわけではありません。」&#160;「違う時代。」&#160;「違う国。」&#160;「違う宗教。」&#160;「違う人生。」&#160;「でも、不思議なくらい似た問いが現れる。」&#160;司会が言う。&#160;司会：「愛。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「死。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「孤独。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「赦し。」&#160;リュ・シファ：「はい。」&#160;司会：「意味。」&#160;リュ・シファ：「そして、どう生きるか。」&#160;司会：「では三つ目の質問です。」「宗教も文化も違う人々が、なぜ似た人生の問いへたどり着くのでしょう？」アーヴィンが答えた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「人間であることの条件が、ある部分では共通しているからでしょう。」&#160;「私たちは死ぬ。」&#160;「大切な人を失う。」&#160;「一人になることがある。」&#160;「自由に選ばなければならない。」&#160;「人生の意味を自分で引き受けなければならない。」&#160;「宗教的な答えは違っても、問いの根は似ています。」&#160;ケネスが少し反論する。&#160;ケネス・パーガメント：「ただ、『全部同じ』と言ってしまうのも危険です。」&#160;司会が振り返る。&#160;ケネス・パーガメント：「宗教は、それぞれ本当に違うことを教えています。」&#160;「神について。」&#160;「救いについて。」&#160;「死後について。」&#160;「人間とは何かについて。」&#160;「その違いを消してしまう必要はありません。」&#160;司会がうなずく。&#160;司会：「違う答えのまま、同じ問いの前に座れる。」&#160;ケネス・パーガメント：「そうです。」&#160;リュ・シファが微笑んだ。&#160;リュ・シファ：「私はそれが好きです。」「同じ答えを持っているからつながるのではなく、同じ問いを持っているからつながる。」夕方の光がさらに低くなった。&#160;湖の向こうの空が、ゆっくり橙色に変わり始めていた。&#160;司会はしばらく黙ってから言った。&#160;司会：「でも、一つ怖いことがあります。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「何でしょう。」&#160;司会：「人生の意味を探し続けて、人生そのものを生き忘れることです。」&#160;アーヴィンが少し笑った。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「その可能性はあります。」&#160;司会：「神の計画が分かるまで。」&#160;「自分の使命が分かるまで。」&#160;「なぜ苦しんだのか分かるまで。」&#160;「本当の自分が分かるまで。」&#160;「全部分かってから生きようとする。」&#160;リュ・シファが静かに言った。&#160;リュ・シファ：「それもまた、『いつか』ですね。」&#160;司会はTopic 3を思い出して笑った。&#160;司会：「また出てきましたね。」&#160;「いつか。」&#160;アーヴィンが司会を見る。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「では、逆に聞きましょう。」&#160;司会：「何をですか？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「人生の意味が完全に分かる日を待っているとします。」&#160;「その日まで、人生を始めないのですか？」&#160;司会は黙った。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「死について完全に納得できるまで。」&#160;「神について完全に分かるまで。」&#160;「過去の理由が全部分かるまで。」&#160;「傷が全部治るまで。」&#160;「悲しみが全部消えるまで。」&#160;少し間を置く。「その日が来なかったら？」湖の向こうで、太陽が山の近くまで下がっていた。&#160;司会は本を閉じた。&#160;そして、静かに言った。&#160;司会：「もしかすると、人生の意味を見つけることより先に……。」&#160;「人生を生きなければいけないのかもしれませんね。」&#160;アーヴィンは答えなかった。&#160;代わりに、もう一つ問いを置いた。「では、人間はなぜ、自分の人生を生きることを『いつか』まで延期してしまうのでしょう？」夕方の空が、少しずつ夜へ変わり始めていた。&#160;そして会話は、Topic 5「なぜ人は、自分の人生を生きることを『いつか』まで延期するのか？」&#160;へと続いていった。Topic 5：なぜ人は、自分の人生を生きることを「いつか」まで延期するのか？夕方の湖は、朝とはまるで違う色になっていた。&#160;水面には橙色の光が残り、空の高いところから少しずつ青が深くなっている。&#160;アーヴィン・ヤーロムの問いが、その場に残っていた。「では、人間はなぜ、自分の人生を生きることを『いつか』まで延期してしまうのでしょう？」司会はすぐには答えなかった。&#160;しばらく湖を見ていた。&#160;そして、小さく笑った。&#160;司会：「私も、ずっとそうしてきた気がします。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「どんなふうに？」&#160;司会：「若い頃は……。」「学校を卒業したら。」「卒業したら……。」「仕事が安定したら。」「仕事が安定したら……。」「もっとお金ができたら。」「結婚したら。」&#160;「子どもが大きくなったら。」&#160;「家のローンが落ち着いたら。」&#160;「仕事が忙しくなくなったら。」&#160;「退職したら。」&#160;少し笑う。&#160;司会：「ずっと未来に、何か大きな入口があるような気がしていたんです。」&#160;リュ・シファ：「その入口の向こうには何があると思っていましたか？」&#160;司会は考えた。&#160;司会：「本当の人生。」&#160;誰も笑わなかった。&#160;司会：「でも、こうして振り返ると変ですよね。」&#160;「人生を始める準備をしている間にも、人生は進んでいた。」&#160;アーヴィンがうなずく。&#160;司会：「子どもは大きくなった。」&#160;「親は年を取った。」&#160;「自分の身体も変わった。」&#160;「友人と会う回数も減った。」&#160;「そしてある日、気づく。」『あれ？ これが人生だったのか。』リュ・シファが静かに言った。&#160;リュ・シファ：「たぶん、人生には始業ベルが鳴らないのでしょう。」&#160;司会が少し笑った。&#160;リュ・シファ：「誰も『今日から本番です』とは教えてくれない。」&#160;「普通の火曜日も。」&#160;「疲れた木曜日も。」&#160;「何も起きなかった日曜日も。」&#160;「すでに本番です。」&#160;司会は全員を見る。&#160;司会：「では、一つ目の質問です。」「私たちは、いったい何を待っているのでしょう？」ロバート・エモンズが答える。&#160;ロバート・エモンズ：「条件が整うことではないでしょうか。」&#160;司会：「条件？」&#160;ロバート・エモンズ：「もう少しお金があれば。」&#160;「もう少し健康なら。」&#160;「もう少し自由なら。」&#160;「家族の問題が解決したら。」&#160;「仕事が落ち着いたら。」&#160;「不安がなくなったら。」&#160;司会が言う。&#160;司会：「つまり、人生を楽しむための許可を、条件に渡している。」&#160;ロバート・エモンズ：「そういうことがあります。」&#160;クリスティン・ネフが加わる。&#160;クリスティン・ネフ：「完璧な自分を待っている人もいます。」&#160;司会：「完璧な自分？」&#160;クリスティン・ネフ：「もっと自信がついたら。」&#160;「もっと痩せたら。」&#160;「もっと成功したら。」&#160;「過去を完全に許せたら。」&#160;「傷が全部治ったら。」&#160;「そのとき人を愛そう。」&#160;「そのとき旅行しよう。」&#160;「そのとき自分を好きになろう。」&#160;司会は苦笑した。&#160;司会：「それ、かなり時間がかかりそうですね。」&#160;クリスティン・ネフ：「そして、完成しないかもしれません。」&#160;司会：「では、未完成のまま生きる？」&#160;クリスティン・ネフ：「私たちは最初からずっと、未完成のまま生きています。」&#160;スー・ジョンソンが静かに言った。&#160;スー・ジョンソン：「愛についても同じことがあります。」&#160;司会が彼女を見る。&#160;スー・ジョンソン：「関係が完全に安全になってから心を開こう。」&#160;「相手が絶対に自分を傷つけないと分かってから信じよう。」&#160;「絶対に失わないと分かってから愛そう。」&#160;司会：「でも、それは無理ですね。」&#160;スー・ジョンソン：「はい。」&#160;「愛には、不確実さがあります。」&#160;「だから怖い。」&#160;「でも、その不確実さを全部消そうとすると、愛そのものも遠ざかることがあります。」&#160;司会はTopic 1を思い出した。&#160;司会：「傷つかない人生を選ぼうとすると、愛さない人生に近づくこともある。」&#160;スーは静かにうなずいた。&#160;アーヴィンが司会に尋ねた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「では、なぜ条件を待つのでしょう？」&#160;司会は少し考える。&#160;司会：「怖いから？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「何が？」&#160;司会：「本当に生き始めて、それでも幸せになれなかったら。」&#160;アーヴィンは黙っている。&#160;司会は続けた。&#160;司会：「『いつかやる』と言っている間は、まだ可能性があります。」&#160;「本を書きたい。」&#160;「いつか書く。」&#160;「会いたい人がいる。」&#160;「いつか会う。」&#160;「行きたい場所がある。」&#160;「いつか行く。」&#160;「謝りたい人がいる。」&#160;「いつか謝る。」&#160;少し間を置いた。&#160;司会：「でも本当にやってみたら、うまくいかないかもしれない。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そうです。」&#160;司会：「だから『いつか』は、安全なんですね。」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「ある意味では。」「『いつか』は、夢を失敗から守ることができます。」司会が静かになる。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「でも同時に、人生からも遠ざけます。」&#160;リュ・シファが湖を見ながら言った。&#160;リュ・シファ：「まだ咲いていない花は、枯れません。」&#160;司会が彼を見る。&#160;リュ・シファ：「でも、咲きもしません。」&#160;しばらく誰も話さなかった。&#160;夕方の風が少し冷たくなってきた。&#160;司会が口を開く。&#160;司会：「では、二つ目の質問です。」「もし人生が残り一年だと分かったら、何を変えるのでしょう？」ジョージ・ボナーノが少し表情を変えた。&#160;ジョージ・ボナーノ：「一年という数字は、人によって重すぎる質問にもなりますね。」&#160;司会：「そうですね。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「でも、優先順位を見る問いとしては興味深い。」&#160;司会がうなずく。&#160;司会：「では、みんなに聞いてみたいです。」&#160;「残り一年だったら、何をやめますか？」&#160;最初にロバートが答えた。&#160;ロバート・エモンズ：「価値のない比較を減らします。」&#160;司会：「人と比べること？」&#160;ロバート・エモンズ：「はい。」&#160;「誰が自分より成功しているか。」&#160;「誰の家が大きいか。」&#160;「誰の人生がうまくいっているように見えるか。」&#160;「一年しかないなら、それに多くの時間を使いたくありません。」&#160;クリスティン・ネフ：「私は、自分を責め続ける時間を減らしたいです。」&#160;司会：「過去の失敗？」&#160;クリスティン・ネフ：「はい。」&#160;「謝る必要があるなら謝る。」&#160;「修復できるなら修復する。」&#160;「でも、それが終わったあとも自分を罰し続けることに、残り時間を使いたくない。」&#160;スー・ジョンソン：「私は、言っていない言葉を減らしたいです。」&#160;司会：「たとえば？」&#160;スー・ジョンソン：「愛している。」&#160;「寂しい。」&#160;「会いたい。」&#160;「助けてほしい。」&#160;「ごめんなさい。」&#160;「ありがとう。」&#160;司会が少し笑う。&#160;司会：「短い言葉ばかりですね。」&#160;スー・ジョンソン：「大切な言葉は、意外と短いです。」&#160;ケネス・パーガメント：「私は、答えが出ない問いを抱えたままでも生きると思います。」&#160;司会：「神についても？」&#160;ケネス・パーガメント：「はい。」&#160;「一年しかないからといって、神について全部分かるわけではありません。」&#160;「でも、全部分かるまで祈らない、愛さない、生きないという必要もない。」&#160;司会はアーヴィンを見る。&#160;司会：「あなたは？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「私は、重要ではないことを重要だと思い込む時間を減らしたいですね。」&#160;司会：「かなり多そうですね。」&#160;アーヴィンが笑った。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「人間は、それが得意です。」&#160;最後に司会はリュ・シファを見る。&#160;司会：「リュ・シファさんは？」&#160;リュ・シファは少し考えた。&#160;リュ・シファ：「急いで何か特別なことを増やすより、もう少しゆっくり見ると思います。」&#160;司会：「見る？」&#160;リュ・シファ：「一緒にいる人の顔。」&#160;「食べているもの。」&#160;「道の木。」&#160;「夕方の空。」&#160;「自分がもう何度も見たと思っているもの。」&#160;司会は少し驚いた。&#160;司会：「世界一周とかではないんですね。」&#160;リュ・シファが笑う。&#160;リュ・シファ：「してもいいでしょう。」&#160;「でも、人生の価値を証明するために大きなことをする必要はないと思います。」&#160;司会はその言葉を聞いて、少し考えた。&#160;司会：「Bucket Listってありますよね。」&#160;「死ぬまでに100個のことをする。」&#160;「スカイダイビング。」&#160;「世界旅行。」&#160;「オーロラを見る。」&#160;「有名な場所に行く。」&#160;リュ・シファ：「素晴らしいことです。」&#160;司会：「でも、残り一年と言われたら、逆に全部やらなければいけない気がして疲れる人もいそうです。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「それも一つのプレッシャーになります。」&#160;司会：「『最高の一年にしなければ』。」&#160;クリスティンがうなずく。&#160;クリスティン・ネフ：「普通の一日にも価値があります。」&#160;司会は言った。&#160;司会：「朝起きる。」&#160;「コーヒーを飲む。」&#160;「犬と歩く。」&#160;「家族と食事する。」&#160;「好きなテレビを見る。」&#160;「眠る。」&#160;クリスティン・ネフ：「それでも一日です。」&#160;リュ・シファ：「そして、それも人生です。」&#160;湖の向こうで太陽が少しずつ沈んでいく。&#160;司会は突然、全員に聞いた。&#160;司会：「もう一つ。」&#160;「もし残り一年なら、誰に会いますか？」&#160;誰もすぐには答えなかった。&#160;司会が続ける。&#160;司会：「疎遠になった家族。」&#160;「昔の友人。」&#160;「喧嘩した相手。」&#160;「ずっと許せなかった人。」&#160;「会いに行くべきでしょうか？」&#160;クリスティンが最初に答えた。&#160;クリスティン・ネフ：「必ずしも。」&#160;司会が彼女を見る。&#160;クリスティン・ネフ：「時間が有限だからといって、危険な関係へ戻る義務はありません。」&#160;スーも続ける。&#160;スー・ジョンソン：「赦しと再接近は別です。」&#160;司会：「Topic 1で話しましたね。」&#160;スー・ジョンソン：「はい。」&#160;「誰かを憎み続けるのをやめることと、その人をもう一度自分の生活へ入れることは同じではありません。」&#160;司会は考えた。&#160;司会：「では、こういうこともありますね。」「もうあなたを憎むために、私の残り時間を使いません。」クリスティンが静かにうなずいた。&#160;クリスティン・ネフ：「それだけでも、一つの自由かもしれません。」&#160;少ししてアーヴィンが尋ねた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「ところで、なぜ一年なのですか？」&#160;司会が笑う。&#160;司会：「あなたが実存心理学者だから、もっと厳しい質問が来そうですね。」&#160;アーヴィンも笑った。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「一年と分かる人は少ないでしょう。」&#160;司会の表情が変わる。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「私たちは、自分が死ぬことは知っています。」&#160;「でも、日付は知りません。」&#160;「だから、死は知識としては存在する。」&#160;「でも、日常では存在しないかのように暮らせる。」&#160;司会：「確かに。」&#160;司会は少し前へ歩いた。&#160;夕陽が彼の顔を横から照らしていた。&#160;司会：「では、三つ目の質問です。」「死ぬと知っているのに、なぜ私たちは永遠に生きるように暮らすのでしょう？」アーヴィンは少し間を置いて答えた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「常に死を意識していたら、人間は生活できません。」&#160;「ある程度忘れることは必要です。」&#160;司会：「では、忘れるのは悪くない？」&#160;アーヴィン・ヤーロム：「悪くありません。」&#160;「問題は、完全に忘れてしまうことです。」&#160;「自分には無限の時間があるように思い始める。」&#160;司会はつぶやく。&#160;司会：「あとで電話すればいい。」&#160;「来年会えばいい。」&#160;「いつか旅行すればいい。」&#160;「そのうち謝ればいい。」&#160;「もう少し落ち着いたら、一緒に過ごそう。」&#160;アーヴィンが聞く。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そして？」&#160;司会は湖を見る。&#160;司会：「その『あとで』が来ないことがある。」&#160;長い沈黙があった。&#160;やがてジョージが言った。&#160;ジョージ・ボナーノ：「でも、ここでも恐怖だけを使わないほうがいいと思います。」&#160;司会：「どういうことですか？」&#160;ジョージ・ボナーノ：「『いつ死ぬか分からないから、今すぐ全部やれ』と言われても、人は疲れます。」&#160;司会が笑う。&#160;司会：「またBucket Listですね。」&#160;ジョージ・ボナーノ：「ええ。」&#160;「死を意識する目的は、常に急ぐことではないと思います。」&#160;アーヴィンがうなずいた。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「むしろ、優先順位を明らかにすることです。」&#160;司会が彼を見る。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「死が教えるのは……。」&#160;少し間を置いた。「急げ、ではなく、優先順位を間違えるな。」その言葉のあと、全員が静かになった。&#160;湖の向こうで、太陽がほとんど沈みかけている。&#160;司会は朝からの会話を思い出していた。&#160;Topic 1。&#160;傷ついたあと、もう一度愛せるのか。&#160;Topic 2。&#160;悲しみは乗り越えるものなのか。&#160;Topic 3。&#160;なぜ「今」を見失うのか。&#160;Topic 4。&#160;なぜ苦しみの中で神と意味を求めるのか。&#160;そして今。&#160;残りの人生をどう生きるのか。&#160;司会はゆっくり本を手に取った。&#160;表紙を見た。『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』司会：「朝、このタイトルを見たとき、少し怖かったんです。」&#160;リュ・シファが彼を見る。&#160;司会：「傷ついたことを忘れろと言われているように感じた。」&#160;「裏切られても。」&#160;「失っても。」&#160;「泣いても。」&#160;「全部忘れて、もう一度無防備に愛しなさい。」&#160;「そんなことを言われているように。」&#160;リュ・シファ：「今は？」&#160;司会はしばらく答えなかった。&#160;司会：「今は、少し違って聞こえます。」&#160;「傷が全部治るまで待たなくてもいい。」&#160;「悲しみが全部消えるまで待たなくてもいい。」&#160;「人生の意味が全部分かるまで待たなくてもいい。」&#160;「神について全部理解するまで待たなくてもいい。」&#160;「十分なお金ができるまで待たなくてもいい。」&#160;「自分が完璧になるまで待たなくてもいい。」&#160;司会は本を見つめる。&#160;司会：「そうやって待っているうちに、人生そのものが終わってしまうかもしれない。」&#160;スー・ジョンソンが静かに言った。&#160;スー・ジョンソン：「愛を延期しない。」&#160;クリスティン。&#160;クリスティン・ネフ：「自分への優しさを延期しない。」&#160;ジョージ。&#160;ジョージ・ボナーノ：「悲しみがなくなる日まで、生きることを延期しない。」&#160;ロバート。&#160;ロバート・エモンズ：「今あるものを見ることを延期しない。」&#160;ケネス。&#160;ケネス・パーガメント：「答えがすべて分かる日まで、意味ある人生を延期しない。」&#160;アーヴィン。&#160;アーヴィン・ヤーロム：「そして、死が近づいてから初めて生きようとしない。」&#160;最後に全員がリュ・シファを見る。&#160;リュ・シファはすぐには話さなかった。&#160;空はかなり暗くなり、湖面には最後の光だけが残っている。&#160;リュ・シファ：「私たちは、傷つかなかった人になることはできません。」&#160;司会は黙って聞いた。&#160;リュ・シファ：「失わなかった人にもなれない。」&#160;「後悔しなかった人にも。」&#160;「間違えなかった人にも。」&#160;「いつか死なない人にもなれない。」&#160;少し間を置いた。&#160;リュ・シファ：「でも……。」「傷がなくなる日を待ってから、人生を愛そうとしないことはできます。」司会の表情が変わった。&#160;リュ・シファは続けた。「愛しなさい。一度も傷ついたことがないかのように。」そして、少しだけ言葉を足した。「けれど、傷ついた自分を置き去りにしないように。」湖の向こうに、最後の光が消えた。&#160;誰もすぐには立ち上がらなかった。&#160;司会は本を閉じた。&#160;今日一日で、答えが全部見つかったわけではない。&#160;神についても。&#160;死についても。&#160;悲しみについても。&#160;愛についても。&#160;まだ分からないことはたくさんある。&#160;でも、それでいいような気がした。&#160;司会は最後に、誰にともなく尋ねた。「あなたが『いつか』始めようと思っている人生の中で、今日から始められるものは何ですか？」誰も答えなかった。&#160;その問いは、湖のそばにいる人たちではなく、&#160;この会話を読んでいる人へ渡されたまま、&#160;静かに残った。最後にこの対話を始めたとき、『愛しなさい、一度も傷ついたことがないかのように』という言葉は、「傷を忘れて、もう一度愛しなさい」という意味にも聞こえました。しかし、心理学、悲嘆研究、宗教、実存思想、そしてリュ・シファが集めた詩の世界を通って戻ってくると、違う読み方が見えてきます。傷が全部治るまで待たなくてもいい。悲しみが消えるまで待たなくてもいい。人生の意味が完全に分かるまで待たなくてもいい。神について答えが出るまで待たなくてもいい。自分が完璧になるまで待たなくてもいい。人生には明るい糸だけではなく、暗い糸もあります。愛した記憶、失った人、後悔した選択、普通の夕食、何気ない電話、笑った日、泣いた日。それらが一緒になって、一人の人生という模様を作っていきます。だからHealingとは、傷が消えることではなく、傷があっても、人生全体が傷だけではなくなることなのかもしれません。そして死を意識することが教えるのも、「急いで全部やりなさい」ということではありません。大切ではないものに、大切な時間を使いすぎないこと。私たちは人生が始まるのを待っている間にも、すでに人生を生きています。もしかすると、この本から最後に持ち帰る問いは、とてもシンプルです。あなたが「いつか」始めようと思っている人生の中で、今日から始められるものは何ですか？Short Bios:リュ・シファ（류시화）韓国の詩人、作家、翻訳者。本書では世界各地、さまざまな時代の詩を集め、人間の傷、愛、喪失、生、死を一冊の中で響き合わせています。スー・ジョンソン（Sue Johnson）臨床心理学者。Emotionally Focused Therapy（EFT）の発展で知られ、愛着、親密さ、傷ついた関係における信頼の回復を研究しました。クリスティン・ネフ（Kristin Neff）心理学者。セルフ・コンパッション研究の代表的人物。失敗や苦しみの中で、自分自身とどのように向き合うかを研究しています。ジョージ・ボナーノ（George Bonanno）心理学者。喪失、悲嘆、トラウマ、レジリエンス研究で知られ、人間の悲しみ方や回復の形には大きな個人差があることを研究しています。ロバート・エモンズ（Robert Emmons）心理学者。感謝と幸福について長年研究し、人間がすでに持っているものに気づくこととWell-beingの関係を探究しています。ケネス・パーガメント（Kenneth Pargament）心理学者。宗教、Spirituality、心理的copingの研究で知られ、苦しみの中で信仰や意味が人間にどのように働くかを研究しています。アーヴィン・ヤーロム（Irvin Yalom）精神科医、心理療法家、作家。死、自由、孤独、意味といった人間存在の根本的な問題を、実存心理療法の視点から探究してきました。司会特別な専門家ではなく、愛し、傷つき、失い、働き、家族と暮らし、いつの間にか人生の時間が有限であることを意識し始めた一人の人間。専門家の答えを聞くだけではなく、読者が本当に聞きたい疑問を彼らに投げかけます。]]></description>
		
					<wfw:commentRss>https://imaginaryconversation.com/aishinasai-kizutsuita-psychology/feed/</wfw:commentRss>
			<slash:comments>0</slash:comments>
		
		
			</item>
	</channel>
</rss>

<!--
Performance optimized by W3 Total Cache. Learn more: https://www.boldgrid.com/w3-total-cache/?utm_source=w3tc&utm_medium=footer_comment&utm_campaign=free_plugin

Page Caching using Disk: Enhanced 

Served from: imaginaryconversation.com @ 2026-09-19 06:32:14 by W3 Total Cache
-->