
東北弁サンタさん|はじまり
ほっほっほ。今夜ぁ雪がふかふかで、ええ晩だべな。
こんたら夜は、見えるプレゼントだけでねぐて、
見えね優しさも、ちゃんと配られでらんだ。
これはな、コンジって娘が、
つらい中でも一人で抱え込まねで、
そばさあった助けに気づいた、
静かであったけぇクリスマスの話だぁ。
クリスマスの夜、見えね手はそばさあった
(콩쥐팥쥐 より|東北弁)
雪ぁ、しんしん降ってら。
音も立てねで、家も道も、
つらいことも、静かに覆ってら。
コンジは、井戸のそばさ立ってだ。
冷て水が手さ刺さって、
洗いもんは、まだ山ほど残ってら。
「早ぐせえ!」
家ん中から、継母の声が飛んでくる。
クリスマスの夜だってのに、
コンジには、灯りも、歌もねがった。
ただ、凍えだ指と、
胸ん奥で小さく揺れる、
「なんでだべな…」って気持ちだけがあった。
そのとき、
雪の中さ、ちょこんと足音がした。
「……コンジ」
振り向ぐと、
井戸の縁さ、白いウサギが座ってら。
毛ぇ濡れでもねし、
寒そうでもね。
「泣ぐな。
見えねども、助けは来てら」
ウサギがそう言うと、
水の中から、
小魚や鳥たちが次々と出てきて、
洗いもんを、あっという間に終わらせた。
コンジは、声も出ねぐて、
ただ、目ぇ見開いで見でらだけだった。
「ありがど…」
そう言った時には、
もう、誰もいねがった。
家ん中では、
パッチが新しい着物さ包まれて、
鏡の前でくるくる回ってら。
「お母さま、
わだし、きれいだべ?」
継母は満足そうにうなずいた。
「当たり前だべ。
いいとこさ行ぐんだもの」
コンジは、古い服のまま、
隅っこさ座ってら。
「コンジは留守番だ。
雪降ってらし、外さ出るこたぁね」
扉が閉まった。
その瞬間、
囲炉裏の火が、ふっと大ぎぐなった。
火の中から、
やさしい声がした。
「コンジ」
振り向ぐと、
年取った婆さまが立ってら。
でも、足は雪に触れでも、
跡も残ってね。
「泣ぎながら耐えだ夜は、
ちゃんと見でだ」
婆さまは、
古い布を取り出して、
軽ぐ振った。
すると、
布は光って、
白くてあったけぇ着物さ変わった。
「これはな、
天使の手仕事だ」
外さ出ると、
足元に、ガラスみてぇに光る靴が揃ってら。
「行ってこい」
婆さまは言った。
「でも、日付変わる前には戻れ。
奇跡ぁ、永遠じゃね」
村の集まり場は、
灯りと歌でいっぱいだった。
誰も、
あのコンジだとは気づがね。
「……きれいだな」
若い役人が、
そう言って、
コンジの手を取った。
でも、
コンジは、ずっと思ってら。
「これは、わだし一人の力でね」
鐘が鳴った。
日付が変わる合図だ。
コンジは走った。
雪の中で、
一つ、靴を落として。
次の日。
役人は、靴を手に、
村じゅうを歩いた。
どんな娘さ履かせても、
合わね。
最後に、
小さな家さ来た。
コンジが履ぐと、
靴は、ぴたりと合った。
そのとき、
誰にも見えねところで、
ウサギが、
鳥が、
婆さまが、
静かに笑った。
後で、コンジは思った。
助けてくれた人たちの顔を、
はっきり思い出せね。
でも、わかることは一つだけ。
苦しい夜にも、
見えね手は、
ちゃんとそばさあった。
その年のクリスマス、
コンジの家には、
小さな灯りがともった。
それは、
誰かが黙って差し出した、
優しさの灯りだった。
東北弁サンタさん|おわり
ほっほっほ、どうだったべ。
助けってのはな、
いつも姿見せるもんでね。
気づかね間に、
火ぃ守ってくれたり、
背中押してくれたりすんだ。
今夜、誰がさやさしくできたなら、
それがもう、立派な奇跡だべ。
メリークリスマスだぁ。
登場人物紹介
コンジ
継母に虐げられながらも、優しさと忍耐を失わない娘。見えない助けを受け取り、自分の価値を取り戻していく。
パッチ
母に甘やかされて育った娘。与えられることに慣れ、他者の苦しみに気づかない存在として描かれる。
継母
厳しさと嫉妬に支配された人物。力で人を従わせようとし、やがて孤立していく。
見えない助け(動物・精霊たち)
姿を誇らず、静かに手を差し伸べる存在。苦しむ者のそばに必ずいる優しさの象徴。

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