
タモリ:
「話すことより、浮かぶことが大事な日もある」
どうも、タモリです。
この旅も、だいぶいろんな景色を見てきました。
今日はその中でも、**“自分の中を静かに見渡すような日”**になる気がしています。
六花亭では、お菓子に込められた言葉に耳を澄ませるし、
幸福駅では、自分の名前と対話する時間がある。
そして雲海では、“話さないで伝わるもの”に出会うかもしれません。
こういう旅の時間ってね、
“しゃべらなくても通じる”瞬間が、一番記憶に残ったりするんですよ。
何も話さない。
でも、気持ちはちゃんと雲みたいに浮かんでる。
今日は、そんな時間になるんじゃないかなと、思ってます。
(本稿に記されている対話はすべて仮想のものであり、実在の人物・発言とは関係ありません。)
六花亭で“甘い言霊”と心のリセット

ガイド:栗田初枝さん(元パティシエ・“お菓子の記憶案内人”)
テーマ:「過去を溶かす、ひとくちの魔法」
帯広駅を出た一行は、まだ朝の光がやさしく差し込むなか、白壁と赤い庇が印象的な六花亭本店へと足を運んだ。
店の前に立った瞬間、さんまさんが「ここ来たら、運が甘くなるって聞いたで〜!」と叫び、一同は笑いながら入店。
店内には、香ばしいバターと砂糖の香りがやわらかく漂い、木製のショーケースに整然と並んだスイーツが、まるで絵画のように整っていた。
「みなさん、ようこそ六花亭へ」
そう語りかけたのは、栗田初枝(くりた・はつえ)さん――創業当時から数十年、厨房に立ち続けてきた伝説の元パティシエ。
今では“お菓子の記憶案内人”として、限られた来店者にしか語られない裏話と心の旅を案内している。
「実はね、うちのバターサンドには、“目に見えない手紙”が入ってるって言われてるの。
たとえば“あなたはもう大丈夫”とか、“頑張らなくてもいい”って。
言葉じゃなくて、甘さで伝えるんです」
そう言って、テーブルの真ん中にバターサンドを置いた栗田さんは、
一人ずつに紙とペンを渡し、「最近、自分に言ってあげたかった一言を書いてください」と促した。
綾瀬はるかさんはしばらく手を止めていたが、静かにこう書いた。
「急がなくてもいい、って言ってほしかった」
江原さんが隣でうなずき、
「甘さって、“心の鎧”をやさしく溶かすものですから」と添える。
出川さんは、「俺、こんなこと自分に書くの初めてっす」と笑いながら「泣いてもいいよ」と書き込み、
高田純次さんは、「おれ、“純”って名だけどさ、実はこういう時間がいちばん純なのよ」と、珍しく真剣な表情を見せた。
栗田さんがそっと語った。
「昔、ひとりで来店された方がいました。
ケーキを食べながら涙を流してたんです。理由を聞いたら、
“この甘さが、私に『許してあげなよ』って言ってくれたんです”って」
一人さんが頷く。
「過去の“苦い記憶”ってのは、引き出しに残ってる“賞味期限切れの悲しみ”みたいなもんなんだよ。
それをこうやって、“今日の甘さ”で包んであげる。
それだけで運は、ふわっと軽くなるの」
最後に、さんまさんが思いつきで「せっかくやし、“開運バターサンドおみくじ”やろうや!」と提案し、
箱の中から一人ひとつずつ、運試しのスイーツを引くことに。
出川さん:レーズン多め → 「過去との対話が深まる日」
綾瀬さん:サブレがしっとり → 「想いがやさしく伝わる日」
高田さん:個包装2枚入り → 「“誰かと分ける運”がめぐってくる」
さんまさん:サイズ大きめ → 「“話が広がる日”で、注目度大」
タモリさん:ノーマル → 「いつも通り、がいちばんうまい」
窓の外、朝日が街を優しく照らしはじめていた。
栗田さんが最後に言った。
「甘いものって、“今ここにいる自分”をやさしく肯定してくれるんです。
だから、旅の途中で味わうには、ぴったりなんですよ」
そして斎藤一人さんがにっこり。
「甘くなるってのはね、“心がほどける”ってことなんだよ」
六花亭の朝。
それは、過去の自分をやさしく迎え入れ、“いまの自分”をおいしく包む、そんな再出発の朝だった。
幸福駅で“名前の魔法”を体験

ガイド:小田島まい(詩人・幸福駅の名言保管係)
テーマ:「あなたの名前には、未来がこっそり書いてある」
帯広から車で30分ほど。
線路のない線路沿い、静かな丘の上に立つのが旧・幸福駅だ。
駅としての役目はもう終わっているが、その名の響きと、訪れる人の“願い”を乗せて、今も旅の途中にある。
「ここに来るとね、なんでかわからないけど、
“今のままの自分でもいいのかな”って思えるんです」
そう語ったのは、地元詩人の小田島まいさん(38)。
週に数日だけこの場所に現れ、願い札の整理や駅の詩碑を手書きで更新しているという、ちょっと変わった“駅の守人”だ。
一行を待っていたのは、駅舎の一角に用意された小さなワークスペース。
古い木製の机の上には、筆ペンと半紙、そして一枚のカードが。
「今日、皆さんにやっていただきたいのは、
“自分の名前で一句”です。
漢字やひらがな、意味や語感、自由に遊んでください。
でもひとつだけルールがあります――“自分にエールを送ること”」
さんまさんが「なんや照れるわ〜!」と笑いながら筆を持つと、
出川さんは「おれ、“出る川”って書くけど、最近流れてなかったな…」とつぶやいた。
高田純次さんは「純というより、“純っぽい”人生だったけどな」とにやり。
綾瀬はるかさんは「“遙か”って、“遠くへ行く”って意味なんですね。
でも、今日は“帰ってくる場所”のような気がします」と言葉を選ぶ。
小田島さんは、駅舎の壁に貼られた千枚を超える願い札を指差して、そっと語った。
「不思議とね、名前と願いって、ちゃんとつながってるんです。
“陽子”って書いた人は、“光を取り戻したい”って書いてて、
“直人”って名前の人は、“もう一度、まっすぐに進みたい”って」
彼女が紹介したのは、かつてこの駅で出会ったひとりの男性の話だった。
“陽一”という名の60代の男性が、
「若いころ、何度も会社を辞めた。名前負けしてると思ってた」
そう言って筆を取ったが、最終的に書いた句が、
「ようやく陽が 一にかかって 今日が来る」
彼は泣きながら、「今日まで“陽一”でよかった」と言ったという。
旅の一行も、それぞれが書き上げた句を読み上げていった。
出川哲朗:「出すよりも 川に流して 受けとろう」
綾瀬はるか:「はるかでも いまここにいる それでいい」
さんま:「明るくて 石につまずき 家になる」
タモリ:「森に立ち 音のない風 聞いていた」
一人さん:「一つでいい 人の役に立つ 名前です」
全員の句は、小田島さんの手で一枚ずつ駅舎の壁に貼られた。
そこに吹いた風が、どこか名前と心をつなぐ祝福の風のように感じられた。
最後に小田島さんが優しく言った。
「あなたの名前は、世界でいちばん短い詩です」
旅の途中、ふと自分の名前と向き合う時間。
それは“今までの自分”を見送って、“これからの自分”に会いに行く儀式のようでもあった。

トマム・雲海テラスで“魂が浮かぶ”感覚体験
ガイド:早乙女千景(空の詩人・気象ナビゲーター)
テーマ:「空は、あなたの心のかたちを映す」
トマム山の麓から、ゴンドラで15分の空の旅。
一行は、朝の風がそっと頬を撫でる中、雲海テラスを目指した。
空は淡く青く、地上に広がるのはまるで白い絨毯のような雲。
その雲の向こうに、かすかに山並みと森の輪郭が浮かんでいた。
ゴンドラを降りた先で待っていたのは、気象ナビゲーターであり“空の詩人”と呼ばれる早乙女千景(さおとめ・ちかげ)さん。
彼女は元・気象庁勤務という経歴を持ちながら、雲や風の観察から“感情のかたち”を詠む詩人として注目されている。
「この景色は、自然が語っている“心の写し絵”なんです」
彼女の第一声は、まるで風そのものが言葉になったようだった。
「雲って、“気持ちが空に上がってきたもの”って考えると、
とっても親しみが湧くんです。
ふわふわして、すぐ形を変えて、時に重くて、時に晴れる。
まるで…私たちの気持ち、そのものですよね」
一行は、テラスの端で静かに雲を見下ろした。
タモリさんが「空に底があるって、不思議だね」とぽつり。
綾瀬はるかさんは「雲って、触れそうで触れられないのに…今はすごく近い気がします」と微笑んだ。
ここで早乙女さんが取り出したのは、雲型の和紙カード。
「今、自分の中に浮かんでいる言葉を、この雲に乗せてみてください」
そう言って、全員にカードと筆ペンが渡された。
さんまさんは「空見ながら何か書くって…なんか、はずかしいなあ」と言いつつも、
しばらく黙ってカードと向き合い、最後に一言。
「ま、浮かんだってことは、出してええってことやな」
出川哲朗さんは「俺、ここで泣くとは思わなかったっす…」と言いながら、
“これでいい”とだけ書いて、じっと雲を見つめた。
綾瀬さんのカードには、“ほぐれる”という一言が。
「ここに立ってるだけで、全部が少しずつほどけていくような気がして…」
早乙女さんは、皆が書いたカードを一枚ずつ封筒に入れて手渡した。
「この雲たちは、いま皆さんの“心の残響”を受け止めてくれました。
また日常に戻って、少し心が曇ったとき、この封筒を開けてみてくださいね。
たぶん、今日の空が思い出させてくれますから」
最後に斎藤一人さんが、空を見上げながら言った。
「雲ってのは、全部“いまの自分のカタチ”なんだよ。
そのままで、どこにも行かなくても、
ここで浮かんでるだけでいいんだって、教えてくれてんだよ」
雲海テラス。
それは、空と心の境界がほどける場所だった。
言葉にならない想いが、風に乗って静かに上がっていった。
スカイビューホテルで“涙と笑いのプレゼン大会”

テーマ:「今日の自分を、自分の言葉で伝える夜」
雲海テラスから戻った一行が向かったのは、星野リゾート・トマムのスカイビューホテル。
空に浮かぶようなガラス張りのロビーラウンジ。
夜の帳が下りるころ、そこはまるで“静かな星の船”のように、心を運ぶ空間になっていた。
この夜の特別プログラムは、斎藤一人さんが旅の中盤からあたためてきた企画――
「今日の感動をプレゼンする会」。
ルールはひとつだけ。
「うまく話そうとしないこと。ただ“今日の自分”を話してみて」
順番は希望制。最初の一歩を踏み出したのは、意外にも出川哲朗さんだった。
「…今日さぁ、朝のバターサンドからずっと“甘くなれ”って言われてた気がして。
そしたら、雲の上で泣けちゃって…あれ、オレのどこにあった涙だったんだろ?」
出川さんの目の奥に、ふと“安心した子供”のような笑顔が見えた。
そのとき、誰かが静かに拍手をした。
続いて立ったのは、綾瀬はるかさん。
「幸福駅で、自分の名前を見つめたとき、
“この字たち、私の全部だったんだな”って気づきました。
そして、雲を見たとき、
“もっと力を抜いても、ちゃんと浮かべる”って思えたんです」
彼女が話すとき、空気の粒がやさしく振動するように、
みんなの中の“何か”が静かに共鳴していた。
さんまさんの番になると、空気が一瞬軽くなる。
「バターサンドで開運、雲で感動、プレゼンで泣けるって…
これ、おれの人生の中でも相当濃い1日やわ!」
笑いの渦を起こした後、ふと真顔でこう続けた。
「でも、ほんまは…
今日こうして、みんなと一緒に笑えて泣けたってだけで、
明日からちょっとええ人間になれる気がしてんねん」
最後に、全員の言葉を静かに聞いていたタモリさんが、立ち上がった。
「話すっていうのは、
“いまの自分の位置を、自分で確認する行為”なんじゃないかな。
どこにいても、
“いまの場所がいいな”って思えたら、
それだけで、もう“運がいい”ってことだと思うよ」
部屋の隅で、それを聞いていたホテルのスタッフがふとつぶやいた。
「この場所はね、“言葉を大切にする人たち”がいると、空気が柔らかくなるんです。
みなさんの言葉が、空を変えてるんですよ」
それを聞いた一人さんが、優しく笑って言った。
「だから運が動いたんだよ。
“言おうとした”ってだけで、
もう魂はちょっとだけ、前に進んでるんだよ」
ランタンのような明かりが、全員の顔をやさしく照らしていた。
涙と笑いが混じったその空間は、
まるで**“感情という灯り”でできた円(サークル)**だった。
誰もがその場で、言葉にならない“ありがとう”を、そっと心に浮かべていた。
あとがき
「言葉じゃなくても、伝わるものはちゃんとある」
今日は不思議と、
“静かに笑って、静かに泣く”という日でした。
スイーツがくれたのは、
“いまの自分でも大丈夫”っていう味だったし、
名前がくれたのは、
“忘れてた自分との再会”だったし、
雲がくれたのは、
“言葉にならない気持ちをそのまま浮かべていい”っていう許可。
そして夜のプレゼン大会では、
誰かの話に、自分のことを重ねるっていう、
言葉を超えた共有があった気がします。
笑ったり、泣いたり、
何も話さなかったり。
それでも、全部ちゃんと伝わってる。
そう思えたら、
人と旅をするってことが、ちょっとだけ好きになるんですよ。
Short Bios:
斎藤一人(さいとう・ひとり)
銀座まるかん創業者であり、精神と運気の“法則”を語る達人。今回の旅では常に温かい言葉と独自の視点で仲間たちを導く存在。
明石家さんま(あかしや・さんま)
抜群の笑いのセンスで場を明るくする旅のムードメーカー。鋭いツッコミと人情のバランス感覚でチームを支える。
出川哲朗(でがわ・てつろう)
素直すぎるリアクションで愛される男。旅を通して“頑張りすぎない自分”と再会していく、癒やしの存在。
綾瀬はるか(あやせ・はるか)
感受性が豊かで、静かな気づきを言葉にする力がある。今回の旅では内面との対話を大切にし、周囲にも深い安心を与える。
高田純次(たかだ・じゅんじ)
自由奔放で適当に見えながら、核心を突く名言をさりげなく放つベテラン。飄々とした姿が旅に安心感を与える。
タモリ
知性とユーモアを併せ持つ観察者。言葉少なに本質を見抜き、空気を和らげながら、静かにみんなを後押しする存在。
栗田初枝(くりた・はつえ)
元・六花亭の伝説的パティシエ。今は“お菓子の記憶案内人”として、スイーツに宿る言葉と癒やしのエネルギーを伝えている。
小田島まい(おだじま・まい)
幸福駅の詩人であり、願い札を守る名物案内人。“名前は人生でいちばん短い詩”を信条に、旅人の心を詩に変える語り部。
早乙女千景(さおとめ・ちかげ)
元・気象庁職員でありながら、今は“空の詩人”として雲や風に感情を重ねて語る気象ナビゲーター。雲海テラスでの案内人。
Leave a Reply