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Imaginary Conversation

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Exploring the World Through Dialogue.

もし徳川家康とあなたが親友だったら

April 21, 2025 by Nick Sasaki Leave a Comment

あの川のほとりにいた男へ

「家康」と言えば、天下人、徳川幕府、泰平の世。
きっと多くの人が、そう思い浮かべることだろう。

けれど私にとっての家康は、
雨の日に空を見て涙をこらえていた“人質の少年”であり、
大敗の夜に震えながら笑おうとしていた“泥だらけの男”だった。

彼は決して、派手ではなかった。
けれど、どんなときも静かに立ち、沈黙の中に強さを秘めていた。

この記録は、そんな彼の「5つの戦い」をそばで見てきた、
ただの親友としての私の視点から綴った小さな物語だ。

名将ではなく、人間としての家康。
その姿に少しでも触れてもらえたなら、本望である。

(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。)

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Table of Contents
第1章:ただ一つの空を見て ― 幼少期の人質生活
第2章:恥を描いた男 ― 三方ヶ原の逃走と覚悟
第3章:影に立つ者の誇り ― 信長と秀吉の狭間で
第4章:沈黙の力 ― 関ヶ原に立つ“動かぬ者”
第5章:泰平の影に立つ者 ― 誰も見なかった徳川の孤独
あとがき

第1章:ただ一つの空を見て ― 幼少期の人質生活

駿府城の朝は、冷たかった。
大人たちの笑い声が遠くから聞こえてきても、少年・松平竹千代(のちの家康)は、声を出して笑うことを忘れていた。

この城に来たのは6歳のとき。
生まれてすぐに父を失い、母と引き離され、今川義元のもとへ“人質”として差し出されたのだ。

その日も、竹千代は庭の隅で膝を抱えて空を見ていた。
すると門の向こうから、あの声が聞こえてきた。

「おい竹千代ー! 聞こえるかー!」

それはあなたの声だった。
風に乗って、少しかすれていたが、確かに届いた。

「今日は晴れてるなー! そっちも晴れてるかー? 空はつながってるからなー!」

番兵が止めようとしたが、あなたはその場を離れず、声を張り上げ続けた。

「今日も生きろよー! 明日は団子持ってくるからなー!」

――その夜、竹千代は初めて駿府で涙を流した。

*

後日、あなたがこっそり渡してくれた手紙には、こう書かれていた。

「お前が人質でも、オレの中じゃ“相棒”だ。空が広いのは、心が折れないようにって天が気を利かせてくれたんだと思う。
こっちが寂しい時も、お前が下を向かないように、空ばっか見てるよ。だから一緒に、上を向こうな。」

竹千代は、床の間にその手紙を大事にしまった。
何もしてやれない。けれど、何もさせないでいてくれた。
あなたの存在が、少年の“心のふるさと”だった。

それから何年もの間、彼は人質として生きた。
がまんして、耐えて、何も語らず、信じるものもなく――
ただ、一通の手紙と、いつか一緒に見上げた空だけが、心をつないでいた。

*

のちに彼が天下人と呼ばれるようになってからも、彼は時折こう言った。

「わしの信じたものは少ない。だが、空は変わらなかった。あの日、空を見ながら名前を呼んでくれた友の声は…今も忘れん」

そして、あなたと再会したその夜、家康は静かに言った。

「やっと空の下、同じ土の上で笑えるな」

その言葉には、少年の日々の孤独も、乗り越えてきた人生の重みも、すべてが込められていた。

第2章:恥を描いた男 ― 三方ヶ原の逃走と覚悟

冬の浜松。
冷たい風が城の石垣をなでるように吹き抜けていた。
三方ヶ原での戦――武田信玄の圧倒的な軍勢に敗れ、家康は命からがら浜松城に逃げ帰った。

鎧は泥にまみれ、馬上で失禁したとも噂されるほどの大混乱。
勝ち戦が続いていた若き将は、初めて「命が縮む恐怖」を味わった。

その夜、あなたが城を訪ねたとき、家康はふと筆を持って言った。

「この姿を…絵にして残す。逃げ帰った時の顔を、そのままに」

あなたは一瞬、耳を疑った。

「…ちょっと待って。まさか、自分で描かせるのか? “最も恥ずかしい瞬間”を?」

「そうだ。この顔を、寝室に飾る。毎晩寝る前に見るためにな」

「……ドMか?」

「違う。これは“初心”だ。恥を忘れた者は、また同じ間違いをする。武士の誇りなど、命を落としてからでは意味がない。生きて、恥じて、強くなる。それが真の勝ち方だ」

あなたはしばらく黙ってから、笑って言った。

「じゃあ俺も描くか。“友達が死ぬほどビビって逃げてきた日”の顔。鼻水垂れてたら盛って描いてやろうか?」

家康は苦笑した。

「…そこは美化してくれ。せめて“精悍な撤退”に見えるようにな」

「無理無理。でもさ、家康。お前はそれを“恥”って言ってるけどさ、オレから見たら“決して自分を飾らない勇気”だよ。人は勝ち姿だけじゃ信じられない。逃げる姿にも誠があれば、人はついてくる」

家康はその言葉に目を伏せ、やがて静かにうなずいた。

「この敗北が、わしを“勝たせる者”にする。その種に、ならねばな」

そうして家康は、敵前逃亡という最大の恥を、次の勝利への布石に変えた。

のちに彼が天下を取ったとき、城の奥座敷には今もあの肖像画が掛けられていた。
それを見て、若き家臣が尋ねたという。

「なぜ、こんな“情けない顔”を飾っておられるのですか?」

家康は答えた。

「これは、わしを最も強くした顔だ」

そして、横にいたあなたはそっとつぶやいた。

「そしてそれを笑い合えた友こそ、わしの一番の宝だよな、家康」

彼は少し笑って、頷いた。

第3章:影に立つ者の誇り ― 信長と秀吉の狭間で

ある日、京の町を見下ろす茶屋にて、家康は湯呑みに口をつけながらぽつりと呟いた。

「信長は、雷のような男だったな。見上げれば眩しく、聞けば震える。
秀吉は風だ。どこにでも入ってきて、気づけば中をかき乱している。
…その中で、わしは何だったのだろうな」

あなたは笑って答えた。

「そうだなぁ。雷でも風でもない。あんたは“川”だ。じっくり流れて、岩をも穿つ」

「川…か。見た目には地味だが、時に命を運び、時に災いも運ぶ。だが、形を変えず、道を選ぶ」

「そう。それが家康って男だよ。
みんなが派手に踊ってるとき、あんたは静かに足元を見てる。誰よりも“遠く”を考えてる」

信長が命を落としたとき、秀吉が政権を握ったとき――
家康は一歩も動かなかった。いや、一歩だけ引いたのだ。
前に出ず、しかし後ろにも下がらず。冷静に時を見つめていた。

ある日、家康はこう言った。

「わしは、“二番手の才”と言われ続けた。信長にも、秀吉にも及ばぬとな。
だがな、先を行く者が早すぎれば、群れはついてこれぬ。わしは“振り返る者”になりたかった」

あなたは頷いて、少し笑った。

「確かにお前が先頭走ると、見てる方も心配になるしな。『家康のやることには意味がある』って、みんな信じてる。それって、“派手じゃない英雄”の証拠だろ」

家康は静かに目を伏せ、こう呟いた。

「わしが一番恐れているのは、“信”を失うことだ。勝っても、名声があっても、誰からも頼られぬ者にだけはなりたくない」

「それなら大丈夫。
だって信長にも秀吉にもなれなかったお前だからこそ、“徳”を持った“家康”になれたんだから」

その言葉に、家康は久しぶりに深く笑った。

後年、彼は天下を掌握する。
だがその時も、旗印に「天下布武」も「豊臣」もなかった。
ただ一文字――「徳」。

“それこそが、わしの武”と、家康は語った。

第4章:沈黙の力 ― 関ヶ原に立つ“動かぬ者”

慶長五年、秋。
天下分け目の関ヶ原に向けて、空は不穏な灰色に染まっていた。
諸大名たちは口々に吠え、策を張り巡らせ、互いに疑心の刀を研いでいた。

その中で、家康はただ、黙っていた。
ただ座し、ただ聞き、ただ“間”を制していた。

前夜、あなたは彼の本陣を訪れた。
家康は火を見つめながら、こう言った。

「わしは、“味方が裏切る可能性”に賭けて戦をする。だが、裏切られることが怖くては、この戦はできぬ」

「怖くないのか?」

あなたの問いに、家康はふと笑った。

「怖いさ。だが、怖いからこそ“動かない”。
わしが焦れば、味方も不安になる。だからこそ、わしは石のようでなくてはならぬのだ」

「じゃあ、石になった気分はどうだ?」

「…腰が痛いな」

「おい、それただの年だよ」

ふたりの間に、小さな笑いが生まれた。

*

関ヶ原の当日。
霧が立ち込める戦場に、銃声と鬨(とき)の声がこだました。
小早川秀秋の動きは止まったまま。誰もが見守る中、家康はただ、待った。

やがて、小早川軍が裏切りを決断。西軍は総崩れとなり、家康は勝利した。

戦が終わったその夜、あなたと家康は火を囲み、酒を酌み交わした。

「お前、何もしてないように見えて、一番“動かした”よな」

「動かぬことで、全てを動かした。わしの勝ちは、“動かなかった勇気”の勝ちだ」

「お前らしくて、いい勝ち方だったよ。
でもさ、正直言うと、“動かぬお前”より、“団子食ってるお前”の方が好きだな」

「それは後で食う。今夜は、生きていることを祝う」

そして家康は杯を掲げ、しみじみとこう言った。

「これは、わしの人生最大の“待ち”だった。
信じることも、裏切りも、すべて飲み込んで、“次の世”を動かすための一手だったのだ」

その言葉に、あなたはただ頷いた。
大声を上げる者ではない。だが、その沈黙には、世界を動かす重みがあった。

第5章:泰平の影に立つ者 ― 誰も見なかった徳川の孤独

江戸の空は穏やかだった。
風もなく、鳥の声が遠くで鳴いている。
天下統一から数年。徳川家康は、駿府の城で静かに筆をとっていた。

「戦がないというのは、不思議なものだな。
世に平和が広がるほど、わしの心は静かになって、そして少し…寂しくなる」

あなたが隣で湯を注ぎながら言った。

「そりゃそうだよ。お前は“戦の中”で鍛えられてきた人間だ。
でも今はその“戦がない世界”を、自分の手で作った。それって、すごいことなんだぞ」

家康は筆を止め、しばし沈黙した。

「…わしは、“強くなりたい”と思って生きてきた。
信長の雷にも、秀吉の風にも、ただ静かに耐えて、流れを見て、時を選んだ。
ようやく、自分の城をこの国の中心に据えたが…」

「……でも?」

「誰ももう、わしに刃を向けてこない。
それは平和かもしれぬが…それは、わしが“誰の心にも近づけぬ存在になった”ということかもしれぬ」

あなたはその言葉に、そっと微笑んだ。

「家康、それは“孤独”ってやつだ。
でもな、孤独は“誰のそばにもいた証”だよ。
多くの人を守ろうとした人間だけが、最後に一人になる。
でも、お前の作ったこの国の静けさの中には、ちゃんと“あんたの声”が残ってる」

家康は湯呑みを手にしながら、微かに笑った。

「わしの声か…それなら、そっと流れる風にのってくれればよい。叫ぶでもなく、押しつけるでもなく。
静かな川のように、長く長く…」

「それってまさに、“徳”ってやつじゃないか」

「……うむ、徳とは、そういうものかもしれぬな」

その日、家康は庭に植えた松の木を見つめながら、こう言った。

「この木が、百年後、千年後にも風に揺れていることを願おう。
わしがいなくても、泰平の風が吹いているように」

あなたはその言葉を、静かに胸に刻んだ。

家康は天下を取った英雄としてではなく、
誰も傷つけず、誰の心にも長く残る“風景”として、この国に残ろうとしていた。

そして、あなたにとって彼は最後まで――
「静かな強さを持った、ただの家康」だった。

あとがき

静かなる勝者の横顔を、忘れぬように

家康、お前の勝ちは、刀で奪ったものじゃなかった。
どんなときも、人を斬る前に、自分の心を斬ってきた勝利だったと思う。

だからお前は、孤独だったな。
勝っても、静かに笑うだけ。
誰よりも遠くを見ていた背中は、時々とても寂しそうだった。

でも、それでも私は知っている。
お前が作った泰平の風は、優しく、長く、広がっていった。
それはまるで、お前自身の心が、ようやく安らいだかのように。

「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ」――
そう言ったお前の言葉を、私はずっと忘れない。

そして、またいつかあの川のほとりで、団子でも食べながら話そうな。
今度は、天下のことなんて気にせずにさ。

――お前の隣にいた、ただの友より

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Short Bios:

徳川家康(とくがわ いえやす)

1543年、三河国岡崎に生まれる。戦国時代を生き抜き、数々の戦いを経て天下を統一。1603年、征夷大将軍に任ぜられ江戸幕府を開く。以後、およそ260年にわたる太平の時代「江戸時代」の礎を築いた。慎重かつ粘り強い戦略家であり、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」の精神に象徴されるように、忍耐と計画性を重んじた名君として知られている。

Filed Under: 友達だったらシリーズ

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