
まえがき|平岩弓枝
「筆を持つということ」
物語を書くというのは、ひとりで歩く長い道のようなものでした。
人に言葉を届けたいと思いながらも、そのたびに、自分の未熟さと、言葉の限界に向き合わねばなりませんでした。
この五つの章は、私の歩んできた道の途中で、ふと立ち止まり、静かに空を仰いだような時間の記録です。
華やかな拍手もあれば、書き直しに追われる夜もありました。
物語を閉じるときの静寂は、最初の一文を書くときよりも、ずっと深く、自分を試すものでした。
読んでくださるあなたが、もしご自身の「静けさ」と向き合う時間をお持ちでしたら――
このささやかな物語が、心の片隅でそっと寄り添うものになれば、それ以上の喜びはございません。
(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。)
光の中で一人きり ― 直木賞受賞後の静けさ

Scene 1:授賞式の夜、華やかさの裏で
東京會舘の大広間。まばゆい照明と祝福の拍手に囲まれながら、壇上に立つ彼女の姿は静かだった。笑顔を浮かべてはいたが、その瞳にはどこか遠くを見るような寂しさがあった。
平岩弓枝:「光を浴びれば浴びるほど、自分の輪郭が曖昧になるの。こんなに祝福されているのに、なぜか心がぽっかりしてるのよ。」
あなた:「弓枝、あなたが書いてきた物語は、本当にあなた自身の“芯”から出てきたものだから。注目の光は、あなたの内側を照らすものじゃなくて、外側を照らしてるだけ。」
平岩弓枝:「“戦後最年少の女性受賞者”って言われるけど、私はそんな枠で見られたくなかった。ただ書きたかっただけなのに…」
あなた:「だったら、あなたが書きたい言葉を、これからも自分の言葉で紡いでいこう。光に飲まれる必要なんてないよ。」
彼女はふっと肩の力を抜き、胸に手を当てた。
Scene 2:帰りのタクシー、言葉少なに
授賞式の帰り道。夜の都心を走るタクシーの窓から、東京タワーの灯りがちらちらと見え隠れしていた。
平岩弓枝:「“作家”として認められるって、もっと嬉しいものかと思ってた。でも今の私は…空っぽなの。」
あなた:「もしかしたら、“認められる”ってことは、“期待される”ことでもあるから、重く感じるのかもね。」
平岩弓枝:「賞をもらったら、もっと自由に書けると思ってたの。でも、逆に筆が進まなくなってるのよ。」
あなた:「自由って、誰かがくれるものじゃない。あなたが自分の中に取り戻すものだよ。」
外の夜景は流れ続けていたが、車内の空気は、どこか凛と澄んでいた。
Scene 3:書斎の机、白紙の原稿用紙
数日後、自宅の書斎。机の上には真っ白な原稿用紙が積まれ、万年筆はキャップを閉じたままだった。
平岩弓枝:「筆を持とうとすると、いろんな声が頭の中で響くの。“期待に応えなきゃ”とか“失望させないように”とか…」
あなた:「初めて書いたときのこと、覚えてる?誰の期待も気にせず、ただ“書きたい”って思った気持ちを。」
平岩弓枝:「あの頃の私は、世界に向かって言葉を投げてた。今の私は、世界の顔色をうかがっている気がするの。」
あなた:「ならもう一度、あの静かな場所に戻ってみよう。書くことで、あなたは“あなた”に戻れるはず。」
彼女は原稿用紙に手を伸ばし、ペンをそっと持ち直した。
Scene 4:公園のベンチ、風の匂い
代々木公園。春の風が木々を揺らし、ベンチに並んで座るふたりの肩に花びらが舞い降りた。
平岩弓枝:「“おめでとう”って言葉が、こんなにも遠く感じるなんて思わなかったの。むしろ、“お疲れさま”って言ってほしい気分。」
あなた:「じゃあ言わせて。弓枝、お疲れさま。本当によくやったよ。」
平岩弓枝:「ありがとう…。賞をもらったことより、今こうして風に吹かれてることのほうが、よっぽど大切に思えるの。」
あなた:「書くことも、こうして感じることも、どちらもあなたにとっての“表現”だよ。」
彼女は深く息を吸い込み、目を閉じた。胸の奥に、ようやく新しい物語の灯が灯った。
物語が壊れていく ― 脚本家としての葛藤と現実

Scene 1:深夜のスタジオ、書き直しの嵐
テレビ局の編集室。深夜2時。原稿には無数の赤ペンの跡、空気は紙の擦れる音と蛍光灯の唸りで満ちていた。あなたが差し入れたおにぎりは、手をつけられないまま冷たくなっている。
平岩弓枝:「“主婦らしく”“昭和っぽく”ってまた言われたわ…書き直すたびに、登場人物の声がかき消されていくの。」
あなた:「まるで誰かの記憶を書き換えるみたいだね。生きてたキャラクターが、どんどん遠くなる。」
平岩弓枝:「テレビの“都合”に合わせるうちに、私の筆が誰かの手袋みたいになっていくのがわかるのよ。」
あなた:「でもその中で、あなたしか書けない“温度”が生まれてる。それを必要としてる人は、きっといるよ。」
彼女は原稿の隅をじっと見つめ、小さくため息を吐いた。ペン先がかすかに震えていた。
Scene 2:楽屋裏で見た、女優の涙
収録が終わった後の舞台裏。若い女優が照明の消えた楽屋の隅で、鏡越しに目元を拭っていた。
平岩弓枝:「あの子、私の脚本を信じてくれていたのよ。それが一言で消されて、残ったのは悔しさだけ…。」
あなた:「涙が出たのは、言葉がちゃんと届いてた証拠。あなたの台詞に心を預けてたんだね。」
平岩弓枝:「もう一度、“あなたの声で話したい”って思えるような言葉を書いてあげたいの。」
あなた:「きっとその日が来る。あなたの言葉を、また信じてくれるよ。」
彼女は小さくうなずきながら、袖口をぎゅっと握りしめた。
Scene 3:放送日の朝、ひとりの手紙
翌朝、編集部から届いた封筒の中に、一通の手紙があった。筆圧の強い文字で、こう綴られていた——「母を思い出しました。あなたのドラマで、許すことができました。」
平岩弓枝:「誰かの人生に、こんなふうに静かに触れられたのなら…それだけで書いた意味があるのね。」
あなた:「数字には映らないけど、心に届いた証がここにある。何よりも大事な“視聴率”だよ。」
平岩弓枝:「一通だけでも、こんなふうに届くなら、私はまだ言葉を紡ぎ続けていきたい。」
あなた:「その想いがある限り、あなたの作品は誰かの心を灯し続ける。」
彼女はその手紙を胸に当て、目を閉じてしばらくじっとしていた。
Scene 4:地方の旅館、風呂あがりの会話
温泉街の静かな旅館。浴衣姿で縁側に座る二人。虫の音が耳に心地よく響き、夜風が湯上がりの肌を優しく撫でた。
平岩弓枝:「こういう場所に来るとね、言葉が自然と降りてくるの。畳のにおいや虫の音が台詞の種になるのよ。」
あなた:「スタジオの空気じゃ出てこない言葉だね。人の暮らしの匂いが、台詞をあたたかくしてる。」
平岩弓枝:「私はやっぱり、日常に寄り添う言葉を書いていたい。笑いや、祈りや、ほっとする沈黙まで。」
あなた:「だからこそ、あなたの物語は誰かの“帰る場所”になるんだね。」
彼女は風鈴の音に耳を澄ませるように目を細めた。
Scene 5:編集会議後の空室、あなたと二人きり
会議室は静まり返り、椅子のきしむ音さえもやけに大きく響いた。採用されなかった企画書がテーブルの上に置かれていた。
平岩弓枝:「“家族の絆を描く話はもう古い”って言われたわ。…何十年も向き合ってきたものなのに。」
あなた:「古くなることと、価値を失うことは違うよ。必要としてる人は、今もたくさんいる。」
平岩弓枝:「あなたにそう言ってもらえると、筆を握る手が少しだけ強くなった気がする。」
あなた:「なら今夜も、静かにその人たちの声を紙の上に戻してあげよう。」
彼女は静かにペンを取り、真新しい原稿用紙の1枚目を開いた。物語は、また生まれようとしていた。
祈りの中の静寂 ― 家族との別れ、見えない涙の日々

Scene 1:病室のカーテン越しに揺れる光
晩秋の夕暮れ。都内の病院の一室。薄く揺れるカーテン越しに差し込む光が、父の静かな寝息とともに揺れていた。彼女は父の手をそっと握り、声にならぬ想いを胸にしまっていた。
平岩弓枝:「父はね、祈るように生きてきた人だったの。多くを語らないけれど、背中がすべてを教えてくれた。」
あなた:「その静かな背中が、あなたの物語の中にもずっと生きてた気がするよ。言葉の奥に、祈りのような静けさがある。」
平岩弓枝:「書いてるとき、ふと父の声が聞こえる瞬間があったの。気づけば、父の影を登場人物に重ねていたのかもしれない。」
あなた:「きっと今も、そっと見守ってくれてるね。何も言わずに、ただ優しく。」
彼女は父の手をそっと両手で包み込み、閉じられた瞳をじっと見つめた。
Scene 2:代々木八幡宮の石段で
葬儀を終えた午後、彼女は代々木八幡宮を一人で訪れた。父が宮司を務めていた場所。石段をゆっくりと登る足音が、落ち葉を踏む音と重なった。
平岩弓枝:「小さい頃、父と一緒にこの石段を登ったの。“負けないぞ”って必死になってたあの頃が、急に懐かしくて…」
あなた:「今日は競争じゃないね。想いを一段ずつ踏みしめながら、登っていけばいい。」
平岩弓枝:「悲しみって、涙だけじゃないのね。懐かしさの中に、どうしようもない寂しさが溶けてる。」
あなた:「それは、ちゃんと愛した証拠だよ。心がちゃんと覚えてるから、痛むんだよ。」
鳥居をくぐる風が、そっと彼女の髪を揺らした。
Scene 3:書斎で広げた古い家族写真
数日後、自宅の書斎。彼女はふと引き出しから家族のアルバムを取り出していた。白黒の写真に写る、幼い自分と微笑む両親。
平岩弓枝:「母の笑顔、父の浴衣の香り…ページをめくるたびに、物語じゃなくて、生活の記憶があふれてくるの。」
あなた:「きっとあなたが書いてきたすべての物語に、その“暮らしのにおい”が宿ってるんだね。」
平岩弓枝:「忘れないように書いてきたのかも。家族がいたということを、物語という形に閉じ込めるように。」
あなた:「そしてそれが、読む人の“遠い記憶”に優しく触れてるんだと思う。」
彼女は静かにアルバムを閉じ、両手でそっと抱きしめた。
Scene 4:お正月の朝、一人静かに鏡餅を供える
年が明けた静かな朝。仏間の窓から差し込むやわらかな陽の光。彼女は一人、父母の遺影の前に鏡餅とお茶を供えていた。
平岩弓枝:「新しい年が来ても、父と母がいないことだけは、まだ体がうまく馴染んでくれないの。」
あなた:「でもね、こうして手を合わせてるあなたの姿の中に、ちゃんとお二人はいると思うよ。」
平岩弓枝:「そうね…私がこうして静かに生きていること自体が、二人への感謝かもしれない。」
あなた:「うん。そして今日からまた、あなたの中で生き続けるんだよ。言葉とともに。」
彼女はそっと目を閉じ、深く息を吸い込んだ。新しい年の空気には、ほんの少しだけ涙の味が混じっていた。
さらば、かわせみ ― 物語との別れ、“御宿かわせみ”に終止符を打つ日

Scene 1:最終巻の構想ノート、無言のページ
午後の書斎。窓辺に差し込む陽光が、机に開かれた一冊のノートを照らしている。表紙には細く「御宿かわせみ 最終巻」と書かれていたが、ページはまだ真っ白だった。
平岩弓枝:「ここまで書いてきたのに、最後の一行がどうしても書けないの。彼らと本当に別れてしまう気がして。」
あなた:「でもね、終わらせることは、永遠に閉じることじゃない。むしろ、読者の心の中で生きていく時間が始まるんだよ。」
平岩弓枝:「物語を閉じるって、産んだ命を手放すような感覚なの。私にとっては、家族みたいな存在だったから…」
あなた:「なら、丁寧に送り出してあげようよ。その優しさが、最終巻の余韻になるはず。」
彼女は深くうなずき、ノートの1ページ目にそっと手を添えた。
Scene 2:古書店で見つけた第一巻
ある日の神田。ふたりで立ち寄った古書店。棚の隅に、黄ばみかけた『御宿かわせみ』の初版本を見つけた。
平岩弓枝:「あの頃は、“最後まで続けられるかしら”なんて思いながら書いていたのに…まさか、こんなに長く付き合うことになるなんてね。」
あなた:「でも最初から、るいと東吾の会話には、ちゃんと今につながる“息遣い”があったよ。物語が生きてたからこそ、こんなにも続いたんだと思う。」
平岩弓枝:「彼らと生きる時間が、私の人生の一部になってたのよね。もはや物語じゃなく、人生だったのかも。」
あなた:「だから、今も誰かの心で彼らは息をしてる。あなたの人生は、もう一つの“江戸”を生んだんだよ。」
彼女は初版本を胸に抱え、そっと目を閉じた。
Scene 3:ファンの手紙、束の重み
自宅に届いた段ボール。中にはファンからの手紙がぎっしり詰まっていた。ある便箋にはこう綴られていた――「るいと東吾が寄り添ってくれたから、私は乗り越えられました。」
平岩弓枝:「たくさんの人が、私の知らないところで、彼らと人生を重ねてくれてたんだね…」
あなた:「きっとそれぞれの中に、東吾さんが、るいさんが、生きてるんだ。物語が人の心の“居場所”になるって、すごいことだよ。」
平岩弓枝:「なんて幸せな作家なのかしら。私は、こんなふうに読者に支えられていたなんて。」
あなた:「だから、最後の一文には、彼らだけじゃなく、読者への“ありがとう”も込めてあげて。」
彼女は手紙を一通一通撫でるように読み、しばらく目を閉じていた。
Scene 4:春の朝、最後の一文
季節は春。代々木の空に、桜が舞っていた。彼女は万年筆を手に、最終話の原稿用紙に静かに向かっていた。
平岩弓枝:「ようやく見つかったの。“静かに暖簾を下ろした”って、この言葉が私の別れの挨拶になったのよ。」
あなた:「東吾さんとるいにぴったりの結び方だね。劇的じゃなくても、余韻のある別れ。」
平岩弓枝:「私自身もそうありたいの。静かに筆を置いて、でも読者の心の中で微笑んでいたい。」
あなた:「きっと今、彼らは暖簾の奥で、並んでお茶を飲みながらあなたに“ありがとう”って言ってるよ。」
原稿を書き終えた彼女は、ゆっくりと机に伏し、しばらく春の光を受けながら、静かにまどろんだ。
筆を置く日、静けさとともに ― 最後の物語を超えて

Scene 1:ある冬の午後、万年筆の重み
穏やかな冬の午後。彼女の部屋に入ると、机の上にひとつの小箱が置かれていた。中には、長年使い続けてきた黒い万年筆が静かに横たわっていた。
平岩弓枝:「この万年筆、最近ずいぶん重く感じるの。手じゃなくて…心の奥の方が、そっと“もういいよ”って言ってくるの。」
あなた:「それだけ、たくさんの物語を生んできたんだね。その重みは、あなたの歩いてきた時間そのものだよ。」
平岩弓枝:「言葉が降りてこなくなったの。不安よりも、静けさのほうが先に訪れた。」
あなた:「それはきっと、“終わることへの準備”が静かに始まっていた証なのかもしれないね。」
彼女はそっとペンを戻し、小箱のふたを優しく閉じた。
Scene 2:編集者との最後のやりとり
最後の原稿を渡した日、ベテラン編集者は彼女に深く一礼し、黙って両手で原稿を受け取った。別れの言葉は、ひとことだけだった。
平岩弓枝:「“続きは?”って聞かれなかったの。…あの沈黙に、長い旅の終わりを感じたのよ。」
あなた:「それは敬意だと思う。言葉を足すことなく、あなたの筆を静かに讃えていたんだよ。」
平岩弓枝:「彼の手のぬくもりが、紙越しに伝わったとき…やっと、“終わった”って実感したの。」
あなた:「きっとその原稿は、あなたが愛した登場人物たちと一緒に、大切に保管されるね。」
彼女は黙って微笑み、編集者の後ろ姿に静かに頭を下げた。
Scene 3:近所の図書館で見た読者の姿
ある日ふと立ち寄った図書館。児童書の棚の前で、小学生くらいの女の子が『御宿かわせみ』の文庫本を一心に読んでいた。
平岩弓枝:「ページをめくるたびに笑ったり、眉をひそめたりしててね。まるで、東吾とるいが今もそこで生きてるようだったわ。」
あなた:「物語って、書き手の手を離れてからこそ、本当の旅を始めるんだね。」
平岩弓枝:「そうね。私がもう書かなくても、彼らは読者の人生を歩いてくれる。…それが嬉しかった。」
あなた:「それって、永遠に語り継がれる作品の証だと思うよ。」
彼女は棚の奥からそっと微笑み、少女の読書を邪魔しないように静かにその場を去った。
Scene 4:春の庭、椿とともに
春。彼女の庭に、かつてあなたが届けた椿と同じ種類の花が咲いていた。赤く、静かで、芯の強さを感じさせる花だった。
平岩弓枝:「最初にこの椿を見たとき、何気ない一輪が、私の物語を動かしたのよ。…不思議よね。」
あなた:「それがすべての始まりだったね。静かな感動が、いつしか300話を超える旅になった。」
平岩弓枝:「筆を置いた今、ようやく“読む人”の気持ちに近づける気がするの。風や光のように、言葉を味わいたいの。」
あなた:「これからは、“書く人”から“生きる人”としてのあなたに、物語が寄り添ってくれるんだと思う。」
彼女はゆっくりと椿のそばに腰を下ろし、空を見上げながら静かに目を閉じた。
あとがき|平岩弓枝
「書かない時間の中で」
私はこれまで、「書くこと」で人とつながってきました。
けれど、筆を置いた今、ようやく「書かないこと」の中にも、静かな対話があるのだと気づきました。
誰かの心に灯がともるようにと願ってきた物語も、
もしかすると、読んでくださる方の人生に、ほんのひとしずくの余韻を残せたのなら――
それだけで、私は書き続けてきてよかったのだと思います。
静けさの中に耳を澄ます日々も、悪くないものです。
あなたの心に、やさしい物語がいつまでも響きますように。
Short Bios:
平岩弓枝(ひらいわ・ゆみえ)
直木賞受賞作家。昭和から平成、令和にかけて活躍した女性文学者であり、時代小説『御宿かわせみ』シリーズで多くの読者の心をつかんだ。脚本家としても知られ、人生の機微を描く温かな作風に定評がある。物語の奥にはいつも、祈るような静けさと人へのまなざしがあった。
あなた(物語の語り手・親友)
弓枝の人生をそばで見守ってきた親友。表舞台には立たず、しかし弓枝の迷いや痛み、喜びを誰よりも知っている存在。励まし、寄り添い、ときに沈黙を共有することで、彼女の心の支えとなってきた。読者の立場でもあり、弓枝の“最初の読者”であり続けた人。
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