
波平による冒頭のことば
ワシの名は磯野波平。齢78にして、スマートウォッチとやらに日々振り回されておる。
この物語は、昭和の香りを残した磯野家が──
令和という文明の奔流にどう立ち向かっているかを描いた記録である。
マスオは副業だ、セミナーだと浮き足立ち、
サザエはスマホ片手に“推し”に夢中。
カツオはAIに宿題をやらせ、
ワカメは制服に自由を求めておる。
そしてフネは、料理を作るだけでなく、動画まで撮って世界に発信しはじめた。
……なんとまぁ、時代とは騒がしいものじゃ。
だがワシは思うのだ。
どれほど時代が進もうとも、
人の心の根っこにある“思いやり”や“つながり”は変わらぬはずだと。
笑われようが、古臭かろうが、ワシはワシのままでよい。
家族とは、互いの違いを怒鳴りつつも、どこかで受け入れていくものなのじゃ。
この10の話は、そんなワシらの“令和の暮らし”の一コマにすぎん。
だが、読んでくれるおぬしにも、きっと何かが届くはずじゃ。
さぁ──
時代の波に、ちゃぶ台一枚で乗ってやろうではないか。
(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。)
カツオ、AIに宿題をやらせバレる!
【シーン1:磯野家の居間・夕方】
(カツオがタブレットをいじりながら、こっそりニヤついている)
カツオ(ひそひそ)
「ふっふっふ……ChatGPTくん、今日もよろしく頼むよ。“歴史の授業で明治維新について400字で説明して”っと…」
(画面に綺麗な文章がスッと表示される)
カツオ
「はえー!しかもめっちゃ分かりやすいじゃん!これをノートに写せば完璧〜」
(隣の部屋で勉強中のワカメがチラ見)
ワカメ(じと目)
「それ、自分で考えてないよね…?」
カツオ(あせる)
「い、いや、これは…時代の流れってやつ? 情報活用能力ってやつだよ!」
【シーン2:学校・翌日】
(教室でカツオが提出したノートを見た担任の先生が眉をひそめる)
先生
「ん?この明治維新の説明…昨日もまったく同じ文を3人が提出してたぞ?」
(クラス中がザワつく)
先生(鋭く)
「カツオ、お前…まさかAI使ったな?」
カツオ(タジタジ)
「え…そ、それは、その…みんなで勉強したんです…!」
【シーン3:磯野家の居間・夜】
(カツオがしょんぼり帰宅)
波平(怒)
「バカモンッ!!AIに任せてお前の脳みそは何をしておるんだ!!」
フネ(やさしく)
「道具は便利だけど、心まで任せてはいけませんよ」
サザエ
「カツオ、あんた“使われる人間”になるんじゃなくて、“使いこなす人間”になりなさい!」
マスオ(フォロー)
「でも逆に言えば、今からAIとどう付き合うかを学べば、カツオの未来は明るいよ」
ワカメ
「でも次はちゃんと自分の言葉で書こうね。バレバレだったよ、カツオのくせに文章うま過ぎたし」
(家族が笑う)
カツオ(反省しつつもニヤリ)
「じゃあ次は“カツオっぽい文体で書いて”って頼んでみようかな〜」
波平(怒)
「コラーーーーッ!!」
(オチの音楽「チャーン♪」)
【ナレーション:中島(カツオの友達)】
「便利な道具も、使い方しだい。カツオのAIライフは、まだまだ試行錯誤中みたいだよ!」
波平、スマートウォッチに怒る!
【シーン1:早朝の磯野家リビング】
(波平が腕時計型スマートウォッチをチラチラ見ながら、リビングをぐるぐる歩き回っている)
波平(ブツブツ)
「あと…300歩じゃ。よし、庭でもうひとまわりしてくるか!」
(フネが新聞を読みながら、ふと呟く)
フネ
「お父さん、最近“歩数様”に支配されてるみたいねぇ…」
【シーン2:朝食の時間】
(朝食を囲む磯野家。波平は嬉しそうにスマートウォッチを見せてくる)
波平
「見よ!昨日は1万2000歩じゃ!」
カツオ(皮肉っぽく)
「すごーい!じゃあ今日は1万3000歩目指そう!」
ワカメ
「でも、疲れて倒れたら意味ないと思うけど…」
サザエ
「スマートウォッチもほどほどにね〜、お父さん」
(波平、ムスっとして黙り込む)
【シーン3:事件発生!昼の磯野家の縁側】
(波平がウォーキングから帰ってきて、腕時計を確認)
波平
「……な、なに!?“本日0歩”だと!?バカな!!」
(スマートウォッチを何度もタップ)
波平(激怒)
「このポンコツがァァァァ!! 何のために歩いとると思っとるんじゃッ!!」
(スマートウォッチを外し、庭の植木鉢に投げつけようとする)
【シーン4:その夜・波平の部屋】
(マスオが波平の部屋に入ってくる)
マスオ
「お義父さん、歩いたことは身体がちゃんと覚えてますよ。数字が全てじゃありませんから」
(フネがそっとやってきて、昔の懐中時計を差し出す)
フネ
「あなた、この時計、昔ずっと大切にしてたじゃない。時間より“気持ち”を測ってくれたでしょ?」
(波平、少しハッとして時計を受け取る)
波平(しみじみ)
「……たしかに、あれは壊れても腹は立たなんだのう」
【シーン5:翌朝の公園】
(波平、懐中時計をポケットに、ゆっくり歩いている)
(すれ違う子どもが「何それ!時計?」と聞く)
波平
「これは“時間を見る”だけじゃない、“心を思い出す”道具なんじゃよ」
(その背中を見ながら、ナレーション)
【ナレーション:サザエ】
「便利さに惑わされない、波平さんの“マイペース”。デジタルもいいけれど、時には心の時計に耳を澄ませてみるのも、いいかもしれませんね」
(エンディングテーマ♪)
サザエさん、ママ友LINEで誤爆!
【シーン1:磯野家リビング・午後】
(サザエがスマホを片手に、慌ただしくフリック入力)
サザエ(ブツブツ)
「もう〜、ヨシコさんってばまた“手作り弁当”自慢よ。うちなんて冷食オンリーよ!」
(間違えて“ママ友グループ”にそのまま送信!)
LINEの表示:
『ヨシコさんってばまた“手作り弁当”自慢よ。うちなんて冷食オンリーよ!』
サザエ(固まる)
「……うそ。今の、グループに送った!?」
【シーン2:動揺するサザエ・キッチン】
(波平とフネが夕飯の準備をしている)
フネ
「どうしたの、サザエ。青ざめて…?」
サザエ(焦りながら)
「じ、事故です!LINE事故です!!今すぐ削除、今すぐ削除…!」
マスオ(登場)
「LINEは送信から数分以内なら削除できるんだよ、サザエくん」
サザエ
「今まさに、その数分が命取りなんですー!!」
【シーン3:その夜・グループトーク炎上】
(スマホに“既読”が次々に並ぶ)
LINE通知:ヨシコさん「冷食でも、愛情があればいいと思います」
(絶妙に優しくて怖い返信)
LINE通知:他のママ「そうそう、でもうちはオーガニックにしてるよ〜」
(サザエ、泣きそう)
サザエ(つぶやく)
「も、もう学校行けない…」
【シーン4:ワカメの励まし】
(ワカメが静かに近づく)
ワカメ
「ママさ、言いたいことは誰だってあるよ。でも言う場所とタイミングが大事なんだよ」
サザエ(ぐうの音も出ない)
「娘に説教される日が来るとは…」
【シーン5:翌日・公園での和解】
(サザエとヨシコさんがぎこちなくベンチに座っている)
サザエ
「…ごめんなさい、ヨシコさん。本音がつい…」
ヨシコさん(にっこり)
「私も言い過ぎちゃってたかも。気にしてたんだよね、皆の目」
(ふたり、笑い合う)
【ナレーション:マスオ】
「時代は変わっても、人との距離感は難しいもの。だけど、素直な“ごめんね”があれば、関係は意外とあっさり修復できるのかもしれません」
(エンディングテーマ♪)
マスオ、副業セミナーにハマる?
【シーン1:磯野家リビング・夜】
(マスオがパソコンを開いて、真剣な顔で何かを見ている)
マスオ(目を輝かせながら)
「…副業で月10万円!初期投資なし!人生変わるって…!」
(背後からサザエがのぞき込む)
サザエ
「え?“人生逆転!誰でも稼げるオンラインセミナー”?なんだか怪しくない?」
マスオ(ちょっとムキになって)
「いやいや、今の時代は“複数収入源”が常識だよ。時代はパラレルインカム!」
(波平が新聞を読みながら一言)
波平
「本業もちゃんとできん者が、副業とは片腹痛いわ」
【シーン2:セミナー参加・翌日夜】
(マスオ、イヤホンをつけてノートを取りながらセミナーを受講中)
セミナー講師(画面越しに熱弁)
「今こそ、あなたの“経済的自由”を勝ち取るときです!“稼げる人は行動が違う!”」
(マスオ、すっかりその気になる)
マスオ(興奮して)
「なるほど…!“成功者マインド”か…!」
【シーン3:家族会議・その夜】
(マスオが「プレミアムコース登録:49,800円」のページを見ていると、サザエが止めに入る)
サザエ(本気モード)
「待ってマスオさん、それ本当に信用していいの?」
ワカメ
「それ、検索したら“怪しいセミナー”って書かれてるよ…」
フネ
「“簡単に稼げる”って言葉ほど、怖いものはありませんよ」
(マスオ、しばらく沈黙してから、ため息)
マスオ(しょんぼり)
「……ちょっと夢見たかっただけなんだ。毎月の支払いも多いし、家族のために何かできたらって…」
【シーン4:波平の励まし】
(波平が新聞をたたんで、穏やかに話す)
波平
「お前の一番の“副業”は、家族を大事にすることじゃよ。
それができれば、本業も副業も間違えん」
マスオ(感動)
「……お義父さん…!」
【シーン5:ラストシーン・別の副業へ】
(後日、マスオが近所の写真コンテストで優勝する)
サザエ
「“家族の日常”をテーマにした写真が選ばれたんだって!」
カツオ
「えー!スマホで撮ったやつじゃん!副業になっちゃうかも?」
マスオ(笑顔)
「地に足つけて、小さな“好き”から始めるのが一番だね」
【ナレーション:フネ】
「焦りの気持ちは誰にでもあるけれど、目の前の大切なものに気づくこと。それが本当の豊かさへの第一歩かもしれませんね」
(エンディングテーマ♪)
ワカメ、ジェンダーフリー制服に挑戦!
【シーン1:磯野家の朝・登校前】
(ワカメ、小学校の制服に“ズボンスタイル”を合わせて鏡の前に立っている)
ワカメ(独り言)
「うん…似合う!これが“私らしさ”ってやつかな!」
(サザエが驚いてやってくる)
サザエ
「えっ!?今日スカートじゃなくてズボンなの?」
ワカメ(きっぱり)
「うちの学校、“ジェンダーフリー制服”始まったでしょ。選んでもいいって書いてあったよ」
(サザエ、ちょっと戸惑い気味)
サザエ
「う、うん…そうだけど…」
【シーン2:学校・教室にて】
(教室で、ワカメがズボン姿で登場すると、クラスがざわつく)
女子生徒A
「えっ、ワカメちゃんズボン!?」
男子生徒B(茶化し気味)
「男みたいじゃん!」
(ワカメ、一瞬うつむくが、深呼吸して)
ワカメ
「“男みたい”とか関係ないよ。私はこれがいいから選んだの!」
(担任の先生が静かにフォロー)
先生
「みんな、それぞれの“好き”を尊重できる人になろうな」
【シーン3:磯野家・夕食時】
(ワカメが元気なく帰宅。家族に囲まれてご飯を食べる)
フネ
「今日はどうだったの?」
ワカメ(少し泣きそう)
「ちょっと…変って言われた。でも、あきらめたくない」
波平(厳しい顔で)
「……お前がそう思うなら、貫きなさい。
周りに理解されるには、まず自分がブレないことじゃ」
マスオ
「勇気ある行動だったと思うよ。僕も昔、“変わり者”って言われたことあるし」
カツオ(冗談ぽく)
「俺なんて毎日変な人扱いだよ〜! ワカメ、仲間だな!」
(みんな笑い出す。ワカメもようやく笑顔に)
【シーン4:学校・一週間後】
(数人の女子がワカメのズボンスタイルを見て)
女子生徒C
「ワカメちゃん、それオシャレだね。私もやってみようかな」
(ワカメ、驚いて目を丸くする)
ワカメ(心の声)
「自分らしくいるって、誰かの勇気になるかもしれないんだ」
【ナレーション:サザエ】
「“変わる勇気”と“見守る優しさ”。家族が支え合えば、どんな一歩も力強く踏み出せるのかもしれませんね」
(エンディングテーマ♪)
カツオ、YouTubeデビューでバズる!
【シーン1:カツオの部屋・夕方】
(カツオがスマホを縦にセットして、元気に話しかけている)
カツオ(カメラに向かって)
「はいどうも〜!磯野カツオです!今日の“兄妹ドッキリ選手権”、始めるぞ〜!」
(ワカメの部屋に忍び込もうとするが…)
ワカメ(怒鳴る)
「また来たなぁ!やめてって言ったでしょ!」
(カメラ前でビンタされるカツオ)
【シーン2:翌日・学校】
(友達がスマホを見ながら)
中島
「カツオ!昨日の動画、バズってるぞ!5万回再生!」
早川さん
「“カツオ、妹にガチギレされる動画”って…コメント欄もすごいよ!」
(カツオ、ドヤ顔)
カツオ
「いや〜、これが“時代の波”ってやつだね!」
【シーン3:磯野家・夜】
(家族全員がテーブルでカツオを囲む)
サザエ
「カツオ!動画でワカメを勝手に映したでしょ!」
ワカメ
「ほんと迷惑なんだけど!」
波平(激怒)
「バカモンッ!!再生数より、家族の信頼のほうが重いわ!」
マスオ
「でも、カツオが何かに夢中になってるのは正直すごいと思うよ。方向性を間違えなければ…ね」
【シーン4:翌週・カツオのリベンジ企画】
(“妹に迷惑をかけた兄の反省ドキュメンタリー”をテーマにした新作動画)
カツオ(動画内)
「人に笑ってもらうために大事なのは、優しさと許可を得ることだって、家族に教わりました」
(エンディングに、ワカメとの握手シーン。コメント欄が優しいコメントで溢れる)
【シーン5:夕暮れの縁側】
(カツオ、マスオと話しながら)
カツオ
「ちゃんと考えて発信するって、思ってたより難しいな…」
マスオ
「でもカツオくんなら大丈夫。“伝える力”は君の武器だからね」
(カツオ、照れくさそうに笑う)
【ナレーション:波平】
「夢を持つことは素晴らしい。だが、その夢が誰かを傷つけるなら、それはただの自己満足じゃ。
“思いやり”を添えること。それが大人への第一歩じゃぞ」
(エンディングテーマ♪)
波平とフネ、スマホデビュー奮闘記!
【シーン1:磯野家リビング・朝】
(波平がテレビで「高齢者向けスマホ教室」のCMを見ている)
ナレーション(CM)
「スマホで孫と写真共有!便利で安心な“らくらくスマホ”!」
波平(むむ…と興味を持つ)
「……フネや。ワシもスマホとやら、使ってみようかのう」
フネ(やや不安げ)
「あなたが? ええけど、また“文明の利器め!”って怒らないでくださいよ?」
【シーン2:家電量販店】
(波平とフネがカタログを真剣に見ている。若い店員がタジタジ)
店員(やさしく)
「こちらのスマホはボタンが大きくて、LINEも音声入力できますよ〜」
波平(なぜか怒り口調)
「その“LINE”とやらは何だ? ワシは手紙を出す派じゃ!」
フネ(なだめる)
「でも、遠くのノリスケさんと写真送れるのは嬉しいわよね」
【シーン3:磯野家の午後】
(波平がLINEで写真を送ろうと悪戦苦闘)
波平
「どこだ!?“送信”ボタンはどこなんじゃ!?」
(間違えて写真を30枚連続送信)
波平(叫ぶ)
「バカモン!スマホが暴走したぞ!!」
フネ(くすくす笑いながら)
「あなたの指が暴走してるのよ」
(カツオとワカメ、爆笑)
【シーン4:夜、波平とフネの会話】
(2人でLINEのスタンプを送り合い、楽しんでいる)
波平
「このタコの絵はなんじゃ…“おつかれ”の意味か?」
フネ
「そう。あなたにぴったりでしょ?(にこっ)」
(ふたりで微笑み合い、静かな時間が流れる)
【シーン5:ラスト・翌朝のリビング】
(波平がスマホでニュースを見ながら言う)
波平
「便利なものじゃな…ワシも“情報武士”になれるかもしれん」
(カツオが驚きの顔)
カツオ
「“サイバー波平”爆誕だー!」
【ナレーション:サザエ】
「新しいことに挑戦するのに、年齢は関係ありません。大切なのは、“やってみよう”と思うその心なのかもしれませんね」
(エンディングテーマ♪)
サザエ、推し活で徹夜!?
【シーン1:深夜1時・サザエの部屋】
(サザエが薄暗い部屋でスマホ片手に緊張)
サザエ(小声)
「あと1分…あと1分でグッズ販売開始…!今日こそ“限定アクリルスタンド”ゲットするわよ…!」
(スマホ画面に「販売開始!」の文字が表示される)
サザエ(絶叫)
「きたーーっ!…あ、アクセス集中!?ぐぬぬ…!」
(背後で寝ぼけたマスオが入ってくる)
マスオ
「サザエくん、なにしてるの? こんな時間に…」
サザエ(目をギラつかせながら)
「マスオさん…これは、戦いなのよ…推しとの“運命の接続”なの…!」
【シーン2:翌朝・朝食の食卓】
(サザエ、顔色真っ青でフラフラと座る)
フネ
「サザエ、顔が…まるで幽霊みたいですよ」
カツオ
「えっ、昨日の夜、ずっと“ああ〜!”とか“うそ〜!”とか叫んでたの聞こえたけど…」
ワカメ
「ママ、もしかして…“徹夜推し活”?(冷静)」
波平(ピシャリ)
「バカモンッ!主婦の朝は戦場じゃぞ!!“推し”より“干物”を見よッ!」
【シーン3:ママ友たちとの立ち話】
(サザエがふらっと立ち寄ると、他のママ友たちも“推し疲れ”の様子)
ママ友A
「ねえ、サザエさん…寝不足で頭まわんない…昨日のグッズ、秒で完売よ…」
ママ友B
「私は旦那にバレて“推し隠し用クローゼット”作ったのよ…」
サザエ(感動)
「同志が…いた…!」
(3人でうなずき合う)
【シーン4:夜の磯野家・親子の対話】
(ワカメがサザエのベッドにお茶を持ってくる)
ワカメ
「ママさ、好きなものに夢中になるのって素敵だけど、ちゃんと寝てね。推しも心配しちゃうよ?」
サザエ(じーん)
「ありがとう…うちの推し、ワカメだったかも…(泣)」
【シーン5:後日・リビングでの“新推し活”】
(サザエがワカメと一緒に、推しアニメの手作り缶バッジを作っている)
サザエ
「手作りって、意外と楽しいわね!」
カツオ(からかいながら)
「ママ、今度“手芸系オタク”に転生〜?」
波平(新聞をたたみながら)
「それで健康を守れるなら、ワシも“推し”を見つけるかの…」
(全員が笑う)
【ナレーション:マスオ】
「“推し”がいるって、心が前向きになる。だけど、“自分の暮らし”も大事にしてこそ、推し活も本当に輝くんじゃないかな…って、サザエくんを見て思いました」
(エンディングテーマ♪)
フネ、料理動画チャンネル開設!
【シーン1:磯野家キッチン・昼下がり】
(フネが丁寧にだし巻き卵を巻いている。ワカメがスマホでそれを撮影)
ワカメ
「おばあちゃん、その巻き方すっごく上手!動画にしようよ!」
フネ(戸惑いながら)
「えぇ〜? 私なんかの料理、誰が見るのかしら…」
ワカメ
「“おばあちゃんの知恵チャンネル”とか絶対人気出るって!今は“癒し動画”が求められてるの!」
【シーン2:カツオ、編集担当に!?】
(カツオがパソコンの前で真剣な顔)
カツオ
「この“じゅわ~”って音、最高じゃん…!ここに“登録よろしくね”の字幕を入れて…」
サザエ
「カツオがまさか編集担当になるとはねぇ〜!」
マスオ
「“磯野家プロダクション”、誕生かも!?」
【シーン3:初投稿の日・緊張するフネ】
(フネ、ワカメと並んでスマホ画面を見つめる)
フネ
「…変なコメントが来たらどうしよう…“地味”とか“昭和”とか言われたら…」
ワカメ(にっこり)
「大丈夫。“昭和”が今、逆に“エモい”んだよ」
(投稿ボタン、ポチッ)
【シーン4:反響爆発!コメント欄】
(翌日、再生回数1万超え)
コメント欄:
「こんな丁寧な卵焼き見たことない…」
「おばあちゃんの声に癒される…涙出た」
「うちの母にも教えたい!」
フネ(驚きながら)
「……なんだか、皆さんの台所にちょっとお邪魔してる気分ねぇ」
【シーン5:波平も参戦?】
(波平、味噌汁を作っている)
波平
「ワシの“だしの引き方講座”も撮ってみるかのう」
サザエ(茶化して)
「いいわね、“ちゃぶ台の哲学”コーナー付きで!」
【ナレーション:ワカメ】
「温かい味と、温かい言葉。画面越しでも伝わるものがある。
それは、家族でつくる何よりのレシピかもしれませんね」
(エンディングテーマ♪)
磯野家、リモート家族会議で大論争!
【シーン1:日曜の午後・磯野家リビング】
(マスオがノートパソコンを開いて提案)
マスオ
「今度の親戚会議、Zoomでやりましょう!みんなのスケジュールが合わないから、これが一番効率的です!」
波平(難色)
「ズーム?ズム?そんなもんで会議などできるのか!」
サザエ
「でも便利よ〜、どこにいても顔が見られるんだから!」
フネ
「じゃあ、試しに“磯野家・週末家族会議”をやってみますか?」
【シーン2:各部屋からログイン開始】
(波平はタブレットを逆さまに持ち、フネはミュートボタンが分からず大混乱)
波平
「……誰もワシの声が聞こえん!音が出とらんぞ!」
カツオ
「じいちゃん、それマイク“オン”になってない!」
サザエ(笑いながら)
「ママの声が二重に聞こえてる!あ、スマホとパソコン両方入ってるのね!」
(画面が4分割、全員の顔が映るが…)
【シーン3:議題が全然進まない】
マスオ
「では、まず“来月の親戚集まりの日程”ですが──」
波平
「ワシはやっぱり“対面”がよい!茶菓子が出ぬ会議など味気ない!」
カツオ
「僕はオンラインのほうがサボれるから賛成〜」
ワカメ(冷静)
「もう、それ議題ズレてません?」
(画面内、皆が同時に話し出し、誰も聞こえず“音声カオス”)
【シーン4:フネの静かな一言】
(画面の喧騒の中で、フネが手書きのメモをカメラにかざす)
フネのメモ:
「まずは“聞くこと”から始めませんか?」
(しん…と静まり、皆がフネを見る)
波平
「……うむ。フネの言う通りじゃ」
【シーン5:リモートでもつながる心】
(その後はスムーズに話が進み、笑い声も交じる)
サザエ
「最初はどうなるかと思ったけど、意外といいわね〜!」
マスオ
「家族って、Wi-Fiよりも“心の通信環境”が大事ってことですね!」
カツオ(ニヤリ)
「その言い方、今度動画のネタに使おうっと」
【ナレーション:波平】
「顔を合わせるだけが“つながり”ではない。
だが、声に耳を傾け、心を寄せること。それはどんな時代でも家族の基本なのじゃ」
(エンディングテーマ♪)
波平の結びのことば
時代とは、まことに面白い。
紙に墨を落とす時代から、指先で世界とつながる時代へ──
それでも、家族というものは、どこかで“不器用な愛”を続けておる。
便利さの裏にある孤独、
自由の陰にある迷い、
そして、笑いの中にあるささやかな支え合い。
この十の物語を通して、ワシは再確認したのだ。
“昔がよかった”と嘆くより、
“今をどう笑うか”を考えるほうが、はるかに粋だとな。
正直に言おう。
ワシは今でも、スマホの操作に手こずる。
Zoomは“ズム”と読んでしまうし、AIのことは半分妖怪のように思っておる。
だが──
家族が笑っている限り、
ワシはこれからも、怒って、笑って、生きていこう。
令和の波は、きっとまだまだ高い。
だが、ちゃぶ台の上にある味噌汁の湯気は、いつの時代も変わらんのじゃ。
この作品を最後まで見届けてくれたそこのおぬし。
ありがとな。
次に会うときは、スマホの使い方ぐらい、マスターしておくとしようかの。
──磯野波平
Short Bios:
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